2011年4月10日(日)「しんぶん赤旗」
主張
被災地の農業
生産再開が復興への第一歩
未曽有の震災の被災地にも、コメ作りの時期が迫っています。例年なら、希望に満ちて苗を育て、田を起こし、田植えに備えるときです。
被災地でも応急対策などによって、生産に踏み出す農家も少なくありません。生産再開は、食料基地・東北が復興し、国民への食料供給を再び果たすための第一歩です。政府は、全国的な増産で当面の供給を確保するとともに、被災農家の経営再建・復興に力を尽くすべきです。
コメ生産計画は見直せ
巨大地震と大津波は、青森県から千葉県にいたる太平洋沿岸で農地に大きな爪痕を残しました。宮城県では、海水をかぶった農地が耕地面積の11%にのぼるとみられます。地割れや陥没、液状化などの被害もあり、用水路も崩壊、畜舎やハウスも各地で壊れました。復旧には多大な労力と時間、費用がかかります。
農業生産の本格的な復興には、地域社会全体の再建がかかっています。地域の条件と関係者の声を生かした再建が不可欠です。しばらくは生産を再開できない農家への生活支援の仕組みも必要です。また、条件のあるところから農地の復旧と生産の再開にとりくむ必要があります。
政府は今回の震災を激甚災害に指定し、復旧事業への国庫補助引き上げを決めましたが、それだけではとても追いつきません。被災地は広範囲にわたり、復旧事業にあたる地方自治体が被害を受けて機能を十分に果たせないなどの困難もあります。政府が大きな役割を果たすことが不可欠です。
海水をかぶるなどして、かなりの水田が今年は作付けできなくなっています。それなのに、政府はコメの全国的な生産計画を見直さず、県間・県内の調整にまかせるとの姿勢です。これでは、農家を支えることも、国民への食料供給に責任をもつこともできません。全国的な協力を得るためにも、政府は増産を目標に掲げ、生産計画の見直しに踏み出すべきです。
福島第1原発の事故が、震災被害をよりむごいものにしていることも重大です。福島県以南では、地震と津波に加えて、原発事故とそれに伴う「風評被害」の“四重苦”に見舞われています。放射能汚染で農産物の出荷制限が広がり、規制対象にならなくとも、取引拒否や価格低落などの大きな被害が出ています。
土壌汚染のため農作業ができなかったり、作っても売れるかどうか分からないという不安も強くあります。収まらない放射性物質の放出に、農家の苦境は深まるばかりです。
原発被害に全面補償を
政府は、安全・安心な食料を確保する責任を負っています。原発事故の収束に全力をあげるとともに、きめ細かい検査で正確な情報を速やかに出すべきです。それが、「風評被害」を食い止める重要な条件にもなります。
原発事故は「安全神話」をふりまいた政府と東京電力による人災であり、「風評被害」も含め、被害は全面的に補償されるべきです。避難地域となったり汚染されたりして、生産を再開できない農家が、生活と経営を維持できる制度を確立すべきです。当面の措置として一時金支払いなどを一刻も早く進めるべきです。
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