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2020年3月12日(木)

主張

「コロナ」特措法案

人権制約の歯止め曖昧すぎる

 安倍晋三内閣が新型コロナウイルス感染症への対応として国会に提出した新型インフルエンザ特別措置法(特措法)改定案が、衆院内閣委員会でわずか3時間の質疑で可決されました。改定案は、首相が「緊急事態宣言」を出せば国民の基本的人権を広く制約することを可能にする重大な内容を含んでいます。それなのに、極めて短時間の審議で委員会採決を行うのはあまりに拙速です。安倍首相自身、現在は緊急事態宣言を出す状況ではないと認めており、改定案の必要性はどこにもありません。

限定のない「おそれ」

 改定案は、2012年に成立した新型インフル特措法の対象に、新型コロナを加えるものです。「国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれ」があり、「その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがある」という要件に該当した場合、首相は緊急事態宣言を出します。「おそれがある」という発令要件は非常に曖昧で、歯止めがありません。

 首相が緊急事態宣言を出す際、専門家からの意見聴取を義務付けていないことも大きな問題です。

 緊急事態宣言が出れば、憲法で保障された集会、表現、移動の自由や財産権などに大きな制約を課すことができるようになります。

 首相による緊急事態宣言を受け、都道府県知事は、住民に外出の自粛を要請することができます。また、多数の人が利用する施設の使用やその施設を使っての催し物の開催を制限・停止するよう要請・指示できます。

 外出の自粛、施設の使用や催し物の制限・停止の期間と区域は知事が決めます。対象となる施設については政令で定めます。現行法に基づく政令で定められている対象施設は、学校、保育所、介護老人保健施設、劇場・映画館、集会場・公会堂、展示場、百貨店・マーケット、体育館・プール、図書館、理髪店、学習塾など多岐にわたります。必要以上に私権が制限される懸念は拭えません。

 財産権に深く関わる問題もあります。都道府県知事は、臨時の医療施設を開設するため、土地、家屋、物資を所有者の同意を得ずに使用することもできます。運送業者には物資や資材の輸送を、医薬品や食品の生産・販売業者らには売り渡しを要請できます。売り渡しの要請に応じない場合、強制収用も可能です。医薬品や食品の保管を命じることもでき、従わない場合は罰則もあります。

 緊急事態宣言の下で、「指定公共機関」であるNHKに対して首相が「必要な指示」を行うことができる規定もあり、国民の知る権利が脅かされる危険もあります。

首相権限に不安や懸念

 安倍首相は、新型コロナ対策で、全国の小中高校などの一律休校の要請や、中国、韓国からの入国制限措置の強化を、専門家の意見を踏まえた科学的根拠に基づかず、政治的な判断で行ったことを認めています。検察官の定年延長問題をはじめ法律の恣意(しい)的な解釈も繰り返しています。

 そうした首相に緊急事態宣言を出す権限を与えることに国民の懸念や不安の声が広がっています。安倍首相の下で国民の人権制限を可能にする新型インフル特措法の改定を認めることはできません。


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