2011年7月18日(月)「しんぶん赤旗」

「地元の声じゃない」

水産特区で民主内にも異論


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(写真)水産特区で浜の秩序を崩壊させるなと開かれた緊急全国漁業代表者集会=6日、東京都千代田区

 政府はいま、東日本大震災復興構想会議の「提言」(6月25日)を受けた基本方針作りの作業を進めています。基本方針をめぐっては、漁業権を地元漁協と同列に民間企業に与える水産「特区」構想が焦点の一つとなっています。宮城県の村井嘉浩知事が強く主張し、復興構想会議「提言」に盛り込まれたものです。

 平野達男復興担当相は、水産「特区」について「当然(基本方針の)対象になりうる」とする一方、「地元漁協にすればいろいろな思いがあるので、そこはきちんとくみ上げ、地域の合意は不可欠」とのべています。(8日の記者会見)

 民主党内には復興検討小委員会が設置され、政府案に意見を反映するとしていますが、同党内からは水産「特区」構想に疑問の声も出ています。

 「特区なんて地元の声じゃない。地元では最初からそんな声はない」―。農林水産問題に詳しい議員の一人はこう続けます。「海域があまっているところは資本投下で銀ザケ(養殖)とかやるのはいい。しかし、企業に沿岸の管理運営を任せたら、汚しまくって、利益が少なくなれば『ハイさよなら』と急にやめたりする。これでは地域社会はガタガタになる。長期的観点でやらなければダメ」

 被災地出身議員の一人も「海に生まれた人間は、生まれ育ったところに骨をうずめる、海の恵みを抱いて生きてきたという思いがある。資源管理という面でも企業に根こそぎやられたら海がダメになる。そういう立ち位置でものを言っていく」と述べます。

 他方、農林水産関係議員の中には「ものすごい対決になっている」という認識を示しつつ、「『反対』とは言えない」という議員もいます。

 「確かに、(企業への)漁業権開放をそのまま認めれば、沿岸漁業の調整が難しくなるだろう。だから、企業の参入を認めながらも調整のつけられるような仕組みを考えることが必要だ。調和が保てるような方策を水産庁の方でも検討している」

 しかし、水産庁の「水産復興マスタープラン」(6月28日)は、「地元漁業者が主体の法人が漁協に劣後しないで漁業権を取得できる仕組み等の具体化」と、漁業権「開放」を明確にする一方、漁協と参入企業との権利調整の方法などは何ら明示されていません。

 6日の全漁連の集会で宮城県漁協の阿部力太郎理事長は述べました。「浜を生業(なりわい)とする漁業者は撤退などできません。生産を維持しようと死に物狂いでがんばる、それを支えてきたのが漁協です。いま、浜で求められているのは、多くの問題を抱えた『特区構想』を強引に実現することではなく、漁業者の一日も早い自立・漁業の再生に国・県・漁協・漁業者が一丸となって取り組むことです」





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