2011年10月26日(水)「しんぶん赤旗」

主張

富の独り占め

「99%」の連帯で経済の転換を


 ニューヨークのウォール街で始まった貧困と格差に反対する運動が、アメリカ全土から世界に広がっています。

 ウォール街のデモで掲げられた要求は、失業問題、高い学費や家賃、平和や環境の問題などさまざまです。共通点は「1%による腐敗と私利私欲をもはや容認できなくなった99%がわれわれだ」ということです(アメリカのニュース専門放送局CNNの報道)。

 日本でも、暮らしと経済は共通の問題に苦しめられています。

アメリカ以上の優遇で

 2008年の金融危機に際して米政府は大銀行・大企業に巨額の公的資金を投入しました。その大銀行・大企業の経営者が何億円もの報酬を受け取っています。他方で失業率が高止まりし、生活必需品の値上がりも加わって、庶民の困窮が加速しています。

 いまやアメリカでは上位1%の大資産家が国民の所得の25%を占めています。ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授は貧富の格差の深刻さを指摘し、「背景となっている問題は多くの国で共通している」とのべています。

 日本の富裕層はアメリカ以上に優遇されています。富裕層の所得の大部分を占める株式の譲渡益や配当にかかる税率が日本では異常な低さです。1億円の株式譲渡益にかかる実効税率はアメリカ26・4%に対して日本はわずか10%にすぎません。

 日本の富裕層の実態はあまり知られていません。ある調査では一時的な「成金」を除いた「ウルトラリッチ層」は人口の0・02%、保有する金融資産は約50兆円、国の税収に匹敵する規模に上るといいます(富裕層ビジネス研究会)。この資産に何倍もの「レバレッジ」(信用取引で元手以上の資金を動かすこと)をかけて運用しています。利益は想像するのも難しいほどの巨額ですが、払っている税金は庶民の預貯金利子にかかる20%の半分、たったの10%です。

 今年4〜6月期の資本金10億円以上の大企業の内部留保は、08年の世界金融・経済危機前の最高額を2兆円も上回る257兆円で、史上最高に達しました。資本金10億円以上の大企業は全体の企業数の0・32%を占めているにすぎません。ソニーや日産の会長の年間報酬は、それぞれ9億円、8億円を大きく超えています。

 一方で、この時期に、働くものの所得(雇用者報酬)は、総額264兆円から254兆円へと10兆円も減らされました。非正規雇用を使い捨てにし、下請け単価を買いたたいて、大企業が富を独り占めにしている実態が浮き彫りになっています。

異常な不公平の是正を

 民主党政権はわずか10%という株式配当・譲渡益課税の優遇措置の延長を決めています。大震災の復興にも社会保障にも財源が必要だというのに、財界の要求に従って法人税の大幅減税を計画し、所得税や消費税の庶民増税をやろうとしています。こういう政治を根本から改めて、異常な不公平を是正することが求められます。

 「1%による腐敗と私利私欲をもはや容認できなくなった99%がわれわれだ」―。上位1%のための経済システムと政治を、圧倒的多数の99%の国民の連帯で変えていこうではありませんか。





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