2011年7月5日(火)「しんぶん赤旗」
第3回中央委員会総会
志位委員長の幹部会報告
志位和夫委員長が3日、第3回中央委員会総会でおこなった幹部会報告は次の通りです。
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みなさん、おはようございます。インターネット中継をご覧の全国のみなさんにも、心からのあいさつを送ります。
第3回中央委員会総会の任務は、大震災・原発事故問題とのかかわりで日本の政治の現状を明らかにし、国民的たたかいの課題を提起するとともに、いっせい地方選挙の教訓と現在の情勢をふまえ、いかにして強大な党建設をすすめるかについての方針を提起することにあります。私は、幹部会を代表して中央委員会総会への報告を行います。
1、大震災・原発問題と日本の政治の現状
報告の第一の主題は、大震災・原発問題と日本の政治の現状についてであります。
大震災・原発事故――日本の政治のあり方を根本から問う
長期にわたって国民の力を総結集して打開すべき国政の最大の課題
3月11日に発生した東日本大震災は、巨大地震と津波による甚大な被害のうえに、東京電力福島第1原発事故による被害がくわわり、わが国の歴史でも未曽有の大災害となっています。私は、あらためて亡くなられた方々への深い哀悼の気持ちとともに、被災された方々への心からのお見舞いを申し上げます。
災害発生から4カ月近くが経過しましたが、多くの被災者が、なお心身ともに苦しみのふちにあり、依然として先の見えない不安のもとにおかれている。大震災への対応では、当面する被災者への救援の課題にかかわっても難問が山積しており、復旧・復興のためには長い道のりが必要になります。福島原発事故は、チェルノブイリ原発事故と並ぶ世界最悪レベルの過酷事故(炉心溶融にいたる事故)となり、なおその収束の見通しがたたず、被害が拡大する深刻な事態が続いています。
大震災と原発事故は、日本国民が、今後、長期にわたって正面からとりくみ、その力を総結集して打開をはからなければならない、国政の最大の課題となっています。
日本の政治のあり方の根本が問われている
そして、この大震災と原発事故は、これまでの日本の政治のあり方の根本を問うものとなっています。
一人ひとりの被災者の苦しみに心を寄せ、破壊された生活と生業(なりわい)の基盤回復のために国が責任を果たすことを原点にすえた復旧・復興にとりくむのかどうか。原子力災害から国民の命と健康を守る緊急の課題にとりくみながら、原発依存のエネルギー政策を大本から見直すのかどうか。日本の政治のあり方の根本が問われています。
日本共産党はどういう姿勢でとりくんできたか
日本共産党は、この危機にたいして、どういう姿勢でとりくんできたか。
被災者の緊急の願いにこたえて――被災地と全国の党組織の連帯したとりくみ
わが党は、この危機にさいして、(1)被災者救援と原発事故の危機収束などの緊急の課題では政治的立場の違いを超えて力をあわせるとともに、(2)復興のあり方とその財源問題、原発・エネルギー問題をどうするかなどについては、独自の立場からの積極的提言を行うという基本姿勢にたって、奮闘してきました。
党国会議員団は、被災直後から、繰り返し被災地を訪問し、つぶさに実情をつかむとともに、国にたいする要望を聞き取り、3月31日の「第1次提言」、5月17日の「第2次提言」として政府に提起し、その実現のために奮闘してきました。
わが党は、被災者や国民の運動とむすんで、被災者が緊急に求めている課題に全力をあげてとりくんできました。「マイナスではなく、せめてゼロからのスタートを」という痛切な要求の実現に力をつくし、「二重ローン」の解消の問題を国政の重要課題におしあげてきました。被災者生活再建支援法による支援金のすみやかな満額支給、支給額の引き上げや支給対象の拡大を迫ってきました。第三セクター三陸鉄道などの公共交通や、地域医療の再建にむけた公的支援への道を開いてきました。原発被害にたいして、全面賠償を原則とすること、農漁業者・商工業者へのすみやかな仮払いを行うことを強く求めてきました。わが党が率先して提起した問題を、他党もとりあげ、党派を超えた声となっている場合も少なくありません。
被災地の党員と党組織、党地方議員は、震災で家族や同志を失い、事務所を失うなど大きな打撃を被りながら、献身的に救援・復興の先頭に立って奮闘しています。被災地の同志たちが、避難所で、仮設住宅で、破壊された漁港で、地方議会で、被災者救援の先頭に立ち、復興への希望と展望を語り、住民の信頼を高めていることは、「国民の苦難軽減のために献身する」というわが党の立党の精神を体現したものであり、全党の誇りであります。
党がとりくんだ震災募金は6億7千万円をこえ、被災した82の自治体、46の漁協、22の農協に届けられています。党の呼びかけによる救援ボランティアは約7千人にのぼり、とくに若い世代の大奮闘は現地に希望を運んでいます。被災3県にたいして、全国の党組織が分担して支援にとりくんだことは、現地の党組織を励ますとともに、支援にとりくんだ側も自覚と誇りを高め、全党的な連帯の絆を強めています。党機関支援募金には1億3千万円が寄せられています。私は、全党が、引き続き被災地支援のとりくみの発展をはかることを心から呼びかけるものです。
復興をどうすすめるか――「二つの原則」を堅持することの重要性
復興をどうすすめるのか。わが党は、「第2次提言」で、「二つの原則」を堅持することを提起しました。
第一は、一人ひとりの被災者が、破壊された生活の基盤を回復し、自分の力で再出発できるように支援することこそ、復興の最大の目的であり、この目的を達成するための公的支援を行うことは、憲法第13条の幸福追求権、第25条の生存権などにてらして国の責務であるということです。
第二に、復興の進め方については、「計画をつくるのは住民合意で、実施は市町村と県・国が連携して、財政の大半は国の責任で」を原則にすべきであり、被災地の実情を無視した「上からの青写真の押し付け」を許さないことが必要だということです。
この原則は、政治的立場の違いを超えて、誰もが否定することができない当たり前のものであり、多くの被災者の共感を得ています。同時に、財界と政府が主導して、この原則に背くさまざまなゆがみや逆行――大震災に乗じて「構造改革」路線を押し付けようとする動きも起こっています。それだけに、わが党が、災害の当初からこの原則を堅持することの重要性を主張しつづけていることの意義はきわめて大きいものがあります。
原発事故にどう立ち向かうか――「安全神話」をただし、「原発からの撤退」を提起
原発事故にどう立ち向かうか。わが党は、事故の収束のために、日本の研究者・技術者の知恵と力を総結集する体制をつくること、政府として責任をもって危機収束の戦略と展望を示すこと、原発事故に関するあらゆるデータを掌握し国民に公表すること、放射能被害への国民の不安に応える責任ある措置をとることなどを求めてきました。
同時に、この大事故を引き起こした根本に、「安全神話」にどっぷりとつかり、わが党や市民団体の繰り返しの警告を無視して重大事故への備えをとらなかった、歴代政府と東京電力など電力業界、財界の姿勢があることを、きびしく追及してきました。
1979年のスリーマイル島原発事故、1986年のチェルノブイリ原発事故という二つの過酷事故を経て、1988年に国際原子力機関(IAEA)が過酷事故対策をとることを各国に勧告していたにもかかわらず、日本政府は、「日本では過酷事故は起こり得ない」として何の対策もとりませんでした。
さらに、1994年に「原子力の安全に関する条約」が結ばれ、原子力発電の「推進機関」と「規制機関」の分離を義務づけたにもかかわらず、日本では「規制機関」が「推進機関」の下に置かれるという国際条約違反を続けてきました。
これらは、わが国の原子力行政がいかに国際的に無法で異常なものかを示す象徴であります。原発をもつ世界の主要な国のなかで、日本のような「安全神話」にしがみつき続けた国は、他に一つもありません。ここには、「ルールなき資本主義」のいわば“原発版”があることを、きびしく指摘しなければなりません。
さらに、わが党は、5月1日、福島原発事故が突きつけた深刻な現実を踏まえて、従来の原発政策を発展させ、政府に「原発からの撤退」と「期限を決めた原発ゼロへのプログラムの策定」を求めるとともに、6月13日に、党としての「提言」――「原発からのすみやかな撤退、自然エネルギーの本格的導入を――国民的討論と合意をよびかけます」を発表し、対話と共同のとりくみをすすめてきました。
