2011年4月4日(月)「しんぶん赤旗」
民主・自民・公明の財源議論の危うさ
「復興」の名で国民生活犠牲にするのか
大震災から救援・復興をはかっていく上で、財源をどうするのかが焦点になっています。しかし、「復興」の名で国民生活を犠牲にする主張が相次いでいることは見過ごせません。
3月末で期限切れとなる子ども手当を6カ月間延長する「つなぎ法案」を採決した3月29日の衆院厚生労働委員会。自民党の加藤勝信議員は「10兆円を超える財源が必要とされ、子ども手当に2兆円を超える巨費を投じる余裕などまったくない」と述べました。
自民党の谷垣禎一総裁は「不要不急、バラマキと批判してきたものは財源として手当てをしなければならない」と述べ、子ども手当や高校授業料無償化、農家への戸別所得補償、高速道路の無料化などを復興財源に回すべきだと主張しています。(3月30日)
公明党の山口那津男代表も「不要不急の内容を削減して復旧・復興の財源に充てる必要があり、子ども手当も例外ではない」(29日)と指摘。子ども手当を児童手当に戻すことで、「復旧・復興財源を約1兆円生み出すことができる」などと述べています。
一方、民主党の特別立法検討チームも、復興財源として「特別消費税」「特別法人税」の創設や所得税増税などを検討するよう政府に対する提言に盛り込む姿勢です。
貧困が深刻
子ども手当を復興財源に回すべきだとの主張について、日本共産党の高橋ちづ子議員は3月29日の衆院厚生労働委員会で「不要不急の財源を復興に回すことは賛成だが、深刻な子どもの貧困を忘れてはならない。他の子どもたちは我慢せよという議論にくみすることはできない」と批判しました。
自民党が「バラマキ」と批判するもののうち、高速道路の無料化を除けば国民生活に直結するものであり、安易な切り捨ては許されないものです。
復興財源は
復興財源を言うのなら、2兆円にのぼる大企業・大資産家減税を中止し、米軍への「思いやり予算」(5年間で1兆円)の廃止、不要不急の大型公共事業の中止、約320億円の政党助成金の撤廃などこそ真っ先にやるべきです。さらに、企業の内部留保が244兆円にのぼるもとで、「震災復興債」を大企業に引き受けさせるようにすれば十二分に財源は出てきます。
ところが、民主、自民、公明各党は、もともと日本が負担する義務もない米軍「思いやり予算」を震災のさなかに強行。東北などの港湾が大被害を受けたのに京浜・阪神港などに10年間で5500億円を投じて大港湾をつくる港湾法改正案も強行しました。政党助成金も1日、民主168億円、自民101億円など今年分の配分を決めてしまいました。
子育て直撃
子ども手当についていえば、子育てに関する予算が諸外国に比べても極端に低く、子どもの貧困が深刻なもとで必要なものです。ただし、今年度予算に盛り込まれた給付額の上乗せはやるべきではありません。
しかし、そうした修正が行われないもとで子ども手当が期限切れとなって児童手当に戻れば、中学生以上には支給されないなど、子育て世帯を直撃するため緊急避難措置として延長されたものです。
震災復興と福祉・教育の拡充を求める国民の要求を対立させる議論は結局、福祉・教育の拡充を抑え込み、国民全体に犠牲を強いるものです。(深山直人)
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