2011年5月4日(水)「しんぶん赤旗」
被災者の声届ける党は
補正予算の論戦にみる
東日本大震災の救援・復興の2011年度第1次補正予算が2日、成立しました。日本共産党は審議で、被災者の実態と願いに寄り添いながら、救援・復興のあり方と原子力政策の抜本的転換の方向を示し、実施を迫りました。その論戦や政府・各党の動きから見えてくるものは――。
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再建
住民合意こそ 共産
「助かった命を失うことがあってはならない」
穀田恵二国対委員長は衆院本会議(4月28日)で、劣悪な避難所の環境改善と、希望者全員が入れる仮設住宅建設を求めました。そのために民間用地や民間住宅の借り上げなどを要求。被災者の生活再建と地域の再建では、「計画は住民合意で、実施は市町村が主体に、財源は国が責任を持つという原則を貫くべきだ」と提起し、個人補償の抜本的拡充、農業・漁業や中小企業など被災者の生業再建への直接支援、「公共」の機能再建を求めました。
菅直人首相は、仮設住宅について「民間借り上げも含めて早期確保に全力をあげる」と表明。厚生労働省は2日までに、民間借り上げについて、国が費用を負担する仮設住宅として扱うことを被災県知事に通知し、改善へと動き出しました。
高橋ちづ子議員は衆院予算委員会(29日)で、「本当の復興のためには個人補償の積み重ねが必要」と主張しました。被災者生活再建支援制度(個人補償)では、全壊の場合300万円が支払われるはずなのに、第1次補正予算案ではその担保がない問題を追及すると、松本龍防災担当相は「(2次補正で)当然お支払いをいたします」と答弁。高橋氏は、これをスタートに、さらに増額させるため全力をあげる決意を表明しました。
笠井亮議員は衆院予算委員会(30日)で、首都圏などの液状化被害についても「国の支援策を検討し、抜本的な支援の拡充が必要ではないか」と求めました。松本防災担当相は「融資制度はあるが、(支援策は)ご指摘の通りこれからさらに深彫りして検討したい」と表明。政府は、液状化被害にも被災者生活再建支援法を適用するため基準見直しを進めています。
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原発
原子力行政の転換を 共産
福島第1原発事故問題で穀田国対委員長は「安全神話」を厳しく批判しました。事故の拡大を防ぎ、一刻も早く事態を収束させる、原発に起因するすべての被害に線引きなどせずに全面補償することを求めたうえで、「原発依存からの脱却」を正面から迫りました。
菅直人首相は「今後の原子力政策のあり方については白紙から検討していく」と答弁しました。
紙智子議員は参院予算委員会(1日)で、福島第1原発事故で農業などが「風評被害」にあっているが、原子力損害賠償紛争審査会の「第1次指針」が示した損害賠償の対象に入っていない問題を取り上げました。
「詳細な調査がいる」(高木義明文部科学相)という政府に、「風評被害も出荷停止と同じだ。もう待てないというのが現場の声だ」と迫った紙議員。「(2次指針に)なんとしても盛り込まれるよう強く働きかけたい」(鹿野道彦農水相)、「私もできるだけ早く次の段階で入れるべきだと考えている」(菅首相)との答弁を引き出しました。
大門実紀史議員は参院予算委員会(2日)で、全国の原発のなかで10メートル以上の津波と阪神大震災レベルの地震に耐えられるものは一つもないとし、「(津波、地震の)想定値の抜本的な見直しが必要ではないか」と迫りました。海江田万里経済産業相は「おっしゃる通り早急に見直したい」とし、菅首相は「福島第1原発の検証結果を待たずに検討する必要がある」と表明しました。
放射線量基準をめぐる政府の対応を「場当たり的」と批判して、小佐古敏荘内閣官房参与が4月29日に辞任しました。この問題では、同氏の辞任前に、宮本岳志衆院議員が、政府が子どもの被ばく線量を成人と同じ20ミリシーベルトとしたことを批判し、低い基準にすべきだと政府に迫っていました。
民・自・み 心は財界に
