2011年3月8日(火)「しんぶん赤旗」
主張
前原外相辞任
菅首相の責任決して免れない
政治資金規正法で禁止された外国人からの献金の責任を取り、前原誠司氏が外相を辞任しました。前原氏には巨額脱税事件で起訴された人物の関係会社からの献金の疑惑もあります。前原氏には辞任ですまさず、「政治とカネ」の全容を明らかにする責任があります。
同時に、前原氏を外相に任命し、今回の問題でも「慰留」に努めた菅直人首相の責任は重大です。前原氏は菅内閣のもとで「日米同盟」強化路線を推進した政権の要でもありました。前原氏に「政治とカネ」の全容を明らかにさせるとともに、これまでの外交路線を検証することが不可欠です。
「政治とカネ」全容解明を
前原氏は外相辞任にあたっての記者会見で、支援者である京都市在住の外国人(在日韓国人)の女性からの献金が、2005年から08年の4年間と10年の5年分で各5万円、合わせて25万円だったことを明らかにしました。
政治資金規正法は外国人や外国の法人などからの献金を禁止しており、違反した場合は禁錮や罰金の罰則が科せられ、公民権も停止されます。外国の勢力に政治や選挙が支配されないためであり、金額が少ないからといって許されるわけではありません。とりわけ外相を務めてきた前原氏の責任が、きびしく問われるのは当然です。
しかも前原氏には国会質問やマスメディアの報道で、同氏の政治団体が、巨額脱税事件で有罪が確定した人物の関係会社から「パーティー券」購入の形で献金を受けており、政治資金収支報告書では虚偽の届け出をしていたこと、野田佳彦財務相や蓮舫行政刷新相にも紹介していたことが明らかになっています。前原氏の「政治とカネ」の一連の疑惑にたいし、外相を辞めればそれで“フタ”というのは絶対に許されません。
前原氏を外相に任命した菅首相が、前原氏の辞任の申し出に対し、「『辞める必要はない』と強く慰留したが、残念ながらかなわなかった」(参院予算委での答弁)としているのは重大です。菅首相は前原氏に「政治とカネ」の問題で全容の解明を求め、その説明を受けて「辞める必要はない」と判断したのか。そうでないとすれば、菅氏が自らの政権の延命のため、前原氏の疑惑をもみ消そうとしたといわれても仕方がありません。
前原氏は、鳩山由紀夫前内閣で国土交通相を務め、菅内閣で参院選後外相に就任し、「日米同盟」強化路線の先頭に立ってきました。今年初めの訪米では、環太平洋連携協定(TPP)への参加を「日米関係強化の一環」と位置づけ、米軍普天間基地の沖縄県内「移設」を「日米同盟の機能を損なわないように」と明言するなど、国民の利益よりアメリカの利益を優先する立場を露骨に示しています。
「同盟」強化続けるのか
沖縄県民の反対で普天間基地の「移設」は一歩もすすまず、TPP参加への反対も急速に広がっています。菅政権が前原外相を先頭に進めてきた「日米同盟」強化一辺倒の外交路線が、いまや行き詰まっているのは明白です。
前原氏の辞任により後継外相が取りざたされていますが、菅首相が真相究明よりも政権の維持を優先させる立場をとり、新外相の下でも対米追随の外交路線はまったく変えないというのでは、いよいよ国民から見放されるだけです。
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