日本共産党への新たな共感の広がり――震災問題でも、原発問題でも
こうした日本共産党の姿勢と活動は、これまで党とは接触のなかった人々も含めて、多くの人々の心に響き、共鳴し、共同のとりくみがひろがっています。
一つは、被災地での響きあいであります。党調査団や党国会議員団が訪問した、自治体、漁協・農協・商工会議所などでは、どこでも復興にむけた方向の一致が得られ、心通う話し合いが行われています。
この間、「しんぶん赤旗」には、岩手、宮城、福島の3県の漁協・農協のトップの方々が登場し、思いの丈を語ってくれました。そこでは、被災地の苦難に真剣に心を寄せるわが党の政治姿勢に対する信頼や共感とともに、漁場を荒らす大企業参入の動きへの怒り、「安全神話」をふりまきながら原発推進をはかってきた国と東京電力への憤り、大震災のさなかにTPP(環太平洋連携協定)参加を持ち出し復興への希望をつぶす政治への批判がのべられ、そうした政治のゆがみをただす日本共産党への期待が語られています。
いま一つは、原発問題での響きあいであります。不破社研所長の「連続教室」での講義『「科学の目」で原発災害を考える』への大きな反響にみられるように、わが党が、先駆的に原発の危険の本質を明らかにし、「安全神話」と「利潤第一主義」にたった歴代政府と電力業界・財界による無謀な原発推進路線にたいして早くから警鐘を鳴らし続けてきたことに、広い社会的注目が寄せられています。
「原発からの撤退」の「提言」にたいして、各層・各分野の広範な人々から歓迎の声が寄せられています。福島県復興ビジョン検討委員会は、「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」などを柱とする復興基本理念をまとめましたが、その座長をつとめる福島大学名誉教授の鈴木浩氏は、「『原発からのすみやかな撤退、自然エネルギーの本格的導入』を求める共産党の提言は、私たちの復興の理念とも相通じるもので注目しています」との感想を寄せています。「計画的避難区域」に指定され、全村避難を余儀なくされた福島県・飯舘村の菅野典雄村長は、「原発からの撤退は全県民の願い」と、わが党の「提言」に大きな共感を寄せてくれました。
危機のもとで、少なくない人々が、日本共産党の主張と姿勢に新たな注目と共感を寄せています。それは、震災問題でも原発問題でも、わが党が、いま問われている問題の根源にある政治のゆがみを大本からただす党であること――党の綱領路線への共感や信頼に発展しうるものです。ここに確信をもって、たたかいを発展させようではありませんか。
「二大政党」はこの危機にどう対応しているのか
それでは「二大政党」は、この未曽有の危機にさいして何をしているのか。
被災者そっちのけの党略的政争に国民の批判と怒りが広がる
民主党政権の大震災・原発への対応は、たいへんだらしがないものです。多くの問題点が噴き出し、国民の信頼をまったく失っています。
震災問題では、どんな政権であっても当然行うべき救援の手だてがあまりに遅く、多くが手つかずで残されています。被災者が一刻も早い復興への光を求めているにもかかわらず、生活と生業の基盤回復に政府が本格的に乗り出す姿がまったく見えません。現地の実情を無視した「上からの押し付け」と、増税論だけが突出しています。
原発問題でも、「安全神話」にとらわれて「過酷事故」への備えを行わなかったという根本問題にくわえて、事故後の対応についても、わが党が再三求めた研究者・技術者の総力を結集した体制をつくるという責任を果たさず、政府が責任をもって危機収束の戦略と展望を示し実行するという責任を果たさず、もっぱら東京電力に対応を「丸投げ」するという姿勢に終始しています。国民への情報公開という点でも、後になって重要な情報を小出しにするという姿勢が、事故収束への内外の英知の結集を妨げ、国民の信頼を大きく損なっています。この政権は、危機に対応する当事者能力を欠いているといわなければなりません。
自民・公明両党は、原発大増設をすすめてきた自らの責任への反省をまったく行わないまま、震災問題と原発問題を、民主党政権を攻撃するために、党略的に利用するという姿勢に終始しています。
未曽有の危機のもとで、被災者そっちのけの党略的政争に明け暮れる民主党、自民・公明両党の双方にたいして、多くの国民が、「この国難のもとで、政治は何をやっているのか」という強い批判と怒りをつのらせているのは当然であります。
悪政を共同で推進――「大連立」につながる危険
民主党と、自公両党は、みにくい「党略的政争」を繰り広げる一方で、国民に苦難を押し付ける政治を共同ですすめています。
民主党と自公両党などが強行した「復興基本法」は、「住民合意を尊重し、上からの押し付けはあってはならない」という復興の原則に真っ向から反し、財界の号令にしたがって農林水産業切り捨てをすすめる「新成長戦略」を押し付けるものであり、庶民増税などを打ち出す「復興構想会議」にお墨付きを与えるものとなりました。
原発問題でも、首相は、福島原発事故を契機とした、原発縮小・撤退を求める国民世論の高まり、ドイツやイタリアでの原発撤退の流れに背を向け、ここでも財界の号令にしたがって、サミットで「最高水準の原子力安全を目指して取り組む」とのべ、定期検査中の原発の再稼働についても「安全宣言」を出すなど、新しい「安全神話」をふりまきながら、原発推進に固執しています。一方で、自民党は、事故後の政府の対応のあれこれを「追及」するだけで、原発からの撤退を求める動きを「集団ヒステリー状態」(自民幹事長)と攻撃した姿勢に象徴されるように、これまでと変わらない原発推進の姿勢をあらわにしています。
消費税増税問題では、党首討論で、首相が、「税と社会保障の一体改革について政府案を出せば協議に乗っていただけるか」とのべると、自民党総裁は、「私どもはすでに(消費税増税の)ルビコンを渡っている。どうぞあなた方も渡っておいでになって一緒に議論しよう」と答え、実質的に消費税増税の大連合がつくられていることが示されました。
沖縄の米軍普天間基地問題でも、民主党政権は、名護市辺野古に「V字形基地」を建設するという、自民・公明政権が米国政府と交わしたものとまったく同じ計画を、米国との間で合意しました。ここでも民主・自民・公明の「日米安保絶対、米軍基地押し付け」の大連合が形成されています。
こうした動きのなかから、民主、自民の双方に「大連立しかない」という動きが見え隠れしています。「大連立」によって選挙制度改悪、憲法改定など、かねてからの反動的野望を一気にすすめようという動きに、強い警戒が必要であります。
根本には「二大政党」が共有する古い政治の行き詰まりと破たんがある
一方でみにくい「党略的政争」、他方で悪政の共同推進――これが戦後未曽有の危機のもとで「二大政党」がとっている態度であります。
戦後未曽有の災害は、民主党政権だけでなく、「二大政党」といわれる勢力の全体が、危機への対応能力をもたず、日本の政治のかじ取りを行う力を失ってしまっていること、その政治的劣化ぶりを、くっきりと浮き彫りにしました。
その根本には、「二大政党」が共有している日本の政治の「二つの異常」――「異常な対米従属」「大企業・財界の横暴な支配」という古い政治の枠組みそのものが、行き詰まりと破たんに突き当たっているという事実があります。それがいま、大震災と原発事故という危機のもとで、抑えようもなく噴き出しているのであります。
大災害の克服をつうじて新しい日本への前進を
いまの日本にとって最大の課題は、日本国民の総力をあげて、未曽有の大災害によって生じた危機を乗り越えるとともに、それを通じて、国民だれもが安心して暮らせる新しい日本への前進を実現することであります。この国民的課題をすすめるために、日本共産党が先駆的役割を果たすことが、強く求められています。
危機のもとで、多くの国民がこれまでの政治への見方を大きく変え、政治の真実とは何かについて、新たな探求と行動をはじめています。被災地では、これまで保守の立場だった人々もふくめ、日本共産党のなかに復興への希望を見いだし、共同の輪が広がっています。これまで「安全神話」のウソに包まれ、その正体が見えなかった原発という存在、原発依存のエネルギー政策について、多くの人々が根本からその是非を考え始めています。
