2011年4月22日(金)「しんぶん赤旗」
メキシコ湾原油流出から1年
沿岸復興は長期化
空前の産業・環境被害 補償難航も
【ワシントン=西村央】メキシコ湾で起きた米史上最悪の原油流出事故から20日で1年となりました。魚介類や鳥類など海洋環境に与えた打撃は大きく、オバマ大統領はこの日発表した声明で「政権は沿岸地域の保護と回復に向け、必要なあらゆることをおこなっている」と述べ、復興に全力を尽くす考えを表明しました。
事故を起こしたのは英石油メジャーBPの海底油田。原油掘削施設の爆発で11人が死亡。原油流出は、油井が完全に封鎖される9月半ばまで5カ月間続き、その総量は約7億8000万リットルに達しました。
この量は、それ以前最悪の事故だった1989年のアラスカ沖での原油流出、約420万リットルを桁違いに上回るものでした。
海上を漂い、沿岸を覆った原油により、フロリダ、アラバマ、ルイジアナの各州などで、カキ、エビ漁に甚大な影響をもたらしました。ウミガメや鳥類など野生生物にも大きな被害がでました。景勝地のホテルなど観光業者も打撃をうけました。
BPは昨年6月、米政府との間で総額200億ドル(約1兆7000億円)の被害補償基金を作ることで合意。数年かけて補償する計画です。
現在、それにそって補償協議が続けられています。米メディアによると、この補償は将来の損害賠償請求の放棄を条件とした和解を迫るもので、協議の難航も伝えられています。
これとは別に、自然保護団体は昨年10月、絶滅の危機に直面しているウミガメ、鳥類、フロリダマナティーなどに打撃を与えたとして、回復をはかるための基金設立をBPに求める訴訟を起こしました。
今年3月には、米海洋大気局(NOAA)の研究員が、原油流出が大気汚染にもつながっているとの報告を発表しました。
空前の量の原油流出の影響は多方面に及び、解決まで長期間を要するものとみられています。