日本共産党

2003年1月23日(木)「しんぶん赤旗」

宮本議員質問に首相

4兆円負担増

政策破たん示す答弁撤回

経済への影響は口つぐむ


 小泉首相は二十二日の参院本会議で、宮本岳志議員の追及で、日本共産党の指摘する四兆円の国民負担増が「過大」であるかのように決めつけた前日の衆院本会議での答弁の撤回に追い込まれました。

 小泉首相が二十一日の吉井英勝衆院議員ヘの答弁で、負担増が「過大」だとする根拠としたのは、年金の給付削減額でした。政府は来年四月から年金給付のうち、物価下落分をカットすることを来年度予算案にもりこみました。物価スライド凍結の解除による給付カットで、財務省は過去四年分の物価下落(3%程度)をすべて削減する「完全実施」を求めましたが、世論の反発を恐れた与党内の調整で、二〇〇二年の下落分(0・9%〜1%)だけとなったものです。

 1%として約四千億円の給付削減になり、これに医療、介護、雇用、庶民増税を含めて四兆円の負担増・給付減にもなります。これを小泉首相は、四年分の物価下落を前提にした試算だと攻撃しました。

 官僚答弁をうのみにした、いいかげんな答弁にたいし、宮本議員は財務省試算もまじえて負担増の内訳を示し、合計四兆円は「子どもでも計算できる」と質問。首相は「過大に見ている」との反論を引っ込めざるをえなかったのです。

97年の負担増不況の引き金

 医療改悪、消費税増税など九兆円を国民に求めた九七年の負担増は、いまの大不況の引き金となりました。社会保障負担増は、家計消費に直結し、需要を冷やして不況を深刻にするため、負担増の影響は経済政策を見通すうえで欠かせません。

 小泉首相みずから議長を務める経済財政諮問会議で、社会保障の負担増が経済に与える影響は重大テーマとなりました。昨年十一月の会議で民間議員四氏が、「日本経済の現況と政策対応のあり方」と題した文書を提出。対応の基本にかかわる問題として、負担増・給付減の影響額を試算しています。

 この試算では、サラリーマン本人三割負担など医療改悪による負担増として一兆五千億円程度をはじめ、雇用保険料の引き上げ、年金給付減(一年間の物価下落分)を合わせた社会保障負担増は二兆二千億円と試算。日本共産党の試算とほぼ同額となっています。

諮問会議議員影響を認める

 この試算をもとに諮問会議の民間議員は「(景気への)マイナス圧力になることは否定できない」「このマイナスの下押し要因を政策で押し戻したいということだ」(吉川洋東大大学院教授)とのべています。この場にいた小泉首相が“どのような試算であれ、経済に与える影響を議論すること自体、適切でない”などとのべた形跡は議事録にはありません。

 二十一日からの各党代表質問でも、負担増問題は論戦の焦点となっています。二十二日の参院本会議に立った自民党の尾辻秀久(元財務副大臣)は「国民が消費に慎重になっているのは、年金、医療等について不安を持っていることにある」とのべました。

 それでもなお首相は、「どのような試算であろうとも」負担増のみに注目し、「これをもとに経済に与える影響を議論すること自体、適切ではないと考える」と繰り返しました。

 負担増の事実を認めながら、経済への影響を議論すること自体が不適切などという首相答弁は、経済の中心問題で説明不能となっている小泉「改革」の破たんをみずから示したものです。(斉藤亜津紫記者)


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