2003年1月25日(土)「しんぶん赤旗」
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「もっと大きなことを考えないといけない。この程度の約束を守れなかったのは大したことではない」
テレビ中継された二十三日の衆院予算委員会で小泉純一郎首相は、国債発行額を三十兆円以内に抑えるなどの公約について、こんな投げやりな態度で答弁しました。委員会終了後、首相は、「三十兆円枠を守るのと経済情勢をみて柔軟に対応するのと、てんびんにかけてどちらがいいのか。許容範囲だ」と弁明。自民党の山崎拓幹事長も、「三十兆円枠は財政規律を守るための一つの目標だ。公約と取るような数値設定ではない」と公約だったことさえ否定しました。
しかし、首相の「大したことない」答弁は、“口がすべった”とか“失言”ということではすまされない、重大な内容をはらんでいます。
もともと「国債三十兆円枠」は、小泉首相が一昨年四月の自民党総裁選出馬にあたって公約したもの。小泉政権発足にあたっての自民、公明、保守の「三党連立政権合意」で、「財政健全化への第一歩となるよう、国債発行を三十兆円以下に抑制することを目標とする」と明記するなど、小泉政権の経済財政運営の「金看板」としてきました。
首相は就任から昨年までの所信表明、施政方針演説で繰り返し「三十兆円枠堅持」と表明し、「この方向に対して多くの国民は期待を寄せていると思うんです。その方針が大事なんですよ」(二〇〇二年一月二十四日の衆院予算委員会)と、国民との関係を持ち出して豪語したのです。
それをいまになって、「この程度」などということ自体、国民を愚ろうするものです。
公約した当事者が、いとも簡単に公約を破って平然とするなら、国民はいったい何を信頼すればいいのか。政治家の言葉は重いはず。まして、公約を破っておいてそれを批判されると「大したことない」と開き直るのでは、政治の信頼は地に落ちます。国政を預かる首相が、公約に対して「この程度」の認識しかもちあわせていないとすれば、それだけで首相失格というべきです。
三十兆円枠そのものについていえば、ムダ遣いの削減