2011年9月27日(火)「しんぶん赤旗」
陸山会事件 判決が指摘
「赤旗」スクープ 水谷1億円を認定
「いずれの事件も長年にわたる公共工事をめぐる小沢事務所と企業との癒着を背景とするもの」―。26日に判決の言い渡しが行われた民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体「陸山会」事件。東京地裁は元秘書の大久保隆規(50)、石川知裕(38)、池田光智(34)の3被告の一連の行為を厳しく批判しました。判決は、自らも同事件で強制起訴された小沢被告が今も明確に語っていない4億円への強い疑問が貫かれています。(矢野昌弘)
4億円 隠ぺいの意図
原資の追及を避けるため
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陸山会の2004年分の収支報告書に書かれた「借入先 小澤一郎 4億円 04年10月29日」の記載。
この「借入金」は、何を指すのかが、公判の大きな争点となっていました。
行動不可解
判決は、この記載をりそな銀行からの4億円だと認定。小沢被告からの現金4億円を記載したとする石川被告の主張を「不自然であり、(銀行からの融資を記載した)03年分の収支報告書の記載の体裁ともあわない」と退けました。
さらに判決は、小沢氏から借りた現金4億円を、石川被告が(1)五つの銀行に入金した後に一つの口座に集約した「分散迂回(うかい)入金」(2)土地の代金を払い終えたのに銀行から預金担保融資を受けたこと(3)土地の登記をあえて05年1月にずらした――不可解な行動を列挙。
この行動を「04年収支報告書に載ることを回避しようとする強い意思を持って、隠ぺい工作を行ったことが強く推認される」と断罪しました。
証拠と合致
判決は、「大久保、石川の両被告に加え、4億円を用立てた小沢自身ですら、原資については明快な説明ができていない」としています。
「しんぶん赤旗」日曜版が09年11月にスクープした胆沢ダム本体工事の受注をめぐって中堅ゼネコン水谷建設が小沢事務所に計1億円を渡したとする関係者の証言。
法廷での同社元社長の生々しい現金受け渡しの証言について、「他の水谷建設関係者の証言とも符合し、(受け渡し場所での)レシートなど客観的証拠とも合致しており、信用できる」と認定しました。
石川被告が隠ぺい工作に走った背景に、判決は、04年10月ごろに報じられた、小沢氏側が胆沢ダムの建設利権をめぐって金を受け取った疑惑があるとする記事にふれました。
石川被告が同年10月19日ころにこの記事を知り、直後の同月24日ごろに土地の本登記日の繰り延べを相談、さらに28日にりそな銀行に4億円の預金担保融資を申し込んだことを列挙。「マスコミから厳しい追及・せん索を受け、その原資や水谷建設からの献金等の事実が明るみに出る可能性があったため、4億円を隠ぺいしようとしたことが合理的に推認できる」としました。
共謀と故意
公判を通じて、大久保被告は陸山会の「名ばかり」の会計責任者だったと収支報告書の作成には関与していないと主張していました。
しかし判決は「遅くとも大久保被告は、石川被告の依頼に応じて、自ら本登記の繰り延べ交渉を行った時までには、4億円の隠ぺいなど、石川被告と意思を通じ合ったものといえる」と指摘。「明示的にせよ、黙示的にせよ、両被告人が意思を通じていた」と大久保被告の主張を退け、「共同正犯としての責任」を認めました。
また石川被告と池田被告による収支報告書の不記載や虚偽記載を故意の犯行だと認定しました。
公判で、石川被告らがたびたび主張した「身内の間におけるやり繰りに過ぎなかった」とする、収支報告書に記載しない、ずさんな資金のやりとり。
これについて判決は「実際に資金移動があったにもかかわらず、それとは異なる時期に記載することを許せば、政治資金の流れを恣意(しい)的に操作することも可能となりうるのであって、政治資金規正法がかかる解釈を許容しているとは考えられない」と批判しています。
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陸山会をめぐる動き
(肩書は当時)
【2009年】
3月3日 西松建設事件で、東京地検特捜部が小沢一郎民主党代表の大久保隆規公設第1秘書を政治資金規正法違反容疑で逮捕
24日 大久保秘書を起訴
【2010年】
1月15日 石川知裕議員と池田光智元私設秘書を政治資金規正法違反容疑で逮捕
16日 大久保秘書を同法違反容疑で逮捕
2月4日 石川議員ら3人を起訴。小沢元代表は嫌疑不十分で不起訴
4月27日 東京第5検察審査会、小沢元代表の起訴相当を議決
5月21日 特捜部、小沢元代表を改めて不起訴処分
9月14日 検察審、小沢元代表を起訴議決
10月4日 検察審が議決書を公表
【2011年】
1月31日 指定弁護士が小沢元代表を強制起訴
2月7日 石川議員ら3人、初公判で全面否認
6月30日 東京地裁、石川議員らの供述調書の大半を不採用決定
9月26日 石川議員らに有罪
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