わが党が、いま国民のなかに広く打って出て、対話とたたかいをすすめ、「国民が主人公」の新しい日本への綱領的展望を語るならば、多くの国民の探求と日本共産党の主張が合流する条件は大いにある。そこに確信をもって意気高く奮闘しようではありませんか。
2、各分野で日本の前途を開く国民的闘争を
報告の第二の主題として、各分野での日本の前途を開く国民的闘争についてのべます。
被災者支援と復興のたたかい
震災4カ月――復興をめぐる政治的対決点が浮き彫りに
まず被災者支援と復興のたたかいです。
わが党は、大震災発生の当初、被災者の救援と復興のために、政治的立場の違いをこえて全力をあげることを提起してきました。同時にここにきて、復興をめぐる政治的対決点も浮き彫りになってきています。
一つは、大震災から4カ月近くたちましたが、政府の復旧・復興に向けた対策、とりわけ生活と生業の再建にむけ国が本腰を入れて乗り出すという、待ち望まれている施策が遅々としてすすんでいないことです。このもとで、被災者の生活と仕事の困窮がすすみ、「この地域から人がいなくなってしまう」という危惧が現実のものとなりつつあります。被災者と被災地の窮状に向き合い、困難を打開し希望を示す血の通った施策をすすめるのか、被災地の生活基盤の回復という災害対策の根本を忘れた冷たい政治に終始するのか。これは日本の政治のあり方の根本が問われる対決点であります。
いま一つ、住民の合意を尊重した復興か、震災に乗じて「構造改革」を推し進めようとする財界の描いた青写真を上から押し付けるのかが、重大な対決点となっています。
政府の「復興構想会議」の発表した「提言」は、財界が求める農林水産業への「民間企業の参入」「大規模化」「集約化」を、上から押し付けようというものになっています。また、復興財源として、「震災復興税」の創設を提唱しましたが、これも「国民に広く負担を求める復興税の導入」(経済同友会)という財界の意向に沿ったものであり、消費税増税に道を開くものにほかなりません。
しかし、こうした動きは、被災地の実情を無視した暴論として、大きな矛盾と反対にぶつかっています。水産業をめぐっては、財界の青写真にそった、漁港の「集約化」と大企業を沿岸漁業に参入させようとする「水産特区構想」の動きに対して、長年、沿岸漁業を守り育ててきた漁業協同組合は激しく反対しています。船を失い、漁港も、加工業、流通業も破壊されるもとで、漁業者が一体となって必死に再建しようとしているとき、復興にむけたまともな施策をとらず、漁業者を追い詰めたあげく、その絆を分断して、「構造改革」路線を押し付ける。こんなひどい政治を許すわけにはいきません。世界有数の豊かな漁場と東北の水産業を守り、真の復興をかちとるたたかいに、わが党は、固く連帯してたたかいぬく決意を表明するものであります。
被災地の復興運動への全国的支援を――「ルールある経済社会」めざすたたかい
復興のたたかいでは、被災3県に、「救援・復興をめざす県民センター」(共同センター、県民会議)が設立され(岩手は9日に設立予定)、わが党も一員として参加しています。「県民センター」が「被災者が主人公の復興」をすすめる共同のセンターとして、これまでの政治的立場の違いをこえ、大きく発展することが期待されます。
同時に、被災地の復興運動への全国的連帯と支援を、引き続き発展させることを訴えるものです。
阪神・淡路大震災のさいに、全国的に広がった住宅再建の個人補償を求める運動は、まだ不十分ながら被災者生活再建支援法へと実を結び、今回の大災害でも被災者の暮らしを守るうえで重要な足がかりとなっています。阪神のたたかいが、いま東北のたたかいに生きているわけです。
今回の大震災からの復興のたたかいのなかで、この制度をさらに拡充するとともに、「二重ローン」の問題の解決や、水産業、農業、商工業などの各分野での災害対策の新しい制度・ルールをつくらせることは、いま苦しんでいる被災者の生活の支えになるとともに、今後、この日本ではどこでも起こりうる自然災害のさいに、被災者を救う制度となって働くことになるでしょう。
それぞれの地域で「福祉・防災の街づくり」にとりくむとともに、被災地復興への全国的支援を強めることは、党綱領が示す「ルールある経済社会」を築く重要な内容の一つであることを強調したいと思います。
「原発からのすみやかな撤退」を国民的世論にする一大闘争をよびかける
つぎに、「原発からの撤退」を求める「提言」(以下「原発撤退提言」)の意義と、この問題での国民的討論と合意をどうやってつくりだすかについて報告します。
わが党の先駆的な活動の蓄積のうえに、さらにそれを発展させたもの
今回の「原発撤退提言」は、原発問題にたいする日本共産党の半世紀にわたる先駆的な活動の蓄積のうえに、それをさらに発展させたものであります。
日本で原子力発電が問題になったのは、1950年代中ごろからですが、日本共産党は、いまの原発技術は未完成で危険なものだとして、その建設には当初からきっぱり反対をしてきました。その後も、大事な局面ごとに、政府や電力会社のふりまく「安全神話」のウソを追及し、原発のもつ重大な危険性と、それを管理・監督する政府の無責任さを具体的にただしてきました。
形だけの審査体制、使用済み核燃料の危険性、住民の避難体制の欠如、東海大地震の予想震源地での原発増設の危険、「規制機関」が「推進機関」から分離されていない問題、福島原発を明示しての地震・津波対策の欠如など、今回の福島原発の事故で明らかになった多くの問題点は、わが党が30年来の国会質問でただしてきた問題でありました。
さらに、わが党は、2000年の第22回党大会で、当時、ドイツなどが原発から撤退する動きを示していることに注目しつつ、「低エネルギー社会の実現、再生可能エネルギーの開発をすすめながら、原発からの段階的撤退をめざす」という方針を明確にしました。
「原発撤退提言」で発展させた認識と方針の中心点について
こうした蓄積のうえに、今回の「原発撤退提言」では、福島原発事故の経験を踏まえ、いくつかの認識と方針の発展を行っています。その中心点について、3点ほど報告しておきたいと思います。
第一は、原発という技術のもつ本質的な危険性とは何か、他の通常の技術にはない「異質な危険」とは何かを突き詰めて解明したことであります。
「原発撤退提言」では、「原発がそのなかに巨大な『死の灰』をかかえ、それを閉じ込める保証がない――ここにこそ原発のもつ重大な危険性の本質があります」とのべ、原発が巨大な「死の灰」を生みだし、人類がそれをコントロールする手段をもちあわせていないことにこそ、原発の危険性の本質があることをズバリ明らかにしています。
そして、原発事故には、他の事故には見られない「異質の危険」があること、すなわち、ひとたび重大事故が発生した場合に、放射性物質が外部に放出されたならば、それを完全に抑える手段は存在せず、被害を、空間的、時間的、社会的に限定することは不可能となることを明らかにしています。このことは、福島原発の事故を通して、多くの日本国民が実感していることだと思います。
ひとたび重大事故を起こしたら、人間社会に、このように他に類のない「異質の危険」をもたらす現在の原発という技術は、いったい社会的に許容できる技術なのか。このことが、正面から問われなければなりません。
第二は、第一の問題とも密接にかかわって、現在の原発は本質的に未完成で危険なものであり、世界有数の地震・津波国日本ではその危険がとりわけ深刻なものになることを考えるならば、「安全な原発などありえない」ということを、明確にしたことです。
首相は、「世界最高水準の安全性をもった原子力開発を進める」、「しっかりとした安全基準をつくる」などといい、「安全基準」を高めれば「安全な原発」となりうるかのようにのべて、原発推進に固執しています。こうした議論を根底から打ち破るうえでも、原発という技術において、いったい客観的な「安全基準」が設定できるのかを、突き詰めて明らかにする必要があります。
