2011年6月21日(火)「しんぶん赤旗」

菅内閣 震災でもTPP推進

財界が強硬に参加求める

“復興の妨げ”JA全中会長ら農業者


 東日本大震災で農漁業の主要産地が大きな打撃を受けた中でも、菅直人内閣は、環太平洋連携協定(TPP)への参加を進める立場を変えていません。農業者から復興の妨げだと批判があがっています。


 菅内閣は5月17日、東日本大震災後の政策運営を定めた「政策推進指針」を閣議決定しました。TPP交渉参加を決める時期については、「総合的に検討する」との表現で先送りしました。TPP参加に向けて昨年11月に閣議決定した「包括的経済連携に関する基本方針」を堅持することも「指針」で決めました。

「早期判断」と首相

 5月26日、フランス・ドービルで行った日米首脳会談で菅首相は、TPP交渉参加についてオバマ大統領に「震災のため遅れているが、できるだけ早期に判断したい」と伝えました。

 その背景には、TPP参加を強硬に主張する財界の要求があります。日本経団連は4月19日、「わが国の通商戦略に関する提言」を発表。TPP参加によって関税撤廃や規制緩和を進めるよう求めました。5月27日に発表した「復興・創生マスタープラン」でも、TPP参加が「不可欠であり、震災により後退させることなく推進する必要がある」と強調しています。

 6月10日に行われた「食と農林漁業の再生実現会議」(議長=菅首相)では、大企業代表のメンバーが「復興だけでなく(政府はTPPの)結論を早く出してほしい」(三村明夫・新日本製鉄会長)と要求しました。

 しかし、この日の会議では全国農業協同組合中央会(JA全中)の茂木守会長が「TPPは復興の足かせにしかならない」と批判しました。JA全中は9日、1月から取り組んでいるTPP参加反対署名が目標の1000万人を超えて1120万人分に達したことを明らかにしました。

 農民運動全国連合会(農民連)は、菅内閣が引き続きTPP参加をたくらんでいることに対し、「例外なき関税撤廃をめざすTPPは、日本の農業と地域を崩壊させるものであり、被災地を復興しようという懸命の努力を押しつぶすものだ」として反対運動の強化を呼びかけています。

水産業壊滅の試算

 日本共産党の紙智子議員は3日の参院予算委員会で、農林水産省の試算を基に、関税撤廃で、ワカメがほぼ全滅、コンブが7割減、サケ・マスが6割減など壊滅的被害を及ぼすことを指摘。これら品目の生産量上位を占めるのが被災県の宮城、岩手であり、「TPPで日本の水産業を壊滅させることになる」として交渉参加の断念を求めました。

 井上哲士議員も5月30日の参院決算委員会で、岩手、宮城、福島3県のコメ、牛肉などの生産高が全国の上位を担っていることを挙げて「TPP交渉参加はありえない」と政府に迫りました。





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