2011年4月23日(土)「しんぶん赤旗」
TPPの弊害、NGO告発
後発薬 使えなくなる
国連に書簡
国際的な非政府組織(NGO)や学者がこのほど、国連の人権特別報告官に公開書簡を送り、交渉中の環太平洋連携協定(TPP)は加盟諸国で適切なジェネリック医薬品の入手、使用を妨害するものだと訴えました。書簡は、TPP交渉に参加している政府に勧告をするよう求めています。
公開書簡は国連人権理事会の「万人が最高水準の保健を享受する権利」に関する特別報告官、グローバー氏宛てのもの。同書簡に署名しているのは、ワシントンに本部を置く「ナリッジ・エコロジー・インターナショナル」などの14団体・個人です。書簡は、TPP知的財産(IP)条項に関する米国の提案が承認されると、開発途上国がより安価なジェネリック医薬品を製造、輸入することができなくなり、適切な医療行為ができなくなると批判、米国による医薬品独占を図るものだと警告しました。また交渉が秘密の下に行われており、米国の影響力が過大であることも指摘しています。
公開書簡によると、米国はTPP交渉で、世界貿易機関(WTO)の「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS)での医薬品特許尊重義務の基準を超える条項を提案しているといいます。
公開書簡署名者の1人、「マレーシア積極的医療アクセス推進グループ」(MTAAG+)のエドワード・ロー理事は、TRIPSではジェネリック医薬品メーカーは、既存医薬品の臨床データを使う権利を認められていると強調。これに対し、TPPでの米提案では独自に臨床実験をやり直さなければならなくなり、実質的に医薬品を発売できなくなると指摘しています。(夏目雅至)
ジェネリック医薬品 後発医薬品ともいいます。特許が切れた医薬品を他の製薬会社が製造・供給するものです。開発コストがかからないため、安価に供給できます。成分特許を認めていないインドなどの国では制約を受けずに製造され、アフリカなどへ輸出されています。
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