どんな技術でも、「安全基準」とは、「事故のもたらす被害の大きさ」に「事故の起こる確率」を掛け合わせたものを、「事故のリスク(危険)」と考え、それが社会的に許容できるかどうかによって決まってきます。ところが、原発においては、通常の技術と違って、最大・最悪の事故がもたらす被害はあらかじめ想定することができないほど巨大なものです。福島原発事故で大気中に放出された「死の灰」は、原子炉のなかの「死の灰」の1〜2%といわれていますが、この事故の被害がどこまで拡大するかさえ、いまだに予断をもっていうことはできません。さらに、原子炉のなかの「死の灰」の50%、80%、100%が放出される事故も起こりえますが、その場合にどれだけの恐るべき被害が出るかをあらかじめ想定することはできません。それは原発のもつ「事故のリスク(危険)」は想定できないほど大きいことを意味します。
さらに、どんな技術でも、「安全基準」が客観性をもっているかどうかは、実証――実験、実践をつうじてためされます。飛行機にしても、自動車にしても、「安全基準」は実験や実際に使ってみることによってためされます。ところが、原発においては、ある「安全基準」を決めたとしても、大量の放射性物質の放出の危険を伴うような実験を行うことは原理的に不可能であり、それを実証することはできません。たとえば原発と地震との関係である「安全基準」を決めたとしても、それが成り立つかどうかは、実際に、稼働中の原発プラントを振動させてみなければわかりません。ところが、そんな実験は原理的に不可能であることは、誰が考えても明りょうです。実証不可能な「安全基準」とは、結局は机の上の計算だけのものとなり、客観性をもたず、主観的なものとならざるをえません。
こうして原発においては、ある「安全基準」を決めて、それをクリアすれば「安全な原発だ」とする考え方は成り立たないのです。これは、原発という技術のもつ、通常の技術にはない「異質な危険」に起因するものであります。
もとより、「原発撤退提言」でものべているように、わが党は、原発事故の危険を最大限回避し、危険を可能なかぎり小さくするために、考えうるかぎり、可能なかぎりのあらゆる措置をすみやかにとることを強く求めていきます。
しかし、同時に、そうした措置をとったからといって、「原発の安全性は大丈夫になった」などとはいえないことを強調しなければなりません。現在の科学と技術の発展段階では、「安全な原発などありえない」。このことをはっきりと言わなければなりません。
第三に、これらをふまえて、「原発撤退提言」では、「原発からの段階的撤退」という方針を一歩すすめて、「原発からのすみやかな撤退」という方針に踏み込みました。
日本で原子力発電を続けることのあまりに巨大な危険を考えるならば、できるだけすみやかに原発から撤退することが強く求められます。まず原発からの撤退の政治的決断を行い、期限を決めた撤退のプログラムを策定する。できるだけすみやかな撤退の措置をとりながら、それと同時並行で、再生可能エネルギー・自然エネルギーを最大のスピードで開発・普及するという方針へと一歩すすめることが必要だと考えました。
自然エネルギーの本格的導入は、新たな仕事と雇用を創出し、地域経済の振興と内需主導の日本経済の発展にとっても、大きな力となるものです。
わが党の「原発撤退提言」でのべた、こうした「撤退の論理」は、ドイツなどで国民的議論を経て到達した「撤退の論理」とも共通する内容となっています。それは、わが党の半世紀におよぶ原発問題へのとりくみの蓄積のうえに可能となったものであることを、重ねて強調しておきたいと思います。
どうやって国民的合意をつくりあげていくか――二つの点に留意して
それでは、どうやって国民的合意をつくりあげていくか。昨日、東京・明治公園で行われた「原発ゼロ」をめざす「7・2緊急行動」には、被災地から全国から2万人もの人々がつめかけ、熱気にあふれました。この運動には大きな発展の可能性があることを、肌身で感じる、大きな確信をあたえる集会となりました。
いま多くの国民が真剣に考え、行動を始めているもとで、方向を示しながら、大いに討論をおこし、合意をつくりあげていく国民的プロセスが重要になっています。それをすすめるうえで、二つの点に留意してとりくみたいと思います。
一つは、「原発からの撤退」の一点での広い共同をつくりあげていくことです。わが党は、「原発撤退提言」でも明記しているように、「人類の未来を長い視野で展望し、原子力の平和的利用にむけた基礎的な研究は、継続、発展させるべき」であるという立場にたっています。当面の「原発からの撤退」でも「基礎的な研究」は不可欠です。ただ、この点で立場を異にする方々もいると思います。しかし、そういう方々とも、「原発からの撤退」で一致すれば大いに共同は可能だと考えます。
また、わが党は、「5年から10年以内」の撤退を提案していますが、撤退の期限の問題や、代替エネルギーについての考え方は、さまざまな意見がありうるでしょう。それを最終的に決めるのは国民の合意であります。これらの問題での、意見の違いがあっても、「原発からの撤退」という方向性が一致できれば大いに共同していきたいと考えます。
いま一つは、「原発からの撤退」までは一致できなくても、原発の危険から命と健康を守るうえでの緊急の要求を重視し、広い連帯をつくっていくということです。たとえば、それぞれの地元に立地している原発に反対する運動、原発事故の危険を回避するための具体的な安全対策を求める運動、放射能の危険から住民の命と健康を守る運動など、原発の危険に反対するさまざまな運動が広がっています。それらの一つひとつを重視し、連帯を強めることは、「原発からの撤退」の大きな国民的流れをつくることにつながるでしょう。
この間、わが党は、政府が、定期検査中の原発の再稼働の「要請」を行ったことについて、「要請」の撤回を求める緊急の申し入れを行いましたが、これも緊急の要求にもとづく行動であります。
今年6月、ドイツ政府と連邦議会は、「2022年までに原発から撤退する」という方針を決めましたが、その背景には、チェルノブイリ事故いらいの大規模な国民的討論がありました。壮大な規模で、文字通りの国民的討論をおこし、それを通じて「原発からの撤退」の国民的合意をつくるために奮闘しようではありませんか。
「原発からの撤退」をめざすたたかいの綱領的な位置づけについて
「原発からの撤退」をめざすたたかいは、日本の政治のゆがみを大本からただすたたかいでもあります。
歴代政府と二人三脚で原発推進をすすめてきた日本経団連の米倉会長は、「(原発が)千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と言い放ちました。この発言にみられるように、財界は、原発事故をおこした当事者であるにもかかわらず、まったく無反省のまま、新たな「安全神話」を製造し、原発推進政策に固執しています。その根底には、電力会社、原発メーカー、大手ゼネコン、鉄鋼・セメントメーカー、大銀行など、原発によって利益を得る一部大企業が、原発推進の政治家・特権官僚、一部メディアや「専門家」などと癒着してつくりあげている「原発利益共同体」ともよばれている利権集団があります。「原発からの撤退」をめざすたたかいは、こうした「政・官・財」の腐敗した癒着構造を打破し、「ルールある経済社会」をつくるたたかいの重要な一部であります。
また、日本が、なぜ原発列島になったのかの歴史的根源をたどると、1950年代以降、アメリカから濃縮ウランと原子炉の提供を受け、アメリカのエネルギー政策に従属する形で、原発増設路線を突き進んできたという問題があります。それは今日もなお続き、いまでも日本の原発で使われている濃縮ウランの73%は、アメリカからの輸入に依存しています。「原発からの撤退」をめざすたたかいは、エネルギーの対米従属を打破していくたたかいでもあります。
このたたかいを、「異常な対米従属」「大企業・財界の横暴な支配」という日本の政治の「二つの異常」をただす綱領的課題の一つとして位置づけ、全力をあげようではありませんか。
国民生活を守る各分野のたたかいについて
つぎに国民生活を守る各分野のたたかいについて報告します。
大震災と原発問題という危機が続く中でも、民主党と自民・公明両党が、財界と一体ですすめようとしている一連の国民生活破壊の計画があります。これを許さないことは、被災地の復興にとっても、日本経済と国民生活を考えても、きわめて重要であります。
社会保障切り捨てと一体の消費税増税に反対する国民的たたかいを
まず、消費税増税と社会保障切り捨てに反対するたたかいについてのべます。