国会の質疑では被災者救援・復興について「住民の意向を踏まえる」(菅首相)とする政府。しかし、同じ政府の「復興構想会議」では「上からの押しつけ」という逆行する動きが出るなど、予断を許しません。
自民党の秋葉賢也議員も29日の衆院予算委員会で、被災地復興について「さまざまな規制緩和や(法人税減税など)税制の見直しを進め新しいまちをスピーディーに創造」などと、財界に顔を向けた主張です。みんなの党の渡辺喜美代表も「次の未来を考えた大規模農業、大規模漁業」づくりを求めました。
一方、自民の谷公一議員は同委員会で、個人補償について、自民党政府がかつて私有財産制に反するとして制度創設に抵抗したことは頬かむりしつつ、「300万円を500万円にと提言している」と発言。個人補償の抜本的拡充という日本共産党の年来の主張がいま、大きな世論となっていることが示されました。
財源
共産 内部留保活用を
民・自・公 消費増税へ着々
補正予算の論戦では、復旧・復興財源をどう確保するか、各党の態度が鋭く問われました。
日本共産党は、復興財源を確保するために、2011年度予算の抜本的な組み替えとともに、民間資金(大企業の内部留保)を活用するよう提案してきました。
穀田国対委員長は衆院本会議(4月28日)で、法人税減税や証券優遇税制延長の中止、原発の推進予算、不要不急の公共事業、米軍への「思いやり予算」の中止を主張し、さらに必要な財源は、大企業に「復興国債」の引き受けを要請するなどして、244兆円にのぼる内部留保を活用するよう提起。消費税増税は被災者(地)の生活再建、産業復興の大きな障害になるとし、きっぱりと反対を表明しました。
一方、政府・与党が、復興財源を消費税増税でまかなおうと狙っていることは明白です。第1次補正予算は復興財源として、基礎年金国庫負担を2分の1に引き上げるために確保された「埋蔵金」の転用を盛り込みましたが、年金財源を今後、何で穴埋めするか―。
野田佳彦財務相は、「6月に成案を得る『社会保障と税の一体改革』の中でまとめる消費税も含む『税制の抜本改革』を安定的な財源にするということだ」(4月30日)と表明。消費税増税で年金財源を穴埋めすることを鮮明にしました。
政府は今後、復興財源確保のために国債発行を検討しています。枝野幸男官房長官はその償還のために消費税率を期間限定で上げる考え方が「民主党で検討されている」ことを明らかにしています。
民主、自民、公明の3党は29日、補正予算に関する合意文書に調印。そこでは、年金の信頼性の確保のためには「社会保障改革と税制改革の一体的検討が必須の課題」と明記されました。
同合意について菅首相が1日の参院予算委員会で「大変よく考えていただいた中身だ」と歓迎したように、3党共同で、年金財源を口実にして、復興財源を入り口に、出口は消費税増税というレールを敷こうという動きが強まっています。
日本共産党の佐々木憲昭議員は衆院財務金融委員会(30日)で、年金財源の穴埋めを口実に、税制「抜本改革」・消費税増税につなげようとする動きにたいし「断じて容認できない」とし、3党合意を厳しく批判しました。
政府批判ばかり 自民幹事長
多くの国民が、どの党が被災者の思いを代弁するのかに注目するなか、自民党の石原伸晃幹事長は、4月28日の衆院本会議で、「(いっせい地方選で)民主党は惨敗であります」と述べました。そのうえで、子ども手当などを「バラマキ」だとして廃止を求め、菅首相に辞任を迫るなど政府・民主党批判を前面に。そこには、被災者の心情に寄り添う姿勢はまったくありませんでした。
他党にも変化が
日本共産党が一貫して「安全神話」をただし、政策の転換を求める中、この問題でも他党に変化が生まれています。
民主党の森ゆうこ議員は、1日の参院予算委員会で「脱原発宣言するところから本当の復興が始まる」と述べ、みんなの党の小野次郎議員も同委員会で「自然エネルギー立国を打ち上げていただきたい」と質問しました。
一方、自民党は全国の原発54基すべてを推進した責任を棚に上げて、「(政府と東京電力には)連帯責任がある」(4月29日の衆院予算委員会で吉野正芳議員)などと、東電の責任を免罪する姿勢まで示しました。