2011年10月16日(日)「しんぶん赤旗」

主張

九電最終報告

「やらせ」はびこる癒着を断て


 思わず目と耳を疑わせるものでした。九州電力玄海原発の再稼働についての公開番組での「やらせメール」をめぐる同社の最終報告が、第三者委員会の示した古川康(ふるかわやすし)佐賀県知事の発言が「発端」との指摘を無視し、記者会見で真(まな)部(べ)利(とし)応(お)社長が第三者委を攻撃、そのうえいったん表明していた辞意まで撤回したのです。あれほど社会的な批判をあびた「やらせ」を反省せず、知事をかばう姿勢だけが露骨です。真相と責任の徹底追及とともに、「やらせ」をはびこらせる癒着の構造そのものの根を断つことが不可欠です。

世論を偽装する犯罪行為

 問題になった「やらせメール」は、6月26日に放送された経済産業省主催の公開番組で、九電が社内や協力会社に指示して賛成の立場からメールやファクスを送らせたものです。関係者の告発で「しんぶん赤旗」がスクープし、国会でも日本共産党の笠井亮議員が追及して大問題になりました。

 玄海原発は、東京電力福島第1原発の事故のあと再稼働する、最初の原発になるかどうかが注目されたものです。九電が設置した第三者委は、九電の責任とともに、古川知事が九電の役員らに賛成意見を出すよう発言したのが「決定的」な影響を与えたと指摘しました。その報告を受けた最終報告が、肝心要ともいうべき第三者委の指摘を無視するのはまったく道理に合いません。最終報告を受け取った枝野幸男経産相も、「公益企業として問題」と批判しました。

 九電による「やらせ」が問題になったあと他の電力会社でも「やらせ」が相次いで発覚し、経産省の第三者委は原発を規制する安全・保安院や資源エネルギー庁が指示して「やらせ」が行われていたことまで明らかにしました。北海道電力でも第三者委が、泊原発のプルサーマルについての公開シンポで、北電の組織的な「やらせ」と、北海道庁の関与を認める報告書を出しています。

 原発の建設や点検後の再稼働、危険なプルトニウムを燃料に使うプルサーマルなどについて、国や自治体などが主催し住民の意見を聞くために開かれる公開シンポは、住民の安全のために重要なものです。電力会社の「やらせ」が繰り返されるのは、世論を偽装し、原発推進をゴリ押しする犯罪行為であり、責任は重大です。

 しかも、シンポなどを主催する国や自治体が「やらせ」を指示したり、手を貸したりするのは、規制・監督する行政機関としての役割を投げ捨てるものです。住民の安全より原発推進を優先させているのは明らかであり、その責任は徹底追及されるべきものです。

政官業の癒着を浮き彫り

 「やらせ」がまかり通る背景に行政当局や政治家、電力会社による、文字通り政官業の癒着があるのは明らかです。今回問題になった北電や九電でも、知事など立地自治体首長への献金や選挙の応援、親族企業への発注などが表面化しました。癒着を徹底究明し、その根を断たない限り、「やらせ」を一掃することはできません。

 かつて“献金御三家”といわれた電力会社はいまも役員などの名義で政治家への献金やパーティー券購入を続けています。電力会社への「天下り」も後を絶ちません。「やらせ」を生む癒着は、徹底して根絶やしにすべきです。





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