2011年9月21日(水)「しんぶん赤旗」

主張

TPP

経済のゆがみさらにひどく


 米国などが交渉中の環太平洋連携協定(TPP)への参加は、日本経済を大きく左右する問題です。野田佳彦首相はTPPがもたらす影響について議論を避け、新政権としての方針を明確にせず、参加するかどうかは「早期に決める」とだけ繰り返しています。

 TPP参加を打ち出した菅直人前政権が方針説明に企画した「開国フォーラム」も東日本大震災で中断しています。政府がいきなり「交渉参加」を宣言し一気に突き進むなど、あってはなりません。

内需の拡大こそ

 野田首相は新政権発足にあたっての方針で、「高レベルの経済連携協定の実現に全力で取り組む」としました。“例外なき関税撤廃”が基本のTPPは「高レベル」の代名詞とみなされており、TPP参加のオーストラリアとの経済連携協定(EPA)を推進していることなどもみれば、野田政権もTPP参加に前のめりです。

 TPP参加は財界が要求しています。輸出大企業はモノやサービス、カネの流れを自由化し、国境による規制をなくして市場を一体化しようとしています。多国籍企業が市場統合を求めるのは、競争上から世界的な供給網を構築する必要があるなども理由です。

 菅政権下でTPP参加の方針をとりまとめた玄葉光一郎外相は、「アジア太平洋の内需は日本の内需と考えるべきだ」と言います。「アジアの外需を内需化する」という経団連の主張(「成長戦略2011」)とそっくりです。財界と野田政権がめざしているのは輸出拡大です。外需(=輸出)を「日本の内需化」などと言い換えても、日本経済が直面する重大問題をごまかすことはできません。

 内需拡大の重要性は、その大部分を占める家計消費にあります。日本が長い不況から脱出できないのは、輸出拡大に血眼の大企業がコスト削減を徹底した結果、給与水準でも雇用のあり方でも働く人の貧困化が進み、家計消費が冷え込んでいるためです。野田政権の輸出依存姿勢は、日本経済のゆがみを一段とひどくするものです。

 TPPに参加すれば、米国やオーストラリアなど海外から農産物が流入することから、日本農業は壊滅的な打撃を受けないではいません。農水省の試算では日本の食料自給率は39%から13%にも落ち込みます。農業に連なる食品加工や運輸など広範な産業も影響を免れず、地域経済も大きく破壊されます。これら産業から追い出される生産者は消費者でもあり、それが内需にどう影響するかも想像に難くありません。

 TPPは市場原理主義に基づく輸出国に有利な仕組みです。3年前の米国発の金融危機と世界不況は、弱肉強食の新自由主義による経済「グローバル化」に強い反省を迫っています。本来、経済協力は互恵が原則で、TPPとは相いれません。TPPに踏み出すことは強く批判されるべきです。

被災者を痛めるな

 大震災で大きな被害を受けた東北地方は食料生産拠点です。多くの被災者の生業(なりわい)である農水産業の復旧・復興は進まず、政府の責任が厳しく問われています。このうえさらに被災者を痛めつけるTPP参加を許すことはできません。政府が交渉参加を決める前に、TPP反対の世論を強めることがぜひとも必要です。





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