2011年9月26日(月)「しんぶん赤旗」
民主党税調の迷走
“庶民増税ありき”の議論
本当のムダに切り込まず
民主党税制調査会(藤井裕久会長)の「震災復興増税」議論が迷走しています。26日には党税調の総会が開かれ、役員会からまとめ案が提示される見通しですが、復興財源として消費税増税を求める声も根強くあり、紛糾も予想されます。そこにあるのは、“庶民増税ありき”の姿勢です。
民主党税調は、政府税制調査会(会長・安住淳財務相)が16日に示した11・2兆円規模の二つの復興増税案――(1)所得税と法人税、(2)これにたばこ税などを組み合わせる―を「たたき台」として議論しています。
ところがこの案に対し、党内から異論が噴出。「一番いいのは消費税。これから5%どうせ上がるわけで、練習だと思ってやればいい」と消費税増税をけしかける意見が出て、収拾がつかない状況になっています。
政府税調案には当初、消費税のみ3%増税する案も盛り込まれましたが、「消費税増税は社会保障との一体改革で」とする野田佳彦首相の指示で外された経緯があります。
財界に応える
党税調の古本伸一郎事務局長は22日の税調役員会後、記者団に対し、消費税を復興財源とすることについて「いまさら先祖がえりだ」と述べる一方、「非常に魅力的で、普遍的で、へだたりのない税だというのはみんな言っている」と未練を残しました。
「消費税なら3%上げれば1年半で8兆円の財源が出てくる。そういうことも考えてほしい」(米倉弘昌・日本経団連会長、「日経」21日付)という財界の意に応える議論がまかり通っているのです。
政府の法人税増税案にしても、一度、5%を減税した上で、減税の一部を3年間に限って増税するというもので、その間も実質的には減税になるというごまかしがあります。これも「法人税の純増税は絶対に認められない」(経団連)とする財界の要求を反映したもので、増税されるのは庶民だけです。
政府税調案を「たたき台」とする党税調でも、法人税減税は既定路線。出てくる意見は、相続税や消費税などの庶民増税です。
一方、デフレや円高を挙げて「こういう状況で増税の議論をすることが信じられない」などと庶民増税に反対している議員も党税調にはいます。しかし、財源として示しているのは「国債整理基金特別会計の剰余金」など、これまでの「事業仕分け」で財源を生み出せなかった“埋蔵金の活用”にとどまっています。法人税増税を拒否する点では、消費税増税派と変わりません。
消費税増税による財源確保の衝動が根強く残り、党内の議論が収束しない理由は、政府、民主党がともに本当のムダ―政党助成金や不要不急の大型公共工事、原発の建設・推進予算、法人税や証券優遇税制の「減税ばらまき」に切り込まず、“増税といえば庶民に”という呪縛(じゅばく)にとらわれているからです。
(竹原東吾)