2011年5月12日(木)「しんぶん赤旗」
食料石油高騰 貧困削減に障害
国連のアジア太平洋調査
国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)は、このほど公表した「アジア太平洋経済社会調査2011」の中で、食料、石油価格の高騰が同地域の発展途上国の回復しかけた経済を再び後退させ、貧困削減努力を大きく妨げていると指摘しました。
同報告は、11年のアジア太平洋地域の発展途上国(中国、インドを除く)の国内総生産(GDP)成長率が昨年の8・8%から7・3%に後退すると予測しています。
同報告によると、昨年の世界的な食料価格の高騰の影響で、本来貧困から脱出できた1560万人が貧困ライン(1日1・25ドル)未満の生活状態にとどまり、380万人が新たに貧困状態に追い込まれました。これにより15年までに極端な貧困を半減するとした国連ミレニアム目標(MDG)第1目標の達成は1年遅れるとしています。
報告は、食料と石油の価格高騰が今年も続いた場合、最悪で2460万人が貧困ラインを脱出できず、1780万人が新たに貧困ライン未満に転落すると予測しています。この場合、MDG貧困削減目標達成は5年遅れます。
また同報告は、東日本大震災前の予測として、日本のGDP成長率は昨年の3・9%から1・5%に後退するとしています。
報告は、震災と福島第1原発事故の影響について、「11年に日本経済の成長率が1%落ち込んだとしても、アジア太平洋地域の発展途上国の経済に及ぼす影響は0・1%程度」だと推定しています。ただシンガポールは経済成長面で、インドネシアは輸出額で大震災の深刻な影響を受ける恐れがあるとするなど、「その度合いは国によって異なる」とも指摘しています。
国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP) 国連経済社会理事会の五つの地域委員会の一つ。アジア太平洋地域の経済の発展、社会の開発のための調査、研究や勧告を行います。本部はバンコク。51カ国が正式加盟しているほか、九つの国・地域が準加盟しています。米、英、ロ、仏、日、韓国を除きほとんどが発展途上国です。
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