2011年2月24日(木)「しんぶん赤旗」
大阪府政の三つの転換を――本当の対決構図は共産党VS自・民・公・維新
志位委員長の訴えから
日本共産党が21日、大阪府立体育会館で開いた大演説会で、志位和夫委員長は、「日本の経済社会のあり方」、「世界各国との経済関係」、「税と社会保障のあり方」、「日本外交のあり方」、「地方政治のあり方」の五つの角度から、今日の政治の行き詰まりを打開する展望を示し、行動する党、日本共産党の姿を縦横に語りました。このなかから、大阪府政問題にかかわってのべた、地方政治の転換の訴えを紹介します。
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「地域主権」、「維新の会」の正体は何か
地方政治のあり方に話をすすめたいと思います。
「住民の福祉と暮らしを守る」――これが地方自治体の原点です。ところが、自民党政権が進めてきた「地方行革」、民主党政権が引き継いだ「地域主権」、聞こえはいいのですが、この名のもとに進められている中身は何でしょうか。
一方で、住民の福祉と暮らしのための自治体独自の仕事は投げ捨て、「官から民へ」の掛け声で、保育園、学校給食、公立病院など、自治体が責任をもって担うべき大事な仕事を民間まかせにしてしまう。
他方で、「大企業を呼び込めば、そのおこぼれで地域が栄える」。こういって、大企業呼び込みのための誘致補助金やインフラ(基盤)整備に巨額の税金を投入し、やれ「道州制」をつくるとか、やれ「大阪都」をつくるとか、財界のもうけに都合のよいように自治体を大規模化していく。
この二つがセットになって、自治体を自治体でなくしてしまう。こんなものは、「地域主権」でも何でもないですね。自治体を財界のもうけのための僕(しもべ)にしようというのが正体だといわなければなりません。(拍手)
そして大阪府の橋下徹知事がやっていることは、その一番悪い典型だということをいわなければなりません。(「そうだ」の声、大きな拍手)
一つ数字をご紹介しましょう。府民のみなさんが1人あたり払っていらっしゃる住民税は、大阪府は全国47都道府県で4位です。それだったら福祉も4番目になっていなければなりませんね。ところが65歳以上人口1人あたりの老人福祉費は全国36番目、人口1人あたりの教育費は42番目。もう下があまりありません。(笑い)
この逆立ち府政こそが、大阪から元気を奪っている。この転換こそ必要だということを訴えたいのであります。(大きな拍手)
どういう人たちがこんな政治をやっているか。(大阪)府議会では、自民党も、民主党も、公明党も、知事提案の予算案をはじめ、ほとんどすべての議案に賛成し、事実上の「オール与党」となっています。
「大阪維新の会」というのができたそうですが、そこに所属する府議・市議の9割は元自民党議員だそうじゃないですか(「そうです」の声、笑い)。「そうです」という声がありました(笑い)。「維新の会」というけれども、選挙目当ての「保身の会」(拍手)。「い」じゃなくて「ほ」(笑い)。これが正体であります。(「そうだ」の声、拍手)
メディアは「既成政党対橋下新党」が今回の対決軸だとあおりますけれど、日本共産党対自民、民主、公明、維新の「オール与党」――これこそ本当の対決構図だということを、私は訴えたいのであります。(大きな拍手)
第一の転換――福祉と暮らし最優先の府政へ
今度の選挙で、日本共産党は、大阪府政の三つの転換を訴えています。
第一は、福祉と暮らし最優先の府政への転換です。
高すぎる国保料――国いいなりの国保証取り上げ、強権的な取り立てをやめよ
(ここで志位氏は、2月2日の衆院予算委員会でとりあげた「高すぎる国保料」の問題について言及。大阪市でも国保料は、所得300万円、夫婦子どもの4人世帯で42万8700円にもなります。志位氏の追及に菅直人首相は「たしかに年収の1割を超える負担は、負担感としてはかなり重い」と答弁しましたが、この負担に追い打ちをかけているのが民主党政権です。昨年5月に厚労省通達を出して、市町村が独自に行っている一般会計から国保会計への繰り入れをやめて、「保険料引き上げ」に転嫁せよとの号令をかけています。首相は、「国保は低所得者が多いなど構造問題がある」と弁明しましたが、国保の最大の構造問題は、1984年に50%だった国庫負担が24%にまで減ってしまったことにあります。志位氏は、民主党は「政権を取ったら国庫負担を9000億円増やす」といっていたのに、その公約を放り投げて、高すぎる国保料にさらに追い打ちをかける冷酷な通達を出すなど言語道断であり、ただちに撤回すべきだと要求するとともに、つぎのように続けました)
高すぎる国保料の問題は、このようにまず国政の責任です。同時に大阪府の責任も厳しく問われています。府は何をしているか。国のいいなりになって、市町村ごとに国保料の収納率の目標を決め、それに達しない市町村にはペナルティー(罰則)を科す、国保料が高すぎて払えない方から国保証を取り上げて資格証明書に置き換える、国保料の強権的な取り立て競争、差し押さえ競争に市町村を追いたてる。これをしているのが橋下府政なのです。