6月30日、政府・与党の「社会保障改革検討本部」が決定した「社会保障と税の一体改革案」では、「社会保障財源に充てる」ことを口実に、「2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げ」ることを明記しました。
しかし、この「社会保障改革案」なるものは、医療費のさらなる負担増、年金の支給開始年齢の引き上げ、生活保護制度の支給額の「見直し」などの大改悪がその内容となっています。これでは、「社会保障の拡充」どころか、終わってみれば社会保障の大改悪と消費税増税だけが残ることになりかねません。しかも、「2010年代半ばまでに増税を」などと主張する勢力は、いったい被災地の苦しみをどう考えているのか。
いま、国民の暮らしに深刻な打撃を与え、救援と復興の事業を根本から破壊する消費税増税に手をつけるなど論外であり、これに反対する国民的たたかいを起こすことを、呼びかけるものです。
税金の浪費に徹底して切り込み、応能負担にもとづく税制の再構築をはかり、復興財源は大企業の内部留保を活用する「復興債」で賄うなど、政治の姿勢の転換によって社会保障財源、復興財源を賄うべきであります。
人間らしい雇用を求めるたたかいについて
つぎに、人間らしい雇用を求めるたたかいについて報告します。
震災を「口実」にした大企業による新たな「派遣切り」「非正規切り」、賃下げが、被災地のみならず全国各地で広がっており、こうした横暴を許さないたたかいが急務となっています。ソニーは、仙台工場の縮小計画を発表し、280人の正社員を広域配転するとともに、150人の期間工の「雇い止め」を実施するとしています。しかし、ソニーの工場は被災をしましたが、保険金で補てんされる見込みとなっています。危機のもとで雇用への社会的責任を果たすべき大企業が、首切りの先頭に立つなど許すわけにはいきません。
「派遣切り」、「非正規切り」とのたたかいでは、2008年秋以降のリーマン・ショック後に、解雇・雇い止めの被害にあった労働者の裁判闘争も、重要な局面を迎えています。「こんな無法を次の世代に残したくない」との思いで、勇気をもって裁判闘争に立ち上がった労働者を支える運動への支援を強く訴えるものです。日本航空、社会保険庁の不当解雇をめぐっても、この間のたたかいで、解雇の不当性がつぎつぎと明らかにされてきました。必ず勝利をかちとるための支援を心から訴えたいと思います。
復興財源を名目に、国家公務員の給与を10%削減するという無法な攻撃は、現行法も、人事院も無視した、まったく道理のないものであります。同時に、公務員攻撃が国民全体に対する攻撃であることが、目に見える形で明らかになりつつあります。大震災の被災地では、公務員を削減してきたことが被災者の救援・復興の大きな障害となっています。その中でも、多くの公務員労働者が、被災者救援・復興のために献身的に大奮闘しています。公務員攻撃を社会的連帯ではねかえす新たな条件が広がっていることに確信を持ち、力をあわせて奮闘しようではありませんか。
TPP(環太平洋連携協定)――反対のたたかいをさらに
つぎにTPP参加反対のたたかいについてのべます。
2中総後に浮上した重要な政治課題として、TPPの問題があります。民主党政権は、6月に予定していた参加の判断を先送りすることを決定したものの、5月下旬のG8サミットで行われた日米首脳会談で、オバマ大統領に「早期に判断する」と約束しています。
JA全中が中心になってとりくんだTPP交渉への参加阻止を訴える1000万人署名運動は、すでに農業者、漁業者、消費者団体など全国から1121万人の署名が集まり、目標を突破しています。TPP参加は、日本の農林水産業を破壊し、東日本大震災からの復興に深刻な打撃となるものであり、絶対に許すわけにはいきません。政府に参加断念を表明させるまで、たたかいをさらに発展させようではありませんか。
沖縄普天間基地問題、「核兵器のない世界」――平和のたたかいの二つの焦点
沖縄普天間基地問題、「核兵器のない世界」という、平和のたたかいの二つの焦点について報告します。
辺野古移設の押し付け――居直りと悪あがきを許さない全国的連帯を
沖縄では、新たな米軍基地を押し付けようとする日米両政府にたいする県民的怒りの新たな大きな波がおこっています。日米両政府は、6月21日、民主党政権になってから初めての日米安保協議委員会(2プラス2)を開き、名護市辺野古への新基地建設を確認し、「V字形滑走路」にすることを決定しました。しかし、この間の名護市長選、沖縄県民大会、沖縄県知事選挙などをつうじて、「県内移設反対」は党派を超えた揺るがぬ島ぐるみの声となっています。米議会でもレビン上院軍事委員長などの有力議員が、辺野古移設は「非現実的」「実行不可能」とのべています。県民誰もが実行不可能と考えている破たんした計画を、あえて米国に誓約した日本政府の卑屈な姿勢は、絶対に許せないものです。
くわえて米国は、普天間基地に、きわめて危険で大騒音をまき散らす垂直離着陸輸送機・MV22オスプレイを、来年からの2年間で合計24機も大量配備する計画を伝達しました。「世界一危険」と自ら認める基地にさらに深刻な危険を押し付け、辺野古移設を認めなければ普天間基地への居座りを続けるかのごとき、日米両政府の恫喝(どうかつ)的な姿勢は、県民の怒りの火に油を注いでいます。
大局的に見れば、日米両政府の動きは、沖縄県民のたたかいに追い詰められた、居直りと悪あがきであります。それは県民との矛盾をいよいよ深め、いっそう大きな破たんに直面せざるをえないでしょう。県内移設反対、普天間基地の即時閉鎖、無条件撤去を求める沖縄県民のたたかいに、全国が連帯し、「基地のない沖縄」「基地のない日本」をめざして、たたかいを発展させることを、強く呼びかけるものであります。
原水爆禁止世界大会の成功に力をつくそう
わが党は、「核兵器のない世界」の実現には、核兵器廃絶を正面からの主題とした国際交渉――核兵器禁止条約の国際交渉が必要だと訴えてきました。これが今、国際政治の現実の課題となりつつあります。
昨年の12月の国連総会では、核兵器禁止条約の早期締結にむけた交渉開始を呼びかける決議が圧倒的多数で採択されました。今年5月の非同盟諸国外相会議は、「核兵器廃絶の方法」を議論する国際会議の開催を呼びかけました。「核兵器禁止条約に向けた実質的交渉の即時開始」を求める平和市長会議は、151カ国・地域4800をこえる自治体に広がっています。日本原水協が提起した「核兵器禁止条約の交渉開始」を求める国際署名は、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長も支持を表明するなど、内外の幅広い賛同を得て広がりつつあります。目前に迫った原水爆禁止世界大会を、こうした各国政府と各国の運動の努力を、合流・発展させる場として大きく成功させるために力をつくそうではありませんか。
日本の反核平和運動は、核兵器廃絶・被爆者援護を中心的課題としてすえながら、米ソの核実験による被曝(ひばく)者、チェルノブイリ原発事故の被害者、そして福島原発事故の被害者など、放射能被害に苦しむあらゆる人々との連帯をすすめ、「原発依存から自然エネルギーへの転換」を訴えてきました。日本の反核平和運動が、「核兵器のない世界」にむけて先駆的役割を果たしながら、どんな形であれ放射能被害者をつくらないという立場での連帯を広げていることは、今日の情勢のもとできわめて重要であります。
3、いっせい地方選挙の教訓と、中間地方選挙、総選挙のとりくみ
報告の第三の主題として、いっせい地方選挙の教訓と、中間地方選挙、総選挙のとりくみについてのべます。
いっせい地方選挙の教訓について
まず、いっせい地方選挙の教訓についてです。
全国の党組織の総括と教訓に学び、とくに重要だと考える二つの点
いっせい地方選挙での、日本共産党の結果は、一部に貴重な勝利や前進もあるものの、全体では議席、議席占有率、得票ともに後退するという結果となりました。
4月25日の常任幹部会声明では、いっせい地方選挙からの「総括と教訓をひきだす角度」として三つの点――(1)もてる力をだしきるために手だてをつくしたか、(2)党と地方議員(団)の日常活動のあり方、(3)「党の自力の不足」の問題――を提起しました。
全国の都道府県、地区委員会では、この提起が全体として積極的に受け止められ、総括と教訓が深められています。幹部会報告では、党中央として、全国の党組織が引き出した総括と教訓から学び、その内容の中心点を全国に返すという姿勢で、とくに重要だと考える二つの教訓についてのべておきたいと思います。
