2011年3月8日(火)「しんぶん赤旗」

国は特養増やせ

参院予算委 山下議員の質問


 7日の参院予算委員会で、社会問題になっている高齢者介護問題を取り上げた日本共産党の山下芳生議員。高齢者を食い物にするような介護ビジネスの実態を突き付け、政治の責任を問いました。


山下氏 “介護退職社会”どうする

菅首相 社会全体で対応努力

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(写真)パネルを示して質問する山下芳生議員=7日、参院予算委

 特別養護老人ホームの待機者は42万1259人(2009年度)。介護保険発足後10年間で4倍に増え、家族の介護・看護のために離職する人は年十数万人に上ります。

 山下氏はパネルを示し、入所希望者の増加に特養ホーム整備が全く追いついていないと告発。東京都内の44歳男性が75歳の認知症の父親を介護するために仕事を辞め、月10万円の父親の年金で暮らしている例を突き付け、首相の姿勢を問いました。

 山下 総理は厚労相時代、「介護を社会化する」といって介護保険を推進した。親の介護のために40代のミドルエイジが仕事も結婚もあきらめざるを得ない。こんなことで日本社会はどうなると思うか。

 菅直人首相 高齢化が進み、一人暮らしが増え、支える家族が少ないなどの状況がある。きちっと社会全体で対応できる努力をしなければならない。

寝たきり専用住宅

健康悪化でも病院運ばず/オムツ持ち込み禁止

厚労相 調査する

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(写真)寝たきり専用賃貸住宅の看板(山下芳生事務所撮影)

 特養ホームの待機者がどういう境遇に置かれているか。

 山下氏は「寝た専賃」と呼ばれる「寝たきり専用賃貸住宅」の急増を指摘。実態を告発しました。

 ある住宅は「寝たきり老人専用」と案内しています。チューブで栄養をとる「経管栄養」で、食事介助の必要がない人ばかりを集め、各部屋は4畳半程度で17人が入居。看護師が1日3回やってきてチューブで栄養剤を注入するだけです。

 オムツ持ち込みは「禁止」。オムツも医療も介護も身内の事業所が提供し、利用料と介護保険の報酬で利益をあげるためです。

 状態が改善して「寝たきり」でなくなったら、「手間」がかかるので料金値上げ。健康状態が悪化しても在宅医療で改善しなければ「終末期」とみなし、病院に搬送しません。こうした取り決めの「承諾書」に家族が署名・押印させられます。

 山下 これが介護、医療と言えるのか。お年寄りの人生の最後を“食い物”にするやり方ではないか。

 首相 本当に本人のためになるサービスのあり方か、考えなければならない。

 山下氏が「実態を把握すべきだ」と迫ると、細川律夫厚労相は「調査させていただく」と答えました。

 山下氏は、「寝た専賃」を経営する会社がホームページで「数に限りある『老人介護施設』や『有料老人ホーム』に入所できず、『療養型病床』も減っていく中でますます在宅介護の必要が高まります」と宣伝していると指摘。「特養ホームを増やさず、療養型病床を減らしてきた、政府の政策のおかげでビジネスが成り立っている」と批判しました。

 菅首相は「ご指摘はもっとも。よりしっかりサービスを提供できる体制をどうしたらつくれるか。多くの問題を含んでいる」と答弁。山下氏は「解決の道は一つ。ちゃんとした受け皿を増やすことだ」と強調しました。

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山下氏 国有地活用

菅首相 考えてみるべきだ

 特養ホームを緊急に増設するために何が必要か。

 山下氏の質問に細川厚労相は、国が都道府県に対する特養ホーム整備の「一人当たり補助単価」を、1999年度360万円から2005年度225万円へと削減してきていることを認めました。

 山下氏は、補助金が、東京都では839万円から430万円へ、大阪府では773万円から352万円へと半減していることを指摘しました。

 山下 国がブレーキをかけている。アクセルを踏み込むべきだ。

 菅首相 施設の不足はおっしゃる通り。しっかりしたサービスが提供できる在り方を目指していかなければならない。

 山下氏は、民主党は09年総選挙のマニフェストで「40万人の待機者を解消する」「3倍のスピードで特養ホームを増やす」と言っていたことを指摘。100人の特養ホームを年間800カ所、8万人分つくれば5年間で40万人の待機者を解消できると述べ、「必要な予算は約4000億円。法人税減税・証券優遇税制2兆円のわずか5分の1で解消できる」と強調しました。

 山下氏は、未利用国有地の活用や貸付料の減額などを行い、建設を促進するよう迫りました。

 野田佳彦財務相が「財政法では時価による貸付としている」と消極姿勢を示したのに対し、山下氏は、「財務省だとこうなる。だから政治が知恵を出すべきではないか」と追及。

 菅首相は、「検討すべき項目に入れて考えてみるべきだ」と認めました。

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