2011年3月8日(火)「しんぶん赤旗」

進む「自民化」 深まる矛盾

前原外相辞任で崖っぷち


 民主党衆院比例選出議員16人の会派離脱、松木謙公政務官の辞任、佐藤夕子衆院議員の離党届…。求心力の喪失ぶりをあらわにしていた菅民主党政権にとって重要閣僚である前原誠司外相辞任は、さらに追い打ちをかけることになりました。菅政権発足後8カ月では、亀井静香前郵政改革・金融担当相、柳田稔前法相に次ぐ辞任です。内閣支持率も1割台に急落しており、政権の担当能力そのものが問われる事態です。

幕引きはかる

 前原氏は辞任理由について、政治資金規正法で禁止する外国人からの政治献金を受け取っていた責任をあげ、「この問題で国会の審議を停滞させるわけにはいかない」(6日の記者会見)と述べました。国民に説明責任を果たし、真相を究明することよりも「国会対策」を優先する姿勢は、自民党政権時代に「政治とカネ」の問題を抱えた閣僚がとった対応と何ら変わりません。

 前原氏の政治資金をめぐっては、外国人からの違法な政治献金のほかに、同氏の政治団体が巨額脱税事件で有罪判決を受けた人物の関係会社から献金を受けながら、政治資金収支報告書に虚偽の記載をしていた問題もあります。

 この人物は1988年に覚せい剤所持で暴力団員とともに逮捕。前原氏はこの人物とは「6、7年前」からの付き合いで、「パーティー券をお願いして買ってもらった」(4日の参院予算委員会)と関係を認めています。虚偽記載はこうした人物からの献金を隠すためではないかとの疑惑も浮上しています。

 しかし、前原氏も菅直人首相も、虚偽記載については「事務的ミス」と済ませ、真相を明らかにしていません。前原氏の辞任は、虚偽記載に関する疑惑の追及を避け、政治的ダメージを最小限にするものではないか、との指摘もあります。

民意を裏切り

 菅首相自身、「民主党が誕生してもっとも厳しい局面にある」(5日の党全国幹事長会議)と自認するまでに民主党政権が行き詰まったのはなぜか。自公政権を退場させた2009年総選挙での歴史的な国民の審判を踏みにじり、内政・外交で「自民党化」の変節を極限にまで進めたからにほかなりません。

 「国民の生活第一」どころか、大企業・大資産家へは約2兆円の減税を行い、国民には消費税増税、自公政権と同じ社会保障の切り捨てを押し付ける。全国で反対・阻止の国民運動が燎原(りょうげん)の火のごとく広がる環太平洋連携協定(TPP)問題では世論に逆らい、参加に踏み出そうとする。沖縄の米軍普天間基地問題でも、名護市辺野古への新基地建設の推進など、どれをとっても自公政権と見まがうばかりです。

 前原氏は辞任会見で「後任には経済外交、日米同盟の深化をしっかりとやっていただきたい」と述べ、菅首相は「しっかりした態勢をつくっていきたい」(7日の参院予算委員会)と前原氏が求めてきたTPP参加や日米同盟の強化をいっそう進める立場を表明しました。結党以来の「危機」に直面しながら、「自民党化」を強める菅民主党政権。国民のとの矛盾がいっそう激しくなるのは必至です。(高柳幸雄)





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