総括を掘り下げるなかで、党員拡大の遅れがさまざまな角度から深められた
第一は、総括を掘り下げるなかで、「自力の不足が骨身にしみた」という思いが共通して語られ、なかでも党建設の根幹である党員拡大の遅れが、選挙活動のあらゆる面で障害になっていることが、さまざまな角度から深められていることであります。
たとえばある県からは、こういう報告がよせられています。
「選挙直後は、僅差で競り負けた要因として、機関の情勢判断と対策の甘さ、その不徹底だけに目が行き、『また中央は自力の問題を言うのか』などの声も出ていた。しかし、総括を掘り下げるなかで、それらの個々の問題も重要だが、その根底には党の自力の問題があること、党を大きくしなければ選挙の勝利も、県民の願いにもこたえられないことは、選挙をたたかった一番の実感であることが議論され、『自力の不足』の打開こそ今回の選挙結果からくみとるべき中心問題であることがつかまれた」
各都道府県、地区委員会の総括の過程で、対話と支持拡大の総量の低下、最終盤での瞬発力の弱まり、政治論戦の基本を全党に徹底する力の弱まり、各分野の後援会活動の後退、候補者決定の遅れ、「情勢判断」と対応の甘さ、選挙をたたかう財政の問題など、個々の問題が深められ、それぞれについての打開の決意がのべられ、そのための方策が真剣に探求されていることは大切であります。
同時に、そうした議論を掘り下げるなかで、これらの個々の問題の根本には、党員拡大の遅れによって党の根幹が細くなっており、とくに党の世代的継承の点で問題があること、選挙に勝つためにはそこをどうしても打開しなければならないとの結論が、共通の認識となり、強く大きな党づくりへの決意が語られていることは、きわめて重要であります。
2中総の選挙方針の先駆的な実践が勝利の力になった
第二に、全国的には後退したなかでも、それぞれの都道府県や地区委員会に、得票を大きく伸ばし、激戦を制して議席を獲得した経験が生まれています。そこからくみだされている共通の教訓は、2中総決定で提起した「結びつきを生かし、広げることを軸とした選挙活動」に早い段階からとりくんでいること、「党の自力をつける」活動にうまずたゆまずとりくんでいることにあります。
和歌山県・西牟婁郡区(定数2)では、激戦を制して8年ぶりに県議議席を奪還しました。ここでは、候補者を先頭に生活相談にとりくみ、PTA、地元町内会、各種サークルなどの役員をつとめるなど日常的につながりを広げています。この4年間で「集い」を130回以上開催し、1300人以上が参加、後援会ニュースを読んでくれる人も4千人をこえています。党員拡大は4年間で110人を新たに党に迎え、「しんぶん赤旗」の日曜版読者数は前回時を回復して選挙戦をたたかっています。
千葉県・柏市(定数5)でも、激戦を制して8年ぶりに県議議席を奪還しました。ここでも、候補者が5人の市議・候補者と一体になって生活相談や地域懇談会にとりくみ、市と交渉し、要求実現のとりくみをすすめています。同時に、この4年間に215人の新入党員を迎え、19の地域支部すべてが党員を増やし、党費納入党員数は前回比137・5%、「しんぶん赤旗」読者では、日刊紙は前回時をこえ日曜版は110%で選挙戦をたたかっています。前回比で全戸配布は1・5倍、対話と支持拡大も1・3倍になるなど、選挙活動の運動量も大きく飛躍しています。
2中総決定が明らかにした「結びつきを生かし、広げることを軸とした選挙活動」、「党の自力をつける」という一番の要の部分を、先駆的に実践していたことが、勝利につながった。ここには、私たちが学ぶべき豊かな教訓がふくまれています。
いっせい地方選挙のたたかいから、この二つの教訓を、今後のたたかいに生かすことが大切だと考えるものです。
中間地方選挙、東北3県の震災延期選挙について
つぎに中間地方選挙、東北3県の震災延期選挙について報告します。
年内の中間地方議員選挙は、3県、1政令市、66一般市、111町村、合計181自治体で行われると考えられます。そのうち、震災で延期されていた選挙を含め、岩手、宮城、福島の東北3県で予想される地方議員選挙は55自治体にのぼり、3県とも自治体総数の4割を超える規模となります。この中間地方選挙で、一つひとつの選挙戦を確実に勝利し、地方選挙での新しい上げ潮の流れをつくるために力をつくします。
とくに東北3県の震災延期選挙で、わが党が議席を守り前進させることは、真の復興を前進させ、被災地から新しい政治をおこす大きな力になります。被災地の救援・復興への全国的支援を引き続き行うとともに、選挙戦においても全国的支援をつよめ、全国の連帯した力で必ず勝利をかちとるために全力をつくそうではありませんか。
総選挙勝利めざすとりくみについて
ここで総選挙勝利をめざすとりくみについてのべます。
次の総選挙の時期は、民主党政権の行き詰まり、「二大政党」全体の行き詰まりの深さからみて、予断をもって言うことはできない状況です。ですから、いつ総選挙となっても対応できる準備が必要です。すべての党組織が、総選挙で本格的な前進をつくりだすことを正面にすえて、総選挙勝利に必要な諸課題の前進にただちにとりかかるようにします。
「650万以上」の得票目標をめざし攻勢的活動をただちに
国政選挙での「650万以上」という得票目標は、それを実現するまでくりかえし挑戦するという目標であります。すべての党組織が、「成長・発展目標」の実現を展望し、650万に見合う得票目標を明確にして攻勢的な活動をただちに開始します。
すべての比例ブロックで議席獲得・議席増をめざし、比例代表予定候補者をすみやかに順次発表するようにします。
予定候補者を先頭に広く国民のなかにうってでる
また、都道府県を単位に日常的に活動できる比例候補、小選挙区候補を、可能なところから順次決定し発表するようにします。予定候補者が先頭にたって、「第2次提言」や「原発提言」なども活用し、各種団体との懇談、「集い」、シンポジウムなど、広く国民の中にうってでる活動を展開するようにしたいと思います。
4、「党創立90周年をめざす党員拡大を中心とした党勢拡大大運動」を提案する
報告の第四の主題は、「党創立90周年をめざす党員拡大を中心とした党勢拡大大運動」の提案についてであります。
2中総決定にもとづくとりくみと「党勢拡大大運動」の提案
「五つの挑戦」のとりくみと、党勢拡大運動について
参議院選挙から総括と教訓を引き出した第2回中央委員会総会決定は、「党の自力の問題にこそ参議院選挙の結果からくみ出すべき最大の教訓がある」ことを明らかにし、党勢の新たな上げ潮をつくるための「五つの挑戦」を呼びかけました。
全党の努力によって、各分野で初歩的ですが前進の一歩が始まっています。「結びつきを基礎にした『支部が主役』の党活動」については、「結びつき・要求アンケート」などにとりくんだところで、支部と党員の多彩な結びつきに新鮮な光があてられ、支部活性化の契機がつくりだされています。「綱領的・世界観的確信を全党のものにする活動」については、「綱領・古典の連続教室」の受講者が2万7千人となり、党の歴史のうえでも初めての画期的なとりくみがすすめられています。「職場支部の活動の強化」については、第3回「職場講座」の「自治体分野」の会議が開かれ、新たな系統的なとりくみが開始されました。「青年・学生分野での活動」については、この間、一連の大学で、党機関と民主的教員との協力・連携が強まり、学生の関心・要求にこたえた活動を協力してすすめるなかで、党組織が空白だった大学で支部を再建するなどの変化がつくり出されています。
2中総決定が提起した「党機関の指導と活動のあり方の抜本的な改革」についても、この提起を受けて、「機関は支部に、支部は国民の中に」、政治指導と学習の重視という、指導の改善と刷新の機運が強まりつつあります。
もちろん、どの分野でも、前進は端緒的・部分的であり、開始されたばかりです。「五つの挑戦」と党機関の指導改革は、長期的に党の未来を展望した党建設の大方針であり、この方針を中断することなく、一貫して堅持し、生まれつつある前進の芽を大切に育て、大きな党建設の前進の流れをつくりださなければなりません。
