2011年8月8日(月)「しんぶん赤旗」

主食を投機に投げ込む
米の「先物取引」は中止を


 政府は、米の「先物取引」について2年間の試験上場を認め、東京穀物商品取引所と関西商品取引所で8日から取引を開始しようとしています。この問題を国会で鹿野道彦農水相にただした日本共産党の紙智子参議院議員(党農林・漁民局長)に、問題点と解決方向をききました。


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紙智子参院議員(農林・漁民局長)に聞く

 ―米の先物取引の問題点はどこにありますか。

 最大の問題は、日本の主食の米を投機の対象にすることです。国民の主食を安定供給することと逆行します。

 先物取引は、将来を見込み、現物のお米がなくても取引できます。たとえば、6カ月先の価格を予測してそのときに売買差額を精算する方法です。現物取引もありますがごくわずかです。投機取引が圧倒的に多いことが先物取引の特徴です。マネーゲームとなり、暴騰・暴落を繰り返すことになります。

 日本の稲作農家の受け取り価格は、生産費の6割程度に落ち込んでいます。買う業者は売買の危険を避けようとできるだけ安く入札します。将来的には、今でも低い生産者米価が下がっていくことが心配です。

震災・原発不安のときなぜ導入

 ことしの稲作は、地震や津波、東電の原発災害で作付けできないところがあります。福島県の農家を訪ねましたが、作付けした農家も「水田に放射能汚染の恐れがあり、でき秋が心配だ」といっていました。放射性物質の残留検査をすることになっていますが、なぜこんなときに米を投機の対象にするのかと批判がでるのは当然です。

 ―認可した鹿野農水相を追及しましたね。

 米の先物取引は、生産者や消費者が願っているものではありません。財界がかねてから求めてきたものです。JA全中も農民連の人たちも試験上場を反対しています。鹿野農水相に私は、「JAなど関係者の意見も聞かず、主食の米を投機の対象にしていいのか」と質問しましたが、鹿野大臣からは明確な答弁はありませんでした。

 鹿野農水相は、認めない理由がないからだといいます。2005年にも商品取引所から試験上場の申請がありました。そのときの農水省は却下しました。国全体が米の生産調整をしている中で、市場原理にゆだねるのは制度的に矛盾するということでした。いまも戸別所得補償の条件として生産調整の仕組みは続いています。同じ状態なのに認可する理由はなく、先物取引はやめるべきです。

価格保障・所得補償で安定こそ

 ―主食の米の安定供給はどうしたらいいのですか。

 国際的には、穀物が高騰して輸出禁止する国も出ています。いまこそ主食の米の安定が必要です。

 そもそも歴代政府が不必要なミニマムアクセス(最低輸入機会)の外国産米のため国産米を減らし、需給管理責任を放棄してきたのが問題です。

 日本共産党は、ミニマムアクセス米の義務的輸入の中止、ゆとりある米の需給計画と米の生産農家の経営安定を要求してきました。米でいえば市場価格と生産費との差額をカバーする価格保障の「不足払い制度」を柱に、水田がもつ環境など多面的機能への所得補償の組み合わせで経営安定をすべきです。

 大手流通資本の優先的地位利用の規制など安定供給にむけて必要なルールづくりも関係者と協力して提起していきたいと思います。


 先物取引 数カ月先の価格を予想してそのときになったら差額を精算する取引が特徴です。日本では小豆、大豆などで先物取引をしていますが、9割以上が差額決済の投機目的です。証拠金といわれるわずかな資金で数十倍の取引が可能になるため、投機家のマネーゲームになります。





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