2011年9月2日(金)「しんぶん赤旗」

国と地方の生活保護協議

一体で改悪を狙う


 生活保護制度の改悪にむけた国と地方の事務レベル協議が続けられています。厚生労働省公表の議事概要(7月末までに4回)から、狙われている改悪をみます。


有期制

 「期間を設定した強力な支援は重要だ。更新制は難しいにせよ、更新制に代替できるものはないか検討を」(6月13日)

 「期限を切った就労指導をすることができるということを法律で明文化すべきだ」(6月29日)

 協議では、一定の期限が過ぎたら保護を廃止できるようにする有期制(更新制)を持ち込もうとする発言が自治体側から繰り返されています。

 さらに“生活保護は楽な制度と思わせないため”として、受給者にボランティア活動を義務付けるべきだという意見も出ています。

 「(稼働年齢層=16歳〜65歳=には)当然就労活動をさせることが必要だが、就労までの空いた時間にボランティア等の何かしらの作業をさせるべきではないか」(6月29日)

 生活保護制度は、憲法25条に保障された最後のセーフティーネット(安全網)です。それに有期制を持ち込むことは憲法の理念に反します。「ボランティアの義務付け」は「意に反する苦役に服させられない」と定めた憲法18条に抵触します。厚労省もボランティア義務付けについては、憲法との関係で「慎重な検討が必要」(6月13日)と述べざるをえませんでした。

受給制限

 協議では、10月からはじまる求職者支援制度(雇用保険を受給できない求職者が生活給付=月額10万円=付きで無料の職業訓練を受けられる制度)を優先させるべきとの意見が出ています。

 「稼働能力のある方については、求職者支援制度の活用を生活保護の受給要件とすることが、国民にとって分かりやすい仕組みだ」(7月13日)

 自治体側の主張は、生活が苦しいときはだれもが請求でき、基準にあっていれば受けられる生活保護の請求権を制限するものです。

医療費

 自治体側は「受給者本人に負担がなく、結果として医療費の増大につながっている。自己負担の導入について検討を」(6月13日)と、医療費の自己負担の導入も要求しています。

 協議からは、「住民の福祉の増進を図る」(地方自治法第1条2)のが役割の地方自治体が率先して生活保護制度を改悪する旗振り役になっている姿が浮かびます。

 制度改悪の急先鋒(せんぽう)である指定都市市長会は7月、「国が一方的に取りまとめを行う」ことを警戒し、自治体側の意見を十分に反映するよう厚労省に緊急要請しています。

 当初、8月中の取りまとめを目指していた国は、同市長会の要請を受け、「丁寧な議論の取りまとめをしていきたい」と9月以降も協議を続ける姿勢です。 (鎌塚由美)





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