そのうえで、全党が直視しなければならないのは、「五つの挑戦」のなかでも、「党員拡大と『しんぶん赤旗』読者の拡大」は、遅れた分野になっているということです。全党の大きな努力によって、5月、6月と、全国すべての地区委員会で新たな党員を迎えたことは、2中総決定の実践としてきわめて重要な前進の一歩です。しかし、全体としてみるならば、依然として党勢拡大は、党活動・党建設の最も遅れた分野になっています。そのことは、私たちが、いっせい地方選挙のたたかいでも、痛感させられた最大の問題でした。一方で、激動する情勢は、わが党が強大な政治的・組織的力量を持った党へと成長することを、強く求めています。
「党勢拡大大運動」の期間と目標について
以上を踏まえ、第3回中央委員会総会として、来年の党創立90周年記念日の7月15日にむけて、全党が、「党創立90周年をめざす党員拡大を中心とした党勢拡大大運動」にとりくむことを提案するものです。
この「党勢拡大大運動」の目標は、つぎの2点とします。
第一に、党建設の根幹である党員拡大を、「党勢拡大大運動」の中心にすえ、必ず大きな前進を築きます。すべての地区委員会が、毎月、新しい党員を迎え、全国すべての支部が「大運動」の期間中に新しい党員を必ず迎えることを目標とします。そのさい、党の世代的継承のためにも、職場と青年・学生の中での党員拡大を戦略的に位置づけ、特別の手だてをとるようにします。また、党員拡大運動と一体に「しんぶん赤旗」日刊紙の購読を訴えることを、特別の意識性をもってとりくみます。
第二に、「しんぶん赤旗」読者の拡大をあわせて追求します。全都道府県、全地区が、毎月、日刊紙読者でも、日曜版読者でも、着実に前進することを目標とします。
各都道府県、各地区、各支部、グループ、党地方議員団は、「成長・発展目標」にもとづく「総合計画」、「政策と計画」にふさわしく「党勢拡大大運動」の積極的な目標をもつようにします。
なぜ「党勢拡大大運動」か――四つの角度からその意義を訴える
なぜ「党勢拡大大運動」にとりくむのか。つぎの四つの角度からその重大な意義を訴えたいと思います。
新しい政治への国民的探求を促進する力量ある党を、日本の情勢は求めている
第一は、新しい政治への国民的探求を促進する力量ある党をつくることを、日本の情勢が強く求めているということであります。
「二大政党」づくりの動きは、2009年の総選挙で、他でもない念願の「政権交代」が実現したことを大きな転機として、深刻な行き詰まりにつきあたっています。国民が「政権交代」に託したのは、自民党政治からの変化でしたが、実際に起こったことは、普天間基地問題、消費税問題、TPP問題と、自民党政治とまったく「同じ道」への回帰でした。多くの国民は、民主党の鳩山・菅政権の2代の政権のありさまをみて、失望、批判、怒りをつのらせ、あきれ果てています。同時に、日本の未来の展望を何ら示せず、不毛で党略的な政権攻撃に終始する自民党にたいしてもあきれ果てています。
こうした流れが進行していたわけですが、3月11日以来の大震災と原発事故は、「二大政党」の行き詰まりを、さらに深刻なものとしました。この戦後最悪の危機にさいして、国のかじ取りの能力がなく、党略的政争にあけくれる両党の姿を見て、多くの国民が、「二大政党」の政治的堕落と退廃の深さを、いま肌身をつうじて感じ取っています。
そもそも、財界主導ですすめられた「二大政党」づくりの動きの最大の目的は、日本共産党を選択肢の外に置くことによって政界から締め出す反共作戦にありました。しかし、この反共作戦は、「政権交代」からわずか2年という、支配勢力の思惑を超えるスピードでその馬脚をあらわし、国民にとって希望のない道であることが明らかになりつつあります。「二大政党」づくりの動きの最大のピークは、「政権交代」の瞬間でした。それからたった2年というスピードで、その行き詰まりが目の前で進行しているのです。そのもとで、国民のなかに、これまでの政治とは違う政治、新しい政治への探求の流れが生まれています。震災・原発問題でのわが党の活動への社会的共感に象徴されるように、まだ部分ではありますが、支配勢力が選択肢の外に置こうとしてきた日本共産党が、長年主張してきた方向にこそ、実は政治の真実があるのではないかという動きが起こりつつあります。
いま、情勢のこうした劇的な変化にふさわしいスピードと規模で、強く大きな党をつくることが必要だということを、私は、心から訴えたいのであります。なぜ「政権交代」をしたのに、日本の政治は少しも変わらないのか。その根本には、米国・財界いいなりという日本の政治の「二つの異常」がある。そのことを国民が見きわめ、この日本の政治の閉塞(へいそく)を打開する展望をつかむならば、日本の政治は大きく変わります。客観的には変わる歴史的前夜にあります。そうした国民の探求、認識の発展を促進するためには、国民と結びついた強大な党をつくることがどうしても必要であります。そのことをいまの日本の情勢は強く求めています。そのときに、党をつくらなくてどうするのかということを、私は、心から訴えたいと思うのであります。
党勢拡大の力で選挙に勝ち、その力でさらに党勢を拡大する「好循環」をつくろう
第二に、国政選挙での後退・停滞傾向をここで何としても打開して、党勢拡大の力で選挙に勝ち、その力でさらに党勢を拡大するという「好循環」をつくりだそうではないかということを、訴えたい。
わが党は、2000年の総選挙以来、この12年間で8回の国政選挙をたたかってきましたが、国政選挙での後退・停滞傾向を脱することができないでいます。この期間は、反共謀略キャンペーンにつづく、「二大政党」づくりという反共作戦などの客観的困難もありました。一連の選挙戦には、そのつど総括したように、それぞれに固有の主体的とりくみの問題点もありました。しかし、そのすべてに共通する最大の教訓は、党勢の前進がつくれないままで選挙をたたかったこと――「党の自力の不足」という問題でありました。
いまこそ、この弱点を何としても打開しようではないかと訴えたい。わが党の前進にとって最大の逆風だった「二大政党」づくりの動きは、いま深い行き詰まりにぶつかっています。未曽有の危機のもとで、多くの人々の政治を見る目に変化が起こり、日本共産党の主張と行動への新たな共感が広がっています。この条件を、何としても党員拡大を中心とした党勢拡大に結びつけ、党を強く大きくして、次の国政選挙での勝利をかちとろうではないか。そのことに全党が腹をくくって挑戦しようではないか。このことを心から訴えたいと思うのであります。
わが党は、1960年代から70年代の党躍進の時代に、たたかいとむすんで党を強く大きくし、その力で国政選挙での躍進をかちとり、それを力に党勢拡大でさらに前進し、次の選挙でさらに大きな躍進をかちとるという「好循環」をつくりだしていった歴史的経験を持っています。この経験は、運動が前進する途上でさまざまな新しい局面やあれこれの困難にぶつかるたびに、党建設の自覚的努力を回避して、これを自然成長にまかせようとする、さまざまな消極主義を克服するなかでかちとられたものでした。当時の決定をひもときますと、消極主義との生々しい格闘の記録がそこには書かれています。こうした歴史的教訓に学び、今日に生かそうではないかということを、訴えたいと思います。
創立90周年――理論的・政治的到達点にふさわしい党組織をつくりあげよう
第三に、この運動の党史のうえでの歴史的意義について訴えたい。わが党は、1年後に党創立90周年を迎えますが、わが党の歴史的到達点を大局でみるなら、その理論的・政治的到達点は誇るべき高さを築いてきたと確信をもっていえます。それにふさわしい党組織をつくりあげようではないかということを訴えたい。
2004年の第23回党大会で改定した綱領には、党創立以来のわが党の誇るべきたたかいのすべて、探求のすべてが込められています。それは戦前の侵略戦争と軍国主義に命がけでたたかいぬいた歴史を大きな土台としています。そこには、戦後、ソ連と中国の二つの干渉を退けて自主独立の路線を確立し、1961年に綱領路線を打ち立て、その路線のもとで重ねてきた国民的たたかい、理論的・政治的な探求のすべてが結実しています。私たちは、理論的・政治的には、国際的にも誇るべき高みに達した党綱領という到達点をもっているのであります。
この綱領にふさわしい党組織をつくろうではないか。このことを訴えたいのであります。すべての党員が綱領を身につけ、広い国民のなかに語り広げるならば、必ずや強大な党をつくることができる。そうした科学の力を綱領はもっています。この確信のもとに奮闘しようではありませんか。
