2011年8月20日(土)「しんぶん赤旗」
防衛省天下り団体が契約独占
基地維持の事業にメスを
防衛省の天下り団体に事実上の随意契約で多額の税金が流れていたことが問題となっています。
この団体は財団法人防衛施設周辺整備協会。常勤役員は全員、防衛省の天下り。職員も166人中105人が天下りで、ほとんど防衛省や自衛官です(2010年報告)。基地周辺の住宅防音工事の事務手続きを主な収入源としており、年間12億円(10年度)の収入をあげています。
これまでは補助金として協会に支払われていましたが、昨年の事業仕分けで「天下り団体への資金還流だ」との指摘を受けて廃止。代わりに防音対策手続き事業として一般競争入札を導入していました。しかし、入札要件として、個人情報を適正に管理できる団体に交付される「プライバシーマーク」を持つことが設けられた結果、ほとんど協会だけが参加する“無競争入札”になっていたと報道されています。
枝野幸男官房長官は18日の記者会見で、一般競争入札状況について、8月16日時点で同協会の受注件数は78%(32件中25件)、契約金額は総額6億9600万円と98%にのぼっているなど、同協会の独占状態を明らかにしました。
米軍や自衛隊基地の騒音に対する防音工事などは、防衛施設周辺環境整備法にもとづいて国の負担で行われており、4月の法改定で対象事業が従来のハコ物からソフト事業に拡大されました。
日本共産党の吉井英勝議員は昨年11月の衆院安全保障委員会で行った反対討論で、「基地を維持するためのテコとして活用し続けようとするものであり、本末転倒」と批判。基地被害は「周辺対策」によって解消されず、基地の縮小・撤去こそ必要だと主張しました。法改定に反対したのは日本共産党だけでした。
一方、天下り問題について民主党政権は、国家公務員法の改定で省庁による再就職あっせんをやめる代わりに原則自由化する方向です。日本共産党の塩川鉄也議員は昨年4月14日の衆院内閣委員会で「他府省では禁止している再就職のあっせんが、自衛隊の場合、若年定年制の幹部(53〜56歳)には認められることになる。天下りのあっせんそのものになる」と防衛省の「聖域」扱いを批判しました。天下りの監視組織が防衛省内におかれることについて「独立した第三者機関といえるのか」と追及し、天下りそのものを禁止するよう求めました。
枝野氏は18日の会見の中で、「状況を厳しくフォローアップしたい」とのべていますが、民主党自身が事業仕分けで廃止としていながら温存されていた問題です。基地被害に対する事業のあり方や天下りの問題など、根本的な問題にメスを入れられるかどうかが問われています。