2011年4月22日(金)「しんぶん赤旗」
カネの力で原発推進
経団連が“通信簿”で要求
A評価の自民 変化した民主
東京電力福島第1原発での過酷事故を受け、原発を推進してきた民主、自民、公明など各党の責任が問われています。特に、政治献金で結びついた政財界一体の原発推進が問われています。
日本経団連は2004年から09年にかけて“政党通信簿”と呼ばれる「政党評価」(評価の対象は自民、民主両党のみ)を実施し、そのなかの10項目の「優先政策事項」に毎回原発政策の推進を盛り込んできました。
経団連は“通信簿”とあわせて“口頭試問”と呼ばれる自民、民主両党との懇談会も実施。これまで54基もの原発建設を推進してきた自民党は、一貫して政策合致度「A」という高い評価を経団連から受けてきました。
一方、当初は低評価だった民主党はどうか。06年の民主党に対する“口頭試問”では次のようなやりとりが交わされていました。
勝俣恒久経団連副会長 原子力の活用は環境とエネルギーの両面から国策として推進すべきだ。
直嶋正行民主党政調会長代理 原子力を活用しなければ日本のエネルギー供給はおぼつかない。
勝俣副会長とは、当時の東京電力社長で現会長です。直嶋政調会長代理は政権交代後、経済産業相として原子力行政を所管し、10年6月には、2030年までに少なくとも14基以上の原発を新増設するという「エネルギー基本計画」を策定しました。
民主党は“通信簿”開始当初は「基幹エネルギーとしての原子力の位置づけが不明確」(04年)という評価を経団連から受けていました。それが、06年には「原子力の活用を含めた総合的な検討を実施」、07年には「原子力利用については安全を第一に着実に進める」と変化。確実に原発推進に踏み込んできました。
関西電力出身の民主党の藤原正司参院議員は、民主党の原子力発電の位置づけが07年を境に「過渡的エネルギー」から「基幹エネルギー」に変化したことを電力総連の機関紙のインタビューで明かし、「我々の産業からしたら、当たり前のことが当たり前に理解されるのには、時間もかかる」と語っています(07年6月1日付)。
経団連の“政党通信簿”は、経団連が「緊急かつ重要」と判断した「優先政策事項」について、自民、民主両党の(1)政策の合致度(2)取り組み(3)実績―をA(推進)からE(逆行)の5段階で評価。加盟企業に対して、この評価を政治献金の判断材料とするよう呼びかけてきました。
「優先政策事項」には、原発政策のほか、法人税率の引き下げや消費税率の引き上げも盛り込まれてきました。圧倒的な資金力にモノをいわせて政治を買収するシステムです。経団連は批判をうけて“政党通信簿”はやめたものの、企業献金は続いています。
カネの力で政治をゆがめる企業献金の害悪が、原発推進という形で深刻に表れています。 (佐久間亮)