2011年7月29日(金)「しんぶん赤旗」
「収入奪ったのは東電」
「送電停止」通告書に怒り
群馬のキノコ農家語る
福島第1原発事故による風評被害で収入が激減して電気料金を滞納した群馬県前橋市のキノコの菌床栽培農家の男性(32)が東京電力から送電停止の通告を受けていた問題で、通告書を手にこの男性が東電への怒りを本紙に語りました。「電気代を払う収入を奪ったのは東電ではないか!」と憤ります。
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男性によると7月初旬、東電前橋支社前橋地域料金グループの職員2人が男性宅を訪れ、「電気料金お支払いについてのお願い」なる文書を示し、「料金の支払いがない場合は電気の供給を止める」と通告しました。
職員は居直り
男性は、原発事故後、取引先から入荷を断られ700万円以上の被害を受けていたため、供給停止の猶予を求めました。「あなたたちが起こした原発事故のせいで、私たちの商品は売れなくなったんだ」と訴えると、東電の職員は「出るとこ出たっていい。訴えるなら訴えてもらってかまわない」と居直ったと言います。
3月後半から二十数カ所の直売所に置いたキノコはまったく売れなくなり、市場からは「買い手がつかず持ってきても値がつけられない」と断られる事態にまでなりました。
「放射線汚染の可能性が否定できない以上は取引できない」と契約していた取引先からも断られました。
父親の代から守り抜いてきたキノコ栽培。昨年の秋に新種のキノコの栽培を始め軌道にのせようとした矢先のできごとでした。
通告書には「供給停止によりいかなる損害が生じても当社は一切の責任を負いかねます」と東電の免責を強調する文言も入っています。
「東電のせいで全てを失った。風評被害を生んだ当事者がなんの責任も果たさず、電気を止めると脅して一方的に金を払えなんてひどすぎる」
賠償を求める
男性は11日、群馬農民連の役員とともに東電に抗議しました。あわせて、風評被害農家も対象にした国の緊急融資制度の活用にも動きました。しかし、東電の賠償の不透明さもあり、融資のめどがたっていません。男性は約半月分の電気料金を工面して、送電停止を猶予させています。
男性の家では施設の中でキノコを栽培するため、月平均30万円の電気代がかかっています。栽培施設内の気温を約18度に保つ必要があるため冷暖房など、電気が欠かせません。
「東電に電気を止められれば私たちは再建の道すら奪われる。そうなれば終わりです。供給停止の通告は私たち家族にとって脅迫そのものです」
男性は東京電力に風評被害に対するすみやかな賠償を強く求めています。