党員拡大の前進は、党のあらゆる活動の発展を支える最大の保障
第四に、なぜ党員拡大を中心とする「党勢拡大大運動」か。それは、党員拡大の遅れは、党のあらゆる活動を発展させるうえでの最大の障害となっており、この弱点を打開することは、党のあらゆる分野での活動の発展を支える最大の保障となるからであります。
党員拡大は、党建設の「根幹」です。いまこの根幹を強めることは、党のすべての活動に新鮮な活力、新たな生気を吹き込み、前進をつくりだす保障となります。国民の要求にこたえた運動も、政策・宣伝活動も、選挙活動も、議会活動も、機関紙活動も、党のあらゆる活動を活性化させ、前進させる根本の力は、党に自覚的に結集した党員であり、いまその力を強く大きくすることこそ、党活動を発展させる要になっている。このことを訴えたいと思います。職場と青年・学生のなかでの党づくりは、党の現在と将来を展望して特別に重要ですが、全党的に党員拡大の大きな波をつくりだし、その波のなかで、職場と青年・学生のなかでの党員拡大の戦略的位置づけと特別の手だてをとってこそ、前進をかちとることができます。2中総後、この分野での先駆的な経験が、各地に生まれていますが、ぜひ討論で交流し、深めていただくことを呼びかけるものです。
くわえて強調したいのは、党員拡大の訴えと一体に、「しんぶん赤旗」日刊紙の購読の訴えを行おうということです。日々起こる複雑な情勢を科学的展望をもってつかみ、日本共産党員として確信と誇りをもって活動するためには、日刊紙を購読することは欠かせません。そのことを丁寧に訴え、党員拡大と日刊紙読者拡大という、党勢の一番の基幹的な部分を一体的に強化する活動に、特別の意識性をもってとりくむことを心から訴えるものです。
「党勢拡大大運動」の成功をどうやってかちとるか
最後に、「党勢拡大大運動」の成功をどうやってかちとるか。5点ほど端的にのべたいと思います。
結びつきを基礎に「支部が主役」で――“日本共産党らしい支部づくり”を
一つは、結びつきを基礎に「支部が主役」でとりくむ、ここに「党勢拡大大運動」を成功させる最大のカギがあるということです。
「すべての支部が新しい党員をむかえる」という目標の意味するところは、全党のすべての支部が、支部自身の力で新しい党員を増やし、その党員とともに成長する支部への成長・発展をかちとるということです。そうした“日本共産党らしい支部づくり”のとりくみをすすめるということです。全国2万1千のすべての党支部が、そういう支部になろうではないかというのが、この「党勢拡大大運動」の呼びかけの眼目であります。
そのために、支部長が不在の支部、支部会議が未開催の支部、さまざまな困難をかかえている支部を、一つひとつ援助して立て直していく親身の援助が大切です。「党生活確立の3原則」――支部会議に参加する、党費を納める、「しんぶん赤旗」日刊紙を読む――を確立し、「政策と計画」をもって自主的・自立的に活動できる支部にしていく援助が大切です。さらに、党規約第40条(支部の任務)にもとづき、党員の間に連絡・連帯網を確立し、一人ひとりの党員が条件と得手を生かして活動に参加し、温かい人間的連帯の関係で結ばれた人間集団としての支部をつくりあげる。こうしたとりくみと一体に「党勢拡大大運動」の成功をかちとるためにあらゆる力をそそごうではありませんか。
全国すべての党支部が、こういう支部になるというのは、壮大な目標でありますが、これをやりきるならば、わが党は新しい生命力をえて大きく躍進する道が開かれるでしょう。それに挑戦しようではないかというのが、今度の提起であります。
国民のなかでのたたかいを発展させることと一体に
二つ目は、国民のなかでのたたかいを発展させることと一体に、「党勢拡大大運動」にとりくもうということです。
全党はいま、東日本大震災の救援・復興、原発からの撤退、消費税増税やTPP推進反対、米軍基地問題、核兵器廃絶など、さまざまな国民運動にとりくんでいます。また、選挙公約の実現や身近な要求活動に力をそそいでいます。そのなかで、広い人々のあいだに党とのつながりが、新たに広がっています。国民の中に広く打って出て、各分野で国民運動をおこし、それと一体に、「党勢拡大大運動」を成功させようではないかということを、呼びかけたいと思います。
そのさい、各分野の運動団体のなかでの党勢拡大を重視していきたい。そのことは、それぞれの団体が、その性格にふさわしく民主的に前進・発展していくうえでも重要であります。そのために党グループが、この運動の先頭に立つことを訴えるものです。
党員拡大を中心にしつつ、読者拡大(日刊紙、日曜版)の独自の努力を払う
三つ目は、党員拡大を中心にしつつ、読者拡大の独自の努力を払うということであります。
「大運動」は「党員拡大を中心」とするものですが、同時に、「しんぶん赤旗」読者の拡大をあわせて追求します。そのためには、独自の手だてと段取りが必要です。たとえば、毎月の日刊紙と日曜版の読者拡大の目標を持つこと、宣伝紙を活用して日刊紙と日曜版のそれぞれの固有の魅力と内容を語ること、結びつきを生かして対象者を広くあげること、あらゆる機会を生かして意識的にとりくむこと、すべての党員が参加する運動に発展させることなど、独自の手だて・段取りをとることが必要であります。
そのなかで、とくに、日刊紙読者の拡大を重視するようにしたい。日刊紙は、党中央と党員を日々結ぶ絆であるとともに、党と国民とを日々結び、真実を運ぶ絆であります。この日刊紙を、一般のメディアの日刊紙と肩を並べる社会的影響力をもつ新聞に発展させる。そういう大きな志をもって、日刊紙拡大に特別の力をそそぐことを訴えるものです。
「綱領・古典の連続教室」を全支部、民青同盟あげた学習運動へ発展させる
四つ目に、「綱領・古典の連続教室」を全支部、民青同盟あげた学習運動へ発展させることです。
どんな複雑な情勢が展開しても、大局的な展望と確信をもって活動するためには、綱領的・世界観的確信を身につけることが不可欠であり、その最良の場が「綱領・古典の連続教室」です。この運動をさらに発展させ、全支部がもれなく「支部教室」としてとりくむようにすることを訴えたいと思います。とくに、青年・学生支部と職場支部の「支部教室」と、民青同盟のすべての県、地区、班の学習運動に発展させることに、力をそそごうではありませんか。これは、「党勢拡大大運動」を成功させるうえでも、最大の知的・理論的推進力となるでしょう。
あわせて、「連続教室」を力にして、全支部で党の教育制度である「綱領講座」――支部会議などで綱領そのものをテキストとして読み合わせを行い、質疑と討論で理解を深める運動に、新しく党員を迎えるなかでこそ、本格的に挑戦することを呼びかけたいと思います。
「集い」――「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」を発展させる
五つ目に、「集い」――「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」をさらに発展させることです。「集い」は、参加者の要求や関心にこたえて、日本共産党をまるごと知ってもらい、人間的連帯があふれる党の姿を実感してもらえる場であり、それをつうじて入党へのさまざまなためらいも解きほぐしていくことができます。
この間、2中総が提起した、「数人程度の文字通りの『小集会』『懇談会』を、網の目のように取り組む」という方針が大きな力を発揮しています。身近な会場で、少人数で、気軽に開くことを重視して、無数の「集い」を開き、そのとりくみのなかで「党勢拡大大運動」を成功させようではありませんか。
中央委員会の決意――全国津々浦々の同志と心一つに成功に力つくす
いま提案した「党勢拡大大運動」は、つぎの国政選挙での勝利だけでなく、第25回党大会が提起した2010年代を党躍進の時代とするという歴史的事業の成否がかかった重大な意義をもっています。
党中央は、この運動に、一つの国政選挙をたたかうような構えでとりくみ、中央役員、国会議員が先頭にたって全国各地にうかがい、全国の同志と力をあわせて何としてもこれを成功させる決意であります。全党の同志のみなさんが、ともにこの一大事業を成功させるために力をあわせて奮闘することを心から訴えるものです。
以上をもって、幹部会報告といたします。