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2020年1月3日(金)

20年 内政展望

「全世代」を口実に高齢者負担増

貧困・格差なくす政治に転換へ

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(写真)75歳以上の医療窓口負担2倍化などに反対し座り込む人たち=2019年12月11日、厚生労働省前

 安倍政権は、政権復帰後の7年間で、消費税の税率を現在の10%へと2度にわたって引き上げました。合計13兆円もの大増税です。「社会保障のため」と言いながら、年金も医療も介護も生活保護も改悪し、合計4・3兆円もの負担増と給付削減を国民に押し付けました。格差と貧困に追い打ちをかけています。

 安倍政権を倒し、野党連合政権への道をひらくことは、国民の生活を守り、暮らし第一の政治を築く上でも喫緊の課題になっています。

75歳以上2割

 安倍政権がいま力を入れているのが、「全世代型社会保障への改革」です。安倍晋三首相が議長を務める全世代型社会保障検討会議が昨年12月にまとめた中間報告では、現在の社会保障は「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」だなどと世代間対立をあおりながら、高齢者に負担増や就労を求める姿勢を鮮明にしています。

 医療費抑制のため、団塊の世代が「後期高齢者」とされる75歳以上になり始める2022年に間に合うよう、現在原則1割の75歳以上の医療窓口負担に2割負担を導入する方針を明記しました。対象は「一定所得以上」としています。具体化はこれからで、政府は夏に検討会議の最終報告をまとめた上で、秋の臨時国会にも法案を提出する方針です。

受診抑制進む

 高齢者には、複数・長期・重度といった病気の特徴があります。

 このため、75歳以上の高齢者の自己負担額は、窓口負担が原則1割の現在でも、3割負担の現役世代より重くなっています。2割負担を導入すれば現在でも深刻な受診抑制の拡大は避けられません。

 2割負担の導入は、後期高齢者医療制度が08年に発足した際、当時の麻生太郎首相(現副総理兼財務相)が「自己負担を現役世代より低い1割負担とするなど高齢者が心配なく医療を受けられる仕組みだ」と売り込んでいたことにも真っ向から反します。

 窓口負担増には、国民の強い批判があります。昨年6月には、全国後期高齢者医療広域連合協議会からも、「必要な医療を受ける機会の確保」という観点から「現状維持を基本」とするよう求める要望書が出されていました。

 負担増の阻止とともに窓口負担自体を問い直すことが重要です。欧州諸国やカナダでは、公的医療制度の窓口負担はゼロか、あっても少額の定額制です。

真の応能負担

 安倍政権は、75歳以上への2割負担導入を「能力に応じた負担だ」と強弁しています。

 しかし、「現役並み所得」とされた人はすでに3割負担です。保険料は75歳以上も年金収入などに応じて負担しています。保険料は改定のたびに上昇傾向の一方、低所得者の軽減措置は次々撤廃されています。負担に耐えられず保険料を滞納する75歳以上は年間約20万人に達し、滞納を理由に財産を差し押さえられた人も増加の一途です。

 年金が実質目減りする中、医療費をどうまかなうか日々苦しんでいるのが、圧倒的多数の高齢者の現実です。「応能負担」を言うなら、約456兆円という過去最高の内部留保をため込む大企業や大もうけしている富裕層に、税と保険料で、応分の負担を求めるべきです。

 大企業・富裕層優遇税制の是正など、「能力に応じた負担」の原則に立って税制を改革すれば、大型公共事業や軍事費などの歳出の浪費をなくすこととあわせて当面17・5兆円、将来的には23・5兆円の財源を確保できます。

99%のために

 安倍政権は、国や大企業などの責任は後退させながら、社会保障は“全世代が支え合うべきだ”などとして、今月から始まる通常国会に介護や年金、高齢者雇用の制度などを改定する法案を提出しようとしています。

 負担増と、「マクロ経済スライド」という年金自動削減の仕組みは維持したまま、少しでも多くの国民に「支えられる側」から「支える側」に回るよう強いるものです。

 必要なのは、1%の富裕層や大企業のための政治ではなく、99%の国民のための政治に切り替えることです。昨年の参院選に向けて野党が一致した「生活を底上げする経済、社会保障政策を確立し、貧困・格差を解消する」政治への転換が求められています。


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