2011年4月20日(水)「しんぶん赤旗」

福島・いわき名産

アワビ・ウニ漁補償を

放射能汚染は命取り


 東日本大震災での東電福島原発事故による高濃度な放射能汚染水の流出と放出が福島県・いわき名産のアワビ、ウニ漁を直撃しています。海洋汚染に立ち向かい、再起をめざす漁師の思いは―。(山本眞直)


 福島県いわき市永崎漁港。船着き場にあるアワビ、ウニ漁の「永崎小舟採鮑組合」事務所は3月11日の津波で大破、ほとんど使用不能な状態です。「こんなものは建て直せばいい。一番の問題は東電の原発事故による放射能による海洋汚染だ」。がれきを手に怒りをあらわにするのは組合員の男性(39)。アワビ、ウニ漁に従事して4代目です。

伝統の常磐養殖

 いわき市の海域は沿岸まで丘陵部が迫り、良好な磯と藻(も)場がつくられ、アワビ、ウニの養殖が昔から盛ん。「常磐もの」として東京・築地市場でも値を動かす「ブランド品」です。ウニの「貝焼き」は明治から伝わる伝統的な漁師料理として根強い人気があります。

 組合員は、「アワビ、ウニ漁は5月に解禁される。津波で流されたものもあるが、磯の岩場に張り付いたものはかなりあるはず。でも東電の原発事故による海水の放射能汚染と、その風評被害でアワビ漁が再開できない」と悔しがります。

 種付け、収獲のいずれも潜水作業だけに、海水の放射能汚染問題は漁師にとって「命取り」です。

 アワビ養殖に従事して20年というベテランの男性(47)は、「自分たちの養殖は農業と同じだ」として「資源管理型漁法」についてこう強調します。

 「組合員の負担で稚貝を購入し、それを付着器につけて海底で育てる。大量に付着させると貝が藻を食べ過ぎて磯やけという現象をおこしてだめになる。藻場をあらさない程度に抑えたり、小粒のものは取らないなど藻場を大事にした漁業に徹している」

 それだけに、予想通りのよいアワビやウニを手にしたときには「ダイビング中で口はあけられないが、気持ちで笑みが浮かぶ」と口元をほころばせます。

 アワビ漁16年という男性(39)は、「ようやく割烹(かっぽう)料理店から注文がくるようになりこれからだ、というときに放射能汚染で出漁もできないなんて」と唇をかみます。

継続調査求める

 漁船を津波で破壊された組合員はいいます。「津波だけなら再起できる。だけど放射能被害はどうにもならない。東電と国は、損害・休業補償をきっちりとさせるためにも海水や魚介類の汚染調査(サンプリング)を責任もってやってほしい。そうしないと明治以来の『常磐もの』が消えてしまう」

 大震災と原発事故によるいわき市内の漁業被害を調査、漁業復活に向けて関係者と対話を続けている日本共産党の渡辺博之市議は「国や東電、自治体は海水汚染や魚介類への影響をきちっと継続調査し、根拠のない風評被害をなくすべきだ。そのうえで損害補償をしっかり行い、なによりも東電の事故収束を急ぐことだ。その実現にむけて力を尽くしたい」と話します。

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