2011年10月10日(月)「しんぶん赤旗」

TPP参加へ動き急

「戦略会議」最優先議題に

財界執念、米国も乗りこんで


 政府・民主党がTPP(環太平洋連携協定)交渉参加の動きを一気に強めています。米国などTPP加盟表明・参加9カ国が大枠合意を目指している11月のハワイでのアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議までに結論を出す狙いです。

 政府は7日、TPP交渉参加問題を協議するため、11日に経済連携に関する閣僚会合を官邸で開くと発表しました。

 これに先立ち藤村修官房長官は5日の会見で、「すでに議論は各関連の省庁の事務レベルでスタートしている」とした上で、政府としては「国家戦略的な新しい会議体の中の1パートとして、これを一番最初のテーマとして進めていく」と表明しました。経団連会長ら財界代表をメンバーにすえる「国家戦略会議(仮称)」を立ち上げ、TPPをいの一番の議題にするというのです。

 民主党政策調査会も4日の役員会で、TPPに関するプロジェクトチームを設置し、先に暴言で経済産業相を辞任した鉢呂吉雄氏を座長とすることを決めました。

会長が行脚

 政府の動きを加速させているのは財界と米国の圧力です。

 経団連の米倉弘昌会長はTPP交渉参加に向け、自ら地方の農業関係者を説得する行脚にでました。6日には北海道でJA北海道中央会などと意見交換し、「できるだけ早く交渉に入り、日本が参加する場合の条件を各国と折衝していくことが必要だ」と表明。「農業界を挙げ、全国一緒に反対していくことに変わりはない」(北海道中央会の飛田稔章会長)と反発を買いましたが、財界の執念を示しました。

 さらに経済団体は7日、経団連会館で米国の経済界と共同でTPPをテーマにシンポジウムを開催。出席した経済産業省の北神圭朗政務官(民主党衆院議員)は「TPPのルール作り参加に間に合う時期までに決断しないといけない」などと、財界要求に応える立場を見せました。

 一方、米側はキャンベル国務次官補を6日に日本に送り込みました。同氏は民主党の前原誠司政調会長、斎藤勁官房副長官、山口壯外務副大臣などと相次いで会談し、沖縄・米軍普天間基地「移設」問題などとともに、TPP問題で協議しました。

 キャンベル氏は会見で、「アジア太平洋地域のさまざまな問題を踏まえて同盟を前進させ、緊密な協力関係をつくらなければならない。われわれはこの文脈にもとづきTPP問題で協議した」と語りました。

“司令塔”で

 政府がTPP交渉参加にいかに前のめりになっているかは、国家戦略会議の最初の議題として位置づけていることで明らかです。

 野田首相は自身が国会で首相に指名された直後、組閣も終わらないうちに米倉経団連会長を訪ね、同会議の設置を約束するとともに経済界の協力を要請しました(9月1日)。その後、首相は所信表明演説(同13日)で、同会議が「国家として重要な政策を統括する司令塔の機能」を担うことを表明します。

 政府は現在、今週にも準備会合を開催する方向です。メンバーには野田首相や古川元久国家戦略相らの閣僚のほか、経団連や経済同友会など経済界代表、日銀総裁らが入る見込みです。

 財界主導の国家政策の「司令塔」といえば、小泉政権時代の経済財政諮問会議の姿がよみがえってきます。同会議は、社会保障費削減や労働法制の規制緩和など、財界のもうけ第一、国民生活破壊の路線をトップダウンで次々と敷きました。TPP参加を許さないたたかいは、同じ過ちを繰り返させないためのたたかいの意味も持っています。





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