2011年6月2日(木)「しんぶん赤旗」
生活保護の大幅改悪
政府が非公開で推進
有期制持ち込み給付減狙う
生活保護制度の大幅な法改悪につながる議論を政府が非公開で進めようとしています。生活保護制度は、憲法25条に保障された、国が責任をもつ最後のセーフティーネットです。国民の生存権にかかわる重要な問題を密室で決める動きに批判が出ています。
厚生労働省は5月30日、生活保護制度の改定に向けて地方自治体との協議を始めました。8月までの取りまとめを目指し、今後の協議は事務レベルですすめられます。同省は、事務レベル協議はメディアも含め「公開しない」といいます。
今回の協議について細川律夫厚労相は、初会合で「地方提案をふまえ、制度『改正』を視野に入れた、これまでと一線を画するもの」と表明しています。
大臣告示である生活保護基準についての協議でさえ社会保障審議会生活保護基準部会で公開されているのに、制度改定の骨格を決める議論を密室で進めようとしているのです。
今回の協議は、公の責任放棄という点で、国と地方の思惑が一致するかたちで進んでいます。
議論のベースとなるのは、昨年10月に指定都市市長会(政令指定都市の首長で構成)が発表した生活保護改悪案。働ける年齢層(16〜65歳)に対し▽就労自立を促しボランティアや軽作業を義務づける▽ボランティアなどへの態度をみて3〜5年で受給の可否を判断する更新制度を導入する――など生活保護に有期制を持ち込み、医療扶助にも自己負担をもちこむもの。生活保護の給付費を削減するのが狙いです。
生活保護問題対策全国会議など12団体は昨年10月、同案について、保護制度を「事実上崩壊させ、餓死者などを出しかねない重大な結果をもたらす」「生活保護法の変質をもたらす」ものだと厳しく批判しています。
全国生活と健康を守る会連合会の辻清二事務局長は、「国民の生存権を左右する議論は、国民に明らかにするべきだ」と指摘。「非公開は、いかに議論の内容が国民に対して後ろめたいものか、ということだ。働ける年齢層だから保護しないというのは、憲法の法の下の平等にも反するものだ」と批判しています。
5月30日には、52団体が連名で、議論の公開と利用者の声の反映を求める申し入れを行いました。
ナショナルミニマムである生活保護の改悪は、全国民に影響を与えます。国民に知らされない改悪の強行は、許されません。(鎌塚由美)