2011年8月16日(火)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
「8月ジャーナリズム」という言葉があります。毎年8月になると、原爆・戦争を語り継ぐ記事や番組が集中することを揶揄(やゆ)した表現です▼しかし、関係者が次々と亡くなり、多くの記録が証拠隠滅されている中で、戦後66年たってなお新たな事実が発掘されている意味は大きいでしょう。特に驚いたのは、6日放送のNHKスペシャル「原爆投下 活かされなかった極秘情報」です▼軍の参謀本部は、原爆投下に向けた米軍の動きを事前に察知していながら、空襲警報すら出さなかった、という衝撃の事実を暴きます。せめて警報が出されていたら、20万人もの人々が、無防備のまま原爆で死ぬことはなかったでしょう。その後、何十年にわたって放射能に苦しめられることも…。悔しさは、筆舌に尽くしがたい▼しかし、見るほどに、この情報隠しの体質は過去のものではない、との思いがつのります。ジャーナリストの諌山修さんも、本紙「試写室」で、「福島の原発事故で露呈した国と東電の情報隠しも、生命軽視・国策優先の根っこは同じだ」と指摘します▼もう一つ、心をひかれたドキュメンタリーは、「二度と原爆を使ってはいけない」(NHK)です。占領期、長崎でGHQの軍政部司令官を務めたデルノア中佐の足跡を、その娘がたどるというものでした▼タイトルの言葉は、1947年、長崎で初めて行われた平和式典に司令官が寄せた言葉。国策に逆らい、原爆を否定した父の思いを娘が受け継ぐ。国境を越えた、「記憶の継承」です。