2011年4月23日(土)「しんぶん赤旗」

原発事故 産業、膨らむ損害

野菜・原乳 出荷制限671億円 宿泊解約56万人

政府まとめ


 「国際原子力事象評価尺度(INES)」で最も重大な「レベル7(深刻な事故)」に引き上げられた東京電力の福島第1原子力発電所事故は、地域住民の生活と産業に未曽有の困難をもたらしています。政府がこれまでにまとめた損害もかつてない規模に達しています。(清水渡)


 政府の調査では、野菜や原乳、シイタケの出荷の被害は8万4512戸に及び、金額は年換算で671億円にのぼります。稲の作付け制限も行われています。避難指示等の地域では、家畜には給餌ができず、餓死が発生しています。

 出荷制限品目以外の作物でも、風評被害で売れ残りや返品、価格下落による損失などが発生しています。3月下旬には東京卸売市場で、茨城県産レタスの価格が、過去3年平均と比べ約5割の低下、栃木県産トマトは同4割低下しました。

 水産業でも、福島県の漁業協同組合が操業を自粛しているほか、風評被害で福島県近隣の水産物が小売業者から忌避される事態が起きています。3月下旬には千葉産キンメダイの価格が例年の半額まで下落した卸売市場もあります。

 避難指示等の区域の市町村には、約8000の企業・個人事業者が存在し、6万人が働いています。事業活動ができず、継続も困難となっています。また風評被害のため、「工作機械をリースする場合、福島の企業は、買い取りを要求されている」「原発の風評被害で、企業間の物流が停滞して、資材が届かない」「喜多方で製造したラーメンは不要といわれている」などの切実な声が出ています。

 トラック事業では、30キロ圏内に99の事業者が営業しており、確認されているだけで51の事業者が営業を休止しています。被害額は年間換算で100億円にのぼります。

 自動車販売業では、休業による被害のほか、風評被害として「福島ナンバーの中古車の売買が敬遠される」「納車ルートが一部30キロ圏内を通ったことにより、放射能汚染されていないことの証明を求められる」などの実態が、中古車販売店から寄せられています。

 観光の分野では、3月の訪日外国人旅行者が前年同月と比べ半減しました。また、震災発生以降、全国で56万人分の宿泊予約がキャンセルされています。

 これらの被害の様相は、4月15日に開かれた原子力損害賠償紛争審査会に提出された各省庁の報告で判明したもの。深刻化する原発事故で被害はさらに拡大することが予想されます。

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