2011年7月30日(土)「しんぶん赤旗」
主張
泡瀬干潟2次訴訟
道理のない埋め立てはやめよ
沖縄県沖縄市の沖に広がる泡瀬(あわせ)干潟の埋め立て事業の再開をやめさせるために、周辺住民など276人が沖縄県知事と沖縄市長に公金を支出しないことを求める第2次訴訟を起こしました。
第1次訴訟では那覇地裁判決(2008年)も福岡高裁那覇支部判決(09年)も埋め立て事業は「経済的な合理性がない」として県と市にそのための公金支出の中止を命じました。にもかかわらず事業者の国と沖縄県は埋め立て工事を再開しようとしています。豊かな生態系をもつ干潟は国民・県民の貴重な財産です。住民の意思に反した再開は許されません。
大震災への備えもない
泡瀬干潟の埋め立て事業は政府主導で、約95ヘクタール(国施行分約86ヘクタール、県施行分約9ヘクタール)を埋め立てて人工島をつくり、大型ホテルや観光商業施設が立ち並ぶ一大リゾート地帯をつくるものです。陸に近い第1区域は護岸がつくられ、あとは土砂を投入するだけです。それ以遠の第2区域の埋め立ては中止されたとはいえ、第1区域の護岸建設だけでも潮流が変わり、海草藻場が大規模に消失し、干潟の浄化機能が深刻な状態になっています。埋め立てを中止し、原状回復をしないと取り返しがつかなくなるのは目に見えています。
埋め立て再開のために持ち出された計画はリゾート開発で訪れる観光客数や宿泊状況などどれをとっても裏づけのない数字が並ぶだけで、第1次訴訟の判決が求めた「手堅い検証」がなされた形跡はありません。新計画の要ともいうべき企業の誘致も不透明なままです。新計画に合理性がないのは明白です。
問題なのは10年ほど前に実施された環境影響評価の結果をいまだに有効扱いにしていることです。この間に泡瀬干潟では新種や貴重種などが確認されるなど大きな変化が起きています。護岸工事の結果干潟に大きな悪影響もでています。公有水面埋立法が規定する「環境保全に付き十分配慮」するとの要件を満たさない新計画が通用するはずはありません。
東日本大震災で大きな被害をだしているのに、新計画には大震災への備えが欠けていることも問題です。1771年4月の沖縄県八重山地震では数十メートルの大津波が発生し、その教訓から沖縄本島でも10メートル以上の津波を想定すべきだという指摘もあります。国と県が埋立変更許可申請を沖縄県に提出したのは大震災後の4月26日です。それなのに地震による液状化対策もきわめて不十分で、津波のさいの避難場所となる高台なども予定せず、逆に陸地と人工島をつなぐ道路を2本から1本に減らす計画を出したこと自体、無責任というほかありません。
自然と共生してこそ
人間が生きていくためには環境を保全し、自然と共生していくことが不可欠です。新計画はその観点が欠けています。干潟を埋め立て自然を破壊し、沖縄の将来の発展の基盤をみずからほりくずすのをやめるべきです。湿地保護のラムサール条約の事務局も泡瀬干潟が条約で保護されるべき干潟だとのべています。「自然と共生する社会の実現」を目的とした自然再生推進法にも逆行します。
貴重な泡瀬干潟の埋め立て再開をやめて、原状回復の責任を果たさせることが重要です。
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