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2020年2月29日(土)

主張

全国一律休校要請

唐突な方針転換は混乱広げる

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、安倍晋三首相が、全国すべての小中高校などに対し3月2日から臨時休校を要請すると突然表明し、国民の不安と批判を広げています。対応にあたる教育現場や自治体では大混乱を招いています。休校期間は春休みまでで、約1カ月もの長期にわたります。子どもの居場所や学ぶ場の確保、働いている親の休業問題など課題は山のようにあるのに、首相は具体的な手だてを明確に示していません。しかも2日前に決定された基本方針からの転換だというのに、経過の説明もありません。一律押し付けは撤回すべきです。

専門家の会議を開かずに

 小中高校と特別支援学校の休校要請は、安倍首相が27日の新型コロナ感染症対策本部で「多くの子どもたちや教職員が、日常的に長時間集まることによる感染リスク」にあらかじめ備えるとして表明したものです。卒業式については、必要最小限の人数に限っての開催などを提起しました。

 全国一律の休校要請は、25日に政府が決定した基本方針に盛り込まれていません。しかし、首相の口からは、なぜ判断を変えたのかについての説明はありません。政府が設置した「専門家会議」のメンバーから「感染が起きていない地域で同じ対応をとることにどれほどの効果があるかはわからない」「感染症対策として適切かどうか一切相談なく、政治判断で決められたものだ」などの指摘が出ていると報道されています。

 全国一律の休校要請という極めて異例の方針が、専門家会議での議論も経ないで決められたことは、あまりに問題です。社会全体に大きな影響を与える方針が、どのような根拠にもとづいて決定されたのか、首相には国民に詳しく説明する責任があります。

 唐突な方針転換に、低学年の子どもをもつ働く親たちから悲鳴が上がっています。子どもたちの戸惑いも広がっています。学童保育は開所するとしていますが、学童保育を利用していない子どもは数多くいます。首相は、行政機関や民間企業に親が休みやすい環境整備を求めましたが、すべての人が保障される状況はありません。

 雇用が不安定な一人親などの場合は、子どもの休校にともなう欠勤や早退などで不利益を受けない施策などが急務ですが、首相の表明は不安にこたえていません。

 地域や学校の実情を踏まえ、子どもの感染症対策に力を注いできた教育現場などからは、一律の休校方針に「現場をかえって混乱させている」と批判が上がっています。子どもの居場所が見つからず休まざるをえない医療従事者が出ることで医療機関の体制が取れなくなる事態も起きつつあります。医療体制の拡充・強化が必要な時だというのに深刻な逆行です。

国民の理解と納得不可欠

 感染拡大への対処という命と健康に関わる大問題で、一方的な方針転換をいきなり行うのは乱暴です。場当たり的やり方は、国民の不信を増幅させるだけです。

 いま重要なのは、専門家を国会に招致し、科学的知見を共有し与野党を超えて抜本的打開策に取り組むとともに、思い切った財政措置です。正確で透明性のある情報提供は不可欠です。国民の信頼と理解・納得がなければ、真に有効な感染症対策は実行できません。


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