私は、先日の予算委員会質疑で、大阪市で飲食店を経営している男性からの訴えをとりあげました。不景気で経営が悪化し、国保料の支払いが困難になってきた。それでも毎月、区役所の窓口と相談して分割納付をきちんと続けてきた。ところが昨年12月、大阪市から突然「財産調査の結果が判明した。滞納金を払わないと差し押さえる」という通知がきた。判明した「財産」というのは何か。子どもたちのためのコツコツ積み上げてきた学資保険です。約束通り、保険料を分割納入している方が、子どもたちのための学資保険まで「財産」とされて、差し押さえの制裁を受ける。あまりにひどい事態ではないでしょうか。
この事実を示して国会でただしたところ、菅首相も「本当に胸の痛む思いです」と言わざるを得ませんでした。国いいなりの冷酷非情な資格証明書への置き換えや、強権的な保険料の取り立て、差し押さえはやめよ。そのことを強く求めたいと思います。(拍手)
国保の「広域化」――繰り入れなくし、さらなる値上げは許せない
国保問題で、もう一つ、橋下府政がおこなっている重大な問題があります。政府が号令をかけている国保会計への繰り入れ中止を、国に先駆けて進めているのです。
橋下知事は、いま市町村単位で運営されている国保を、大阪府単位に「広域化」するといっています。しかしその前提として、府や市町村が一般会計から国保会計に、高すぎる国保料を少しでも下げようと繰り入れているお金を、すべてなくすとしているのです。国保会計への繰り入れをなくして焼け野原みたいな更地にしてしまおう。これが「広域化」なるものの正体なのです。
これがやられたらどうなるでしょう。大阪市はさきほどお話ししたように、国保料は、4人世帯で、42万8700円とたいへんに高いです。ただでさえ高すぎる国保料なのに、国保会計への繰り入れをやめれば、さらに1世帯あたり平均2万円の値上げになります。「広域化」の名で、自治体の責任を放棄する。こんなやり方は間違っています。
みなさん。国と府と市町村に、それぞれ国民健康保険への責任を果たさせて、国保料の大幅な引き下げを実現させようではありませんか。そのためにどうか日本共産党を伸ばしてください。よろしくお願いします。(大きな拍手)
「財政構造改革プラン」――府民いじめの大計画はストップを
それから、こんなことをやっているのかと驚いたものに、橋下府政が昨年10月に出した「大阪府財政構造改革プラン」というものがあります。これはたいへん分厚いものですが、読んでみたらひどい内容です。
国民健康保険については、「国保の広域化にむけた条件整備」と大改悪の方針が明記されています。保育所、老人福祉施設、重症心身障害者施設、障害者福祉作業所、救命救急センターなどへの府の独自補助の廃止・見直しがずらりと書いてあります。私学助成は、あれだけ問題になっている「単価引き下げ」を「継続」と冷たい姿勢です。府営住宅は半減という目標まで書いて、府営住宅からは手を引くと言わんばかりのことが書いてあります。府民のためのわずかに残った暮らしと福祉の施策を軒並み切り捨てる。これが昨年、橋下知事がつくった「財政構造改革プラン」なのです。
この「プラン」で一貫しているのは、「他府県との比較」をやり、他府県より少しでも良いものがあったら、低い方に合わせるという考え方です。これは話が逆ではないですか。いいものがあったら見習うのが、まともな自治体のやることではないですか。(拍手)
たとえば、大阪府の子どもの医療費助成制度は、府の制度としては2歳児までとなっています。これは全国最低です。東京は都の制度として中学校3年生まで無料です。橋下知事は、東京のように、大阪を「都」にするといいますが、こういうところこそ見習ったらどうでしょう。(拍手)
日本共産党は、「財政構造改革プラン」の名による福祉と暮らしの切り捨ては断固としてくいとめ、福祉と暮らし最優先の府政への転換をめざして頑張ります。どうか勝たせてください。(大きな拍手)
第二の転換――「大企業呼び込み政治」から中小企業の振興で元気な大阪に
第二の転換は、破たんした「大企業呼び込み政治」から、中小企業の振興で元気な大阪をつくるということです。
全国トップの大企業の立地補助金――これでは経済はよくならない
福祉と暮らしを削りながら、橋下府政の大企業に対する気前のよさは全国トップクラスです。大企業が立地するさいに補助金を出す。その限度額は全国トップで、上限は何と150億円です。これまでに337億円を流し込んできました。シャープと関連企業だけで224億円もの補助金を出しています。
ところが、安定した雇用はいっこうに増えません。大手家電メーカーは、エコポイントで増産というときでも、正社員を雇わないで、派遣社員や期間社員を雇って、エコポイントが終わったらまた首を切っているでしょう。そういうやり方では経済はよくなりません。完全失業率は大阪府は7・7%と全国最悪水準です。「大企業呼び込み政治」では、大阪経済は立て直せない。このことをはっきり言わなければなりません。(拍手)
「大阪都」構想の正体――「1分600億円」の「鉄道」と「道路」
ところが、橋下府政は、破たんが明らかになったこの古いやり方を、さらに大がかりですすめようというのです。それがあの「大阪都」構想といっているものなんですね。私は、「大阪維新の会」のホームページを開いてみました。そこにその青写真が書いてあります。「広域行政の一本化は、究極の成長戦略」だと述べたうえで、大阪市をなくして、「大阪都」に「一本化し、財源を集中投資する」と書いてあります。一体どこに「集中投資」するのか。読みあげてみましょう。「企業活動を活性化させる空港、港湾、高速道路、鉄道のインフラを整備」、ここに税金を「集中投資」するというんですよ。
まったく反省がないではありませんか。
「空港」といいましたら、関西空港(関空)をつくったけれども、発着回数は予定の半分で、1兆円の借金でしょう。さらに2期工事で1193億円の府民負担がおしつけられようとしています。
「鉄道」といいますが、何をつくろうとしているのか。なにわ筋線というのをつくるといいます。関空へのアクセス鉄道です。総事業費4000億円です。しかしこれでつくったとして、短縮される時間はたった7分(どよめきの声)。47分から40分になるだけなのです。1分あたり600億円です。(どよめきの声)
「高速道路」といいますが、何をつくろうというのか。淀川左岸線を門真まで延伸するということです。こちらは総事業費3500億円です。大阪北港ジャンクションから門真ジャンクションまでの所要時間が、27分かかるのが21分に、短縮されるのはわずか6分です。これも1分あたり600億円です。(どよめきの声)
みなさん、「鉄道」といい、「高速道路」といい、1分に600億円をかけますか。そんなに急いでどうするのといいたい。そんなお金があるのだったら、まず福祉と暮らしに使うべきではないでしょうか。(大きな拍手)
中小・商工業に手厚い政治でこそ、大阪の経済は元気になる
そして大阪の経済は、中小・商工業が元気になってこそ取り戻すことができます。大企業の誘致や巨大インフラ整備に、大切な税金をどんどん注ぐやり方ではなくて、大阪で額に汗をして頑張っている中小・商工業にこそ、手厚い政治が必要だということを私は訴えたいと思います。(拍手)
第三の転換――府民の声が届く議会への改革
第三は、府民の声が届く議会への改革です。
日本共産党大阪府議団の活動ぶりをみておりますと、私は、議会をまともな議会にするうえで、わが議員団が果たしている役割はほんとうにかけがえないと思います。
まず、府民から信頼される議会をつくる仕事です。海外視察を中止させ、年間1700万円の税金を削減しました。議員報酬の引き上げに反対し、2割以上の削減を提案しています。議会開会中に支給されていた費用弁償も、日本共産党議員団の提案が実って廃止となり、年間4000万円の削減です。
また、府民のみなさんの願いを府議会に届ける仕事を立派にやってきたのは、10人の日本共産党府議団です。とくに、この間では、府営水道料金の値下げ、福祉4医療制度――高齢者、障害者、ひとり親、乳幼児――の自己負担引き上げ計画の撤回をかちとったことはたいへんに重要だと思います。水道料金の値下げでは、橋下知事も答弁でこう言ったそうです。「たしかに共産党に再三、水道料金値下げはできないのかと言われて、僕はできない、できないと言っていたのは、あれは間違いだったわけなんです。これは申し訳なかった」。こう答弁したそうですけれども、水道料金の値下げはもっとできます。これは、ぜひ日本共産党を伸ばして、実現をしていこうではありませんか。(拍手)
さらに、もう一つ、日本共産党府議団は10議席を持っておりますが、10議席というのは、議案提案権があるんですよ。日本共産党府議団は、くり返し中小企業基本条例の制定を提案し、ついに昨年6月、全会一致でこれがつくられました。中小企業を「地域経済の根幹」と位置づけ、「ものづくりの基盤技術の向上のための環境づくり」に府が責任を負う。こういう立派な条例をつくった。この議案提案権を持てるのは、10人の力なんですね。ですから、1人も落とせないんです。現有議席をすべて確保し、さらに前進させてください。よろしくお願いいたします。(拍手)
(志位氏は、最後に「今日、さまざまな角度からお話ししてきたように、どの問題でも閉塞〈へいそく〉を打破する道はあります。その展望を示し、行動しているのが日本共産党です」とのべ、「『大阪が変われば、日本が変わる』。日本共産党の勝利で、大阪から日本を変えようではありませんか。日本共産党への絶大なご支持を重ねてお願いして、訴えとさせていただきます」と締めくくりました)