2003年1月23日(木)「しんぶん赤旗」
<問い> 擬似裁量労働制がサービス残業の温床になっているそうですが、どういうことですか。(東京・一読者)
<答え> 裁量労働制とは、実際に何時間働いたかに関係なく、労使協定で定めた時間だけ働いたとみなす制度です。仕事の進め方などを「労働者の裁量」にゆだねる体裁をとりますが、所定労働時間ではできない仕事がおしつけられ、サービス残業を強いられます。
裁量労働制は一日八時間労働の原則を崩すため、導入するには一定の要件が必要で、正式に導入している企業はまだ限られています。ところが多くの職場で法律要件を満たさない擬似裁量労働制が導入され、サービス残業の温床となっています。月二十時間程度の残業手当を一律支給し、労働時間の把握はせずに長時間労働させていたため、多くのニセ裁量労働制が労基署の是正指導を受けました。
労働基準法は一九八七年と九八年に改悪され、「専門業務型」(第三八条の三)と「企業業務型」(第三八条の四)の裁量労働制が導入されました。しかし「専門業務型」裁量労働制を採用できるのは、研究開発など厚生労働省の省令で定める十八業種に限られます。ホワイトカラーを想定した「企画業務型」裁量労働制も、▽労使同数の労使委員会を設立▽対象業務・対象労働者・みなし労働時間などの決定は同委員会の全員一致が必要▽労働者本人の同意が必要―などの要件があるために、多くの職場では簡単に導入できません。国民と日本共産党の反対運動でもりこまれた「歯止め」です。
他方、政府・財界は、こうした「歯止め」もとりはらい、ホワイトカラーを労働時間法制から除外することをねらっています。国民の監視と反対世論・運動の結集が必要です。
なお、昨年二月の厚労省通達は、「裁量労働制対象労働者」の過重労働防止についても、事業者の責任を指摘しています。裁量労働制でも長時間労働の放置は許されません。
(博)
〔2003・1・23(木)〕