2011年4月23日(土)「しんぶん赤旗」
津波 農地に塩害
再建 国の責任で
宮城・仙南
東日本大震災で津波被害を受けた農地の塩害対策は、個々の農家や自治体の能力を超える課題です。宮城県南部、仙南地方の農民、自治体は、国が農業再建に責任を持つよう求めています。(山田俊英)
水田の52%冠水 特産イチゴ壊滅
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名取市では、水田面積の52%に当たる2200ヘクタールが津波で冠水しました。今も海水が引きません。水を海へ流す排水機場が5カ所、津波で壊れたためです。水路もつまっています。農地へ水を流して塩分を取り除く作業も、排水機場と水路が復旧しないと始まりません。
冠水した田畑だけでなく、その周辺、海水をかぶらなかった農地223ヘクタールも、今年の作付けができなくなってしまいました。農地は水路でつながっています。排水機場が動かないうちに周辺の田に水を引くと、冠水した農地へ水が流れ込んでたまってしまいます。結局、いつまでも海水が引かないことになります。
市では、やむなく周辺地域の農家に今年の水田の作付け自粛を求め、農家も作付けを断念せざるをえませんでした。
排水機場は国営事業で設置した施設です。現在修理が行われており、2カ所は6月中旬までの暫定的な復旧をめざしています。「今は1カ所の排水機場につき4台の仮設ポンプで排水していますが、本来の能力を発揮するためには70台が必要です」と、名取土地改良区の松浦辰雄副理事長はいいます。本格的な復旧のためには新規建設が必要ですが、費用は1カ所およそ20億円。「見通しはまだ分かりません」と、松浦さんは厳しい表情です。
名取市の佐々木一十郎(いそお)市長は21日、仙南地方の調査に訪れた日本共産党の紙智子参院議員に、「すでに日本の食料自給率は40%。国の存亡が問われます」と語り、国の財政支援を強く求めました。
亘理町、山元町では、特産の「仙台イチゴ」がほぼ壊滅しました。両町合わせたイチゴ農家380戸、栽培面積99ヘクタール中、津波被害がなかったのは24戸、5ヘクタールだけ。幾重にも曲がったハウスの骨組みだけが残りました。
みやぎ亘理農業協同組合の岩佐國男組合長は、「東北一のイチゴ産地として誇りをもってやってきた。それを一瞬にしてなくしてしまった」と、紙議員との懇談で目に涙を浮かべました。
農家は残った苗に付いた汚泥を取り除く作業をしていますが、塩分を含んだ泥は硬く、なかなか取れません。多くの農家はこれまでの投資で負債を抱えています。その上に津波でハウスも農機具も失い、再建には1戸当たり数千万円がかかります。
「すべてを失ったが、イチゴ栽培を続けたい。国はそういう人たちの声を聞いてもらいたい」
岩佐組合長の言葉にひときわ力がこもりました。
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