2011年8月22日(月)「しんぶん赤旗」
イスラエル批判強まる
警官殺害 和平条約見直し論も
エジプト
【カイロ=伴安弘】イスラエルのバス襲撃事件の犯人追跡の中でイスラエル軍がエジプト人警官5人を殺害したことで、両国関係の緊張が高まっています。イスラエルのバラク国防相は20日、エジプト人警官の死に「遺憾の意」を表明しましたが、エジプト国内ではイスラエルに対する強い抗議の声が上がっています。
エジプト内務省当局者によると、警官が死亡したのはエジプトとパレスチナ・ガザ地区との境界にあるラファ検問所付近。イスラエルはバス襲撃犯をガザ出身者だと断定し、18日にイスラエル軍が武装ヘリから武装グループを銃撃した際に警官を殺害したといいます。
エジプトのシナイ半島ではムバラク前政権の崩壊(2月)以降、イスラエルとエジプトをつなぐガス・パイプラインが爆破される事件が4度起きています。犯行グループはシナイ半島に住むベドウィン(遊牧民)の過激派とされますが、「外国勢力」とつながっているとの見方も出ています。今回のバス襲撃事件も同じグループの犯行の可能性もあります。
警官殺害に対してエジプトでは次期大統領選挙の候補者らが次々に強い非難の声をあげ、イスラエルとの和平条約の見直しを求める声もでています。その中で穏健イスラム主義組織とされるムスリム同胞団の報道官はエジプト側もイスラエル兵を殺害すべきだという強硬な意見を表明しています。
イスラエルは、もう一つの友好国トルコとの間でも昨年5月、ガザに向かう国際支援船を急襲し、トルコ人9人を殺害する事件を起こしました。トルコに続きエジプトとの関係悪化はイスラエルの国際的孤立を一段と深めることになるとみられます。