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2020年1月7日(火)

主張

「基本合意」10年

障害者の人権保障の拡充こそ

 障害者自立支援法は違憲と裁判に訴えた訴訟団と国が和解の「基本合意」を結んで7日で丸10年です。基本合意文書は、同法が障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことを心から反省すると明記しました。この10年、政府が社会保障改悪を進める中でも、基本合意に基づく運動を力に障害福祉施策を一定前進させたものの、まだ抜本的な改善はできていません。政府には、障害者が社会の対等な一員として安心して暮らせるよう施策充実への責任があります。

怒り広げた「応益負担」

 2006年4月施行の障害者自立支援法は、障害者が着替える、食べる、排せつするなど生きるために必要な支援に対し、原則1割の利用料負担を強いました。サービス利用量に応じて自己負担を求める「応益負担」は、無理心中が相次ぐなど障害者や家族の暮らしへの大きな打撃となりました。

 全国の障害者71人が「これでは生活できない」と訴訟の原告として立ち上がりました。障害が重ければ重いほど費用負担が強いられる障害者自立支援法は生存権を保障した憲法に違反するなどとして、国などを相手にたたかいました。国は10年1月7日、訴訟団と基本合意し、自立支援法廃止と新法制定を約束しました。

 基本合意に基づき10年4月から、低所得世帯は利用料負担がなくなりました。一方、基本合意は収入認定の際、障害児者本人の収入だけで認定するよう求めているにもかかわらず、いまだに世帯で認定します。そのため配偶者に収入がある場合や障害児には利用料負担が発生しています。ただちに改めるべきです。

 基本合意は、新法制定では、「憲法等に基づく障害者の基本的人権の行使を支援するものであることを基本」にするとしています。国は、障害者・家族の参加する会議で制度改革を進め、新法の土台となる「骨格提言」をまとめました。しかし、12年6月に成立した「障害者総合支援法」は、自立支援法の微修正にとどまりました。障害者手帳を持たない難病などの患者も障害福祉サービス利用の対象とした改善点もありますが、とても抜本改革とはいえません。

 65歳になった障害者に障害福祉サービス利用から介護保険への移行を求める問題(介護保険優先原則)をめぐっては、広島高裁が18年12月、岡山市を訴えた障害者に勝訴判決を出しました。勝訴理由として「基本合意文書をもって国が自立支援法7条の介護保険優先原則の廃止を検討することを約束したこと」を示しました。基本合意が力を発揮したのです。安倍晋三政権が社会保障改悪を重ねる下で、障害福祉分野の施策を後退させないためにも、基本合意の持つ意義は重要になっています。

安倍政権は声受け止めよ

 日本社会は、障害者権利条約が強調する「障害のある人とない人との平等性」という点からは程遠いと言わざるを得ません。

 訴訟団が基本合意を交わしたのは、自立支援法廃止を公約にした民主党政権でした。安倍政権になってからも訴訟団と国との定期協議は重ねられ、今年3月に11回目が予定されています。安倍政権は訴訟団の声を真摯(しんし)に受け止めるべきです。基本合意に基づく福祉法制の実現こそが、障害者の人権保障のための施策となります。


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