2011年3月9日(水)「しんぶん赤旗」
介護保険法改定案の概要判明
要支援者 保険給付外し
訪問・通所 安上がり事業に置き換え
厚生労働省が11日にも閣議決定し、今国会に提出するとしている介護保険法改定案(2012年度実施)の概要が明らかになりました。現在、介護保険給付の対象となっている要支援者を、市町村の判断で、安上がりな保険給付外事業に置き換えて保険給付から外し、介護給付費の削減を大がかりに進めようとしています。
市町村判断で
具体的には、市町村が実施している地域支援事業のなかに、「介護予防・日常生活支援総合事業」を新設し、訪問・通所サービス、配食、見守りを盛り込みます。地域支援事業は介護保険財政から上限付きで財源が出るものの、基本的に要介護認定で保険給付の対象外(非該当)とされた人を対象とし、保険給付外の事業です。
改定案では、現在、保険給付である要支援者の訪問・通所介護を、市町村の判断で、保険給付外の「総合事業」に移し、保険給付費を削減できるようにします。
保険給付での訪問・通所介護には全国一律の基準があり、サービス内容、介護職員の資格や配置、施設設備、事業者への報酬、利用料(原則1割負担)が決まっています。地域支援事業にはこうした詳細な基準がありません。新設の「総合事業」も「市町村の判断で柔軟な対応ができる仕組み」(同省振興課)にし、国が示す各種基準は「最低限にする」(同)としています。
市町村によってサービスの内容や質に差が生まれる一方、利用者の負担は、1割負担の保険給付より高くなる可能性もあります。
「総合事業」を実施するかどうかは市町村の判断。実施した場合、要支援者は保険給付か「総合事業」のどちらかを利用します。どちらを利用するかは、市町村・地域包括支援センター(市町村が責任主体)が判断します。「総合事業」の訪問や通所サービスを利用した場合、保険給付の同種サービスは利用できなくなります。
解説
軽度者の保険給付外し 狙い続ける政府・厚労省
介護給付費削減のために軽度者を介護保険給付から締め出すことは政府・厚労省の一貫した方針です。
前回06年の介護保険改悪では要支援者を対象に新予防給付を創設。サービス利用の前に“家族がやること”などを検討させ、ケアプランに反映させるなど、できるだけ保険給付を利用させないようにできる仕組みをつくりました。さらに、介護報酬を実際のサービス利用実績にかかわらない月単位の定額制(包括払い)にしたうえで実質的に引き下げ、要支援者のサービス利用を大幅に削減しました。
そのうえ今回は、要支援者の受け皿として規制の緩い安上がりなサービスを「総合事業」として創設し、要支援者を保険給付の対象外にするしかけをつくろうとしています。厚労省は、「総合事業」を実施した市町村では要支援者全員が総合事業を利用し、保険給付の利用者がゼロになる可能性も「理論的にはありうる」(振興課)と認めています。
要支援者は、現行の介護保険制度のもとでは専門家による要介護認定によって「保険給付の対象」とされ、全国一律の基準にもとづく保険給付を受ける権利を持つ人です。これらの人を市町村の判断で保険給付の対象外とするような仕組みをつくることは許されません。 (内藤真己子)
要支援 介護保険の給付を受けるには要介護認定を受ける必要があります。要介護度は、軽いほうから、非該当(自立)、要支援1・2、要介護1〜5の8段階。非該当は介護保険給付を受けられません。
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