2011年10月14日(金)「しんぶん赤旗」

厚労省 介護サービス削減検討

労働者の処遇維持の“条件”に


 厚生労働省は13日、2012年度以降も介護労働者の処遇改善策を続けるために、介護保険の利用料・保険料の値上げに加え、利用切り捨てによる給付削減も検討する方針を表明しました。同日の社会保障審議会介護保険部会で提案したもの。来年の通常国会に関連法案を提出する意向です。

 現在の処遇改善策は、旧自公政権が2009年度補正予算で時限措置の交付金として創設したもの。離職が相次ぐ介護労働者の賃金を月1・5万円引き上げる目的で、全額国費(3900億円)で介護事業所に交付してきました。

 厚労省はすでに、12年4月以降は処遇改善交付金を継続せず、介護報酬の引き上げで対応する方向を示していました。これ自体、国庫負担を減らし地方自治体と利用料・保険料の負担を増やすことを意味します。

 今回、厚労省は、処遇改善分は介護報酬の2%アップに相当し、公費1000億円(国と地方で折半)が必要になるという試算を提示しました。新たな財源策なしに12年度予算の概算要求に盛り込むことは「不可能」だとして、財源が確保できない場合は処遇改善策が継続できないことを示唆。財源確保のため新たに「重度化予防に効果のある給付への重点化」の名で、給付削減の検討を打ち出しました。「給付の重点化」はサービス利用の切り捨てにつながります。

 厚労省はこのほか、各医療保険が国に支払う介護納付金(40〜64歳の人が保険料として負担)について、各医療保険の加入者数に応じた現行の「人数割」から、加入者の所得に応じた「総報酬割」に変えることも検討課題にあげました。


医療・年金に次ぐ「一体改悪」

幾重もの公約違反

 医療(受診時定額負担など)、年金(受給額削減、支給開始先送り)に続いて、介護保険でも新たな改悪方向が打ち出されました。矢継ぎばやの社会保障改悪メニューは、民主党政権がすすめる「税と社会保障の一体改革」が、庶民増税と社会保障の連続改悪にほかならないことをはっきり示しています。

政権公約放棄

 民主党は2009年の政権公約(マニフェスト)に、12年には「介護労働者の賃金を月額4万円引き上げる」と明記していました。

 ところが、4万円アップは早々に放棄。それどころか、自公政権が処遇改善を求める強い声に押されてつくった処遇改善交付金(1・5万円の賃上げ)さえ廃止する方向を打ち出しています。

 交付金の代わりに介護報酬の増額で処遇改善を図るとしますが、そうした方法では、介護報酬を引き上げた分、報酬の1割を占める利用料や、給付費(報酬から利用料を引いた分)の5割を占める保険料も重くなります。全額国費である交付金を廃止して国の負担を減らし、地方自治体と国民にかぶせるやり方です。

 そのうえ今回打ち出したのが、処遇改善のために介護報酬を上げる財源として、利用者へのサービスを削ることです。賃金4万円アップに取り組まないだけでなく、自公政権時代の処遇改善策の維持とひきかえに高齢者への介護をとりあげる―関係者の願いを幾重にも踏みにじる公約違反です。

給付の縮減も

 厚労省が財源確保策として示した「重度化予防に効果のある給付への重点化」の具体的な中身は、まだ明確ではありません。しかし「重点化」以外の部分を切り捨てるということであり、「保険あってサービスなし」と批判される現行の給付をさらに縮減させる狙いは明らかです。

 厚労省は今回の財源確保策を打ち出した理由として、政府・与党の「税と社会保障の一体改革」方針をあげました。社会保障の「機能の充実」は「給付の重点化」と「同時に行う」という考え方が原則だ、というのです。医療分野でも、高額医療の患者負担軽減を外来患者の負担増とセットで行うなど、同じ原則が貫かれて大問題となっています。

 「消費税を増税して社会保障をよくする」という政府の言い分は虚構にすぎないことを証明するものです。 (杉本恒如)


 介護報酬 介護サービスを提供した事業者に支払われる報酬です。サービスごとに公定価格が決められ、その1割が利用者負担になるため、介護報酬引き上げは利用者負担増につながります。





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