2011年9月17日(土)「しんぶん赤旗」
所得税は増 法人税は減
政府税調が復興財源案
政府税制調査会は16日の全体会合に、東日本大震災の復興財源をまかなう複数の臨時増税案を示しました。増税対象として、所得税、法人税を軸とする2案に加え、消費税のみ増税する案も示しました。同日夕、首相官邸で野田佳彦首相と会談した安住淳財務相によると、首相は3案のうち、消費税を3%引き上げる案を選択肢から外すよう指示しました。
政府税調案は、国税では、(1)所得税と法人税の増税(2)所得税と法人税に、たばこ税などの個別間接税を加えた増税―の2案にしぼられました。地方税については、個人住民税を軸として、これに地方たばこ税の増税を加えた2案です。
所得税については、税額を一定割合上乗せする「定率増税」を示しました。一方、法人税については、11年度税制「改正」に盛り込まれた実効税率の5%引き下げを実施。その上で、国税の法人税額に一定割合を上乗せし、「増税」するとしました。法人税の純増税は許さないとする経団連の要望に沿ったもので、実質減税になる見通しです。
増税期間は、所得税で5年と10年の2案を示しました。一方、法人税については3年に限定しています。
増税以外で確保する財源は、子ども手当見直しなどの3兆円程度に加え、政府が保有するJT(日本たばこ)株売却や公務員人件費削減、財政投融資特別会計の剰余金などで最大5兆円としています。
この結果、B型肝炎の和解金原資に充てる分も含めた臨時増税の規模は11・2兆円程度になる見通しです。
解説
財界の要望に沿う
政府税調が示した復興増税案は、庶民には所得税増税を押し付ける一方、大企業には実質減税という恩恵を与えるという逆立ちぶりを示しました。
経団連は2日前、「税制改正提言」で、国会でもまだ結論も出ていない法人実効税率の5%引き下げを既定事実のように主張。負担増を行うなら「減税分を限度に」とか「(減税の)施行を一定期間遅らせる方式とせよ」と述べ、そのあげく「純増税を行うことは絶対に容認できない」と強い調子で求めています。
政府税調の復興増税案は、この身勝手な要望を忠実に受け入れ、負担の痛みは庶民にだけに押し付けようというものです。
そもそも復興のための財源が必要なときに、法人税を減税することに道理があるのでしょうか。
政府が「負担を分かち合う」(復興の基本方針)というなら、行き過ぎた大企業・大資産家減税こそただすのが、まず何よりも必要です。
日本共産党は、復興財源の確保をいうなら、まず、法人税減税や証券優遇税制の延長を中止することを求めています。不要不急の大型公共事業の中止や政党助成金の廃止など、歳入・歳出を見直し、その一部を充てることを求めています。(山田英明)
■関連キーワード