2011年6月28日(火)「しんぶん赤旗」

「政界工作 社に損害」

第一生命社長を株主提訴


 第一生命保険(本社、東京都千代田区)の渡辺光一郎社長による特定の国会議員への政界工作が同社に損害を与えたとして、東京都内在住の株主(33)が27日、渡辺社長に4220万円の賠償を求める株主代表訴訟を東京地裁に起こしました。

 訴状によると、渡辺社長は役員になった2007年7月以降、生命保険業界に協力的な民主、自民両党の国会議員のパーティー券購入や接待のほか、09年8月の総選挙では、これら28議員を応援するため全国行脚し(本紙1月4日付既報)、職務を怠ったと指摘。こうした利益供与の対価として、保険金不払い問題での同社に有利な取り計らいがあったとしています。

 同日、原告と弁護団は東京地裁内で会見。阪口徳雄弁護団長は「企業側が特定政治家に便宜供与し、その議員から企業が便宜供与を受けるという癒着関係が許されるのかを問う裁判だ」とのべました。

 同席した株主の男性は「一会社員が大企業を訴えるのは勇気がいるが、17人の弁護士がおり、頼もしく思う。がんばりたい。第一生命にはきちんとした会社になってほしい」と語りました。渡辺社長は、業界団体の生命保険協会の会長です。


解説

問われる特定議員との癒着

 第一生命で長年、政界工作を取り仕切る調査部の責任者だった渡辺光一郎社長を相手どった今回の訴訟は、政治家と企業の癒着を鋭く問うものです。

 これまでも大手生保による自民党本部への献金の違法性が法廷で争われたことはあります。今回は、大手生保の特定政治家への利益供与の違法性を問う初の株主代表訴訟です。

 第一生命は国会議員を格付けし、自社に協力的な高ランクの者ほど、経済的人的支援を厚くしていました。その先頭に立っていたのが、渡辺社長です。

 企業による特定議員への利益供与は、そのワイロ性が濃厚で悪質です。

 自民党の山本明彦衆院議員(当時、後に金融担当副大臣に就任)は、第一生命などの保険金不払いが問題となった2007年に「数字的に比較的少ない」などと、国会で業界擁護の発言。同党の金子一義元国土交通相も国会で同社に有利な言動をしたことが関係者の証言でわかっています。

 2人とも同社からパー券購入や渡辺社長の選挙応援を受けています。本紙の取材に政治資金規正法などの法令を順守しているとする同社。しかし実態はとても「適法」とはいえないものです。

 同社には、多様な政治信条と政党を支持する800万人もの契約者がいます。こうした公益性の高い企業のトップが、特定議員と癒着することは健全な企業活動といえるのか、審理の行方が注目されます。 (矢野昌弘)





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