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2020年2月15日(土)

検事長の定年延長問題

“安倍人事”のため「法の支配」を破壊

 安倍晋三首相は、検察庁法と国家公務員法の関係について政府解釈を変え、「検察官の勤務延長に、国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」としました。これまで認められなかった検事の定年延長を認めるための「解釈変更」です。「今般」と明言しており、東京高検の黒川弘務検事長の定年延長の決定(1月31日)に際してのものです。

 1981年の国家公務員法改正で公務員の定年制度(延長含む)が盛り込まれた際の政府解釈では「今回の定年制(延長を含む)は(検察官に)適用されないことになっている」とされていました。(同年4月28日、衆院内閣委員会)

 12日の衆院予算委員会で人事院の松尾恵美子給与局長は、検事の定年延長は認められないとの解釈について、「現在まで特に議論はなかったので、(従来の)解釈を引きついできた」と述べました。この答弁について「いつから変わったのか?今回の黒川氏の人事に関してか」との本紙の取材に人事院の担当者も「そうだ」と答えています。まさに自分に近い人物への人事上の優遇を認めるために法解釈をねじ曲げ、「法の支配」が破壊されています。政治の私物化の根底に人事の私物化があることも改めて鮮明に浮かび上がります。

 法律の文言の範囲内で法解釈の変更がありえないとは言えません。しかし、法律の条文と結びついて40年近くも法解釈が定着し、一定の法秩序を形成するに至った場合、法解釈の変更によって「秩序」を変えることは適当ではありません。国会の法律改正によるべき問題です。また解釈変更を行うにしても、客観的な社会情勢の変化に伴う必要性があることは当然で、時の政権の恣意(しい)的な意向で法解釈を変更することなど許されません。

 今回の解釈変更は、「解釈」の名による新たな立法であり、国会の立法権の侵害であるとともに国民主権を侵害するものです。

 また、検察官に定年延長が認められなかったのは、検察官が犯罪の捜査や公判の維持など準司法作用を担当することから、人事に内閣が関与し政治的中立性を害することは妥当でないからです。その趣旨からも今回の法解釈の変更は、幾重にも「法の支配」を破壊する野蛮な行為です。

 安倍政権は2014年7月の「閣議決定」で集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を強行しました。国会も国民の意思も無視し、一内閣の一存で憲法の内容を変更するという立憲主義破壊を強行した安倍政権は、底が抜けたように近代の政治原則を踏み外し続けています。「まともな政治」を取り戻すためのたたかいは正念場です。(中祖寅一)


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