2011年4月26日(火)「しんぶん赤旗」

汚染水流出期間、量に疑問

保安院は東電推定を追認

魚介類、健康への影響は


 経済産業省原子力安全・保安院は25日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)2号機取水口付近から海へ流出した高濃度放射能汚染水の量に関する東京電力の推定を妥当とする評価結果を公表しました。汚染された魚介類や海藻を人間が食べても健康に影響は出ないとしています。

 汚染水の流出が見つかったのは今月2日午前9時半ごろで、流出が止まったのは6日午前5時半ごろです。東電の分析によると、汚染水には1立方センチ当たり放射性のヨウ素131が540万ベクレル、セシウム134が180万ベクレル、同137が180万ベクレル含まれていました。それぞれ、国の定める濃度限度の1億3500万倍、3000万倍、2000万倍に相当します。

 汚染水が流れ込んでいた場所で2日に採取した海水には、濃度限度の750万倍に相当するヨウ素131が含まれていました。

 東電は今月21日、流出現場付近で測定した空気中の放射線量の推移や、流出の様子を撮影した写真などをもとに、流出が続いていたのは1〜6日で、流出した放射能の量は4700テラ(兆)ベクレルだったとする推定結果を発表しました。

 しかし、福島第1原発周辺の海水からは3月下旬にすでにヨウ素131などの濃度が急増しており、流出は1日以前から始まっていた可能性があります。

 保安院の西山英彦審議官は、流出した放射能の量などに関する東電の推定は「十分保守的(多めに見積もっている)と考えられ」ることから妥当と評価したと説明。さらに、原子力安全委員会が「(福島第1原発から海へ流出している放射能は)潮流に流され拡散」するとしていること、海水の調査結果から放射能の濃度が減少傾向にあるとみられることなどをあげ、「(人間の)健康に影響は出ない」と述べました。

解説

流出した核種、詳細不明

 東京電力は、今月4日から10日まで集中廃棄物処理施設に貯蔵していた放射能汚染水と、5、6号機の「サブドレンピット」と呼ばれる施設にたまっていた放射能に汚染された地下水、合わせて約1万トンを意図的に海へ放出しました。

 東電の推定では、放出した汚染水に含まれていた放射能の量は1500億ベクレルで、それによって汚染された魚や海藻を1年間食べ続けても被ばく量は0・6ミリシーベルト。東電は、一般の人が自然界から1年間に受ける2・4ミリシーベルトの4分の1にすぎず、人間の健康に影響はないとしていました。流出した高濃度放射能汚染水に含まれていた放射能の量は、東電の推定でも4700兆ベクレルで、意図的に放出した汚染水の3万倍以上です。1500億ベクレル放出したことによって0・6ミリシーベルト被ばくするという東電の推定が正しいのであれば、4700兆ベクレル流出による影響は単純計算で0・6ミリシーベルトの3万倍、つまり1万8000ミリシーベルト(18シーベルト)以上となります。一般の人の年間被ばく線量限度1ミリシーベルトと比較して、途方もない値です。

 東電は、流出した海域に生息する魚や海藻の調査をせず、保安院も実施を求めていません。しかも、流出した汚染水に含まれていた放射性物質の量が明らかになっているのは、ヨウ素131とセシウム134、同137の3種類だけです。

 摂取すると骨などに蓄積して長い間体内で放射線を出し続けるストロンチウム90などが含まれているかどうか、含まれているならどれぐらい含まれているかなどは一切明らかになっていません。明確な根拠も示さずに「安全」を強調するのは無責任です。(間宮利夫)


 ベクレルとシーベルト ベクレルは放射能の強さを表す単位で、数値は1秒間に崩壊する原子核の数。人体への影響はこの数値に一定の係数をかけてシーベルトで表します。





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