2011年4月15日(金)「しんぶん赤旗」

主張

TPP参加

復興のためにも断念すべきだ


 東日本大震災以来、菅直人政権はそれまで声高に叫んでいた環太平洋連携協定(TPP)参加による「平成の開国」路線を一時棚上げしたようにみえます。被災者救援と被災地の復旧・復興に全国が力を注ぐべきときに、国民世論に分断を持ち込むTPP参加の検討など強行すべきでないことはいうまでもありません。

 被災地・東北は食料供給の拠点であり、その復興は農業の再建なしにはありえません。日本農業に壊滅的打撃を与えるTPPは、東北地方の復興にとりわけ重大な障害となるものであり、参加は断念・撤回すべきです。

参加に固執の声も

 菅政権は従来、TPP参加を6月をめどに決めるとしながら、実際にはあからさまに前のめり姿勢をとりました。大震災が起きてからは、TPPの議論を中断し、全国で開いていた政府主催「開国フォーラム」も中止しています。しかし、菅首相はTPP参加を「(大震災の)影響をも勘案しながら扱いを検討していきたい」(12日の会見)と述べており、参加を見送ったわけではありません。

 TPP参加を要求する財界は、いまなお「日本経済復活のために政府に求めたいのが、TPPへの参加である」(米倉弘昌・日本経団連会長、『文芸春秋』5月号)と、菅政権の尻をたたいています。参加への勢いが弱まるのを懸念する推進派からは、「こういうときこそ、大事なことを先送りするな」(大田弘子・政策研究大学院大学教授、10日のNHK番組で)とする主張もみられます。

 “例外なき関税撤廃”を基本とし、農産物輸出大国である米国に有利なTPPは、日本の食料自給率を先進国中最低の40%から13%に引き下げるとされる農業破壊の取り決めです。農業団体ばかりでなく消費者団体など広範な国民が反対してきたのは当然です。大震災があったから一時棚上げしたというだけでは、いつでも復活させられかねません。きっぱりと断念すべきです。

 岩手県は人口当たりの農業就業人口が全国一であるなど、被災地にとって農業は基幹産業です。大津波に見舞われた被災地にとって、農業の再建は地域経済、ひいては地域社会全体の復興と直結する課題です。だからこそ、これほどの被害にもかかわらず、立ち上がる努力が開始されています。

 東北地方の農産物の販路は関東や全国に広がっています。TPP参加で、全国で輸入農産物がさらにあふれる事態になれば、主食用のコメさえ輸入米にとって代わられかねません。それは被災地の農業再建を不可能にし、復興への努力をも台なしにします。

開き直りの理屈

 大震災のときだからこそ、「日本経済復活のため」にTPPを推進するなどというのは、開き直りの理屈です。TPP参加で輸出を拡大できる大企業だけが生き延びることができればよい、という身勝手なものです。

 TPP参加は、農業だけでなく、日本経済全体に大きな打撃を与えます。とりわけ被災地にとって、雇用の維持がいまほど重要なときはありません。雇用と地域経済を重視する姿勢は大企業にも求められています。被災地の復興を考えるとき、弱肉強食のTPPは“百害あって一利なし”です。





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