2011年5月16日(月)「しんぶん赤旗」
漁業再建 国の支援早く
このままでは収穫間に合わない
岩手・重茂半島
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東日本大震災による大津波で漁場や養殖施設、水産加工施設まで壊滅的な被害を受けた東北地方沿岸の漁協組合と漁業者。再建の道は困難で漁業者の不安は高まっています。一刻も早い国の具体的な支援施策が求められています。
本州最東端に位置する重茂(おもえ)半島(岩手県宮古市)。漁業従事世帯数約90%の地域で沖は親潮と黒潮の寒暖流が交差し、良質なワカメやウニがとれ、サケの孵化(ふか)放流事業、ワカメ・コンブの養殖業も盛んです。住民は半島の豊かな天然資源を守るために合成洗剤を使わないなどの自然保護活動にも取り組んでいます。
重茂漁協では漁業再生のために漁協自らが養殖施設を整備し、新しい漁船を購入。船や施設は組合員の共同利用という方式を計画しています。
重茂漁港には、土砂に埋まったサケの孵化施設、鉄骨だけ残った水産加工施設などが並びます。漁業関係者が津波に破壊された沖にある養殖施設の引き揚げ作業をしていました。
作業をしていた男性(46)は船や自前の加工機械が津波に流されました。「親の代から養殖業をやっていたけど元通りにするには多額の借金が必要。天然漁だけにしようかと思う。それだけじゃ生活ができないから、他の仕事と兼業で…でも他の仕事もない」
同漁協は昨年末の大しけでも生産物の流失など14億円の被害。今回の大津波の被害を元通りにするには約100億円かかるといいます。
同漁協の高坂菊太郎参事は、「7月には天然のメカブが胞子を出すので、新しい養殖施設を早く設置しないと来年の収穫に間に合わない。国はそういう実情を理解して早急に支援してほしい」と訴えました。
宮古市水産課担当者によれば、市はガレキ撤去作業など漁業者の雇用の確保、養殖施設の補助金の上乗せなどの支援を検討。「本当は全額補助をしたいが市だけでは財源的に厳しい。国には漁業者を二重債務にしないことも含めて全面的な支援を要望している。漁協が再建の道筋を示しているのだから、市としても安心して取り組めるように早く支援策を示したい」
(洞口昇幸)
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