2011年9月17日(土)「しんぶん赤旗」
市田書記局長の代表質問 参院本会議
日本共産党の市田忠義書記局長が、16日の参院本会議で行った代表質問は次の通りです。
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私は日本共産党を代表して野田総理に質問します。
台風12号により犠牲となられた方々、そして被災されたみなさまに心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。政府が二次被害の防止に全力をあげ、被災者の生活再建、自治体への財政支援を強化することを求めます。
震災復興――安心できる住環境、仕事と収入の確保こそ
東日本大震災・福島原発事故から半年がたちました。
復旧・復興の究極の目標、それは、これまで被災地で暮らし、あの大津波から生きながらえたすべての人々が、これからも安心してその地で住み続けることができるようにすることであり、子や孫たちの世代に地域社会を残すことであります。
ところが、居住環境は劣悪、仕事と収入がないために、多くの人々が住み慣れた土地を離れざるを得なくなりつつあります。いまなによりも急がれるのは、安心できる住環境と、仕事と収入の確保の道を提供することであります。
雇用の確保のためには事業の再開がその大前提です。再建の意思のあるすべての事業者を、国が応援することが急務です。被災した事業所再開の最大のネックは「二重ローン」であり、その解消がカギだということをわが党も一貫して指摘し、具体策も示してきました。同時に、事業再建のためには、個々の事業所、店舗への直接の支援がどうしても必要です。住宅については、不十分ではあっても被災者生活再建支援として上限300万円の補助があります。事業所や店舗の再建のためにも同様の施策を講ずることが不可欠だと考えますが、いかがですか。
大津波の被災地の主要産業は水産業です。「海がある限り海で生きる」……。漁業者をはじめ関係者は強い意欲を持っています。漁に出れば魚はいます。ないのは漁船であり、漁具であり、冷蔵・冷凍施設をはじめとする生産・加工・流通施設です。これらが提供されてこそ、新たな生産と雇用が生まれます。
全国の漁業関係者などは陸路・海路を通じて被災地に漁船を送ってきました。ところが政府の対応はどうか。第1次補正で273億7900万円が手当てされた「共同利用漁船等復旧支援対策事業」は8月末現在1円も支出されていません。「養殖施設復旧支援対策事業」も、「漁港関係等災害復旧事業」も同様です。どうしてこんな事態になっているのか。直ちに予算を執行すること、生産・流通・加工までをセットで再生するために、これらとは別枠で冷蔵施設、加工施設再建のための個別・直接支援を行うべきだと考えますが、いかがですか。
農業についても、予算の執行率は大変低い水準にとどまっています。速やかに事業を執行するとともに、津波被害を受けた農地については、政府がいったん買い上げて塩抜きやほ場整備をして農家に貸し付け、将来的に農家が買い戻しできるようにするべきではありませんか。
原発事故――福島原発の管理、地域の除染に国が全責任を
次に原発事故の対応であります。
私たちが直面しているのは、第一に、重大な事故を起こした福島原発を、外部に今後放射性物質を出すことなく、完全な廃炉まで数十年にわたって管理していくという極めて困難な課題であります。第二に、ウラン換算で広島型原子爆弾の20個分という莫大(ばくだい)な量の放射能で汚染された地域を徹底して除染し、そこに安心して人が暮らし、子どもを産み育てられるようにするという、人類がこれまで経験したことのない大事業をやらなければならないということです。
総理にはこの認識と覚悟がおありですか。
総理は「忘れてはならないものがあります」と繰り返し述べ、原発で働く人たちと高校生の言葉を引用されました。しかし、あなたが「忘れてはならない」のは、誰が高校生をあんな思いにさせたのか、なぜあのような原発事故が起こったのか、「安全神話」にどっぷりとつかってまともな手だてを講じてこなかった歴代政府の原子力行政の在り方そのものではありませんか。
総理は除染について「国が責任を持つ」といわれました。それなら、年間線量20ミリシーベルト以上だけ国が責任を持つというのではなく、すべてに国が責任を持つことを明確にするべきであります。
賠償については、国と東京電力の責任で全面賠償することを改めて求めるものであります。被害者には適切な賠償とか因果関係うんぬんなどといって線引きをやりながら、東京電力は国からの支援をうけ、電力業界や原子炉メーカーをはじめ原発で多くの利益を上げてきた原発利益共同体の責任も免罪し、その役員は高額報酬をもらい続ける。これほどモラルに反することはないではありませんか。
さらに、いまこそより根本に立ち返って考えるべき時であります。放射性物質がいったん放出されれば、それを抑える手段がないこと、安全な原発などありえないことが誰の目にも明らかになりました。総理は問題を対立的にとらえるなといいますが、原発ゼロをめざすのか、それを推進するのかが、いま鋭く問われているのです。期限を切って、原発ゼロの日本をめざすことを政府が決断し、同時並行で自然エネルギーの大規模な普及を進めることを強く求めます。
円高問題――日本経済を家計・内需主導に改革せよ
次に、円高問題についてです。
総理のあげた「対策」は、大企業への立地補助金をだすことと外国企業の買収支援というおよそ国の政策というにはあまりにもお粗末なものでした。そこには、なぜ繰り返し円高が日本経済を襲うのか、そこから脱却するために何が必要なのか、という根本的な思考が欠如しています。
もともと今回の急激で異常な円高は、アメリカの財政危機に端を発し、アメリカやヨーロッパ経済への不安を背景にしたものであり、その中で相対的に安全だとみなされた円が買われたところから起きたものです。
これまでたびたび起きた円高局面で、輸出大企業は、「1円の円高で数百億円の損失」がでるなどといって、労働者と中小企業に犠牲をおしつけて、賃下げや首切りなど、いっそうのコスト削減で対応し、円高のもとでも輸出をふやすという方針をとりつづけてきました。それがまた新たな円高を呼ぶという悪循環をつくりだしてきました。今度も同じ対応が繰り返されれば日本経済は計り知れない困難に陥るでしょう。
大企業の圧力に屈して、新たに補助金を出してやるような「立地補助金」などではなくて、日本経済を“外需頼み”から家計・内需主導に改革することに正面から取り組むべきではありませんか。そのためには、労働者派遣法を抜本的に変え、非正規雇用労働者を正社員化すること、最低賃金の抜本的引き上げ、長時間・過密労働の是正、下請けいじめをやめさせ、大企業と中小企業との対等な取引ルールを確立するなど、企業活動で得た富を労働者と中小企業に還元し、国内に還流させる手だてをとることであります。
さらに、直接的な円高の原因になっている巨額の投機マネーなどにたいし、国際的な為替投機規制の取り組みを開始するよう、世界各国に働きかけることが日本政府の責任ではありませんか。あわせて答弁を求めます。
武器使用・輸出三原則見直し――憲法違反の発言を放置するな
最後に、民主党の前原政調会長のアメリカでの発言についてうかがいます。
前原氏は、アメリカで「PKO(国連平和維持活動)の武器使用の基準を緩和する」「武器輸出三原則を見直す」と明言されました。武器使用基準の緩和というのは、自衛隊が他国の軍隊と一緒になって武力行使する道をこじあけようとするもので、明らかな憲法9条違反であり従来の政府見解からも逸脱しています。ことは政権党の政調会長の発言であり極めて重大です。
総理はこの発言を是認されるのですか。是認しないとすればこの発言を放置すべきではないと考えますが、総理の明確な答弁を求めて質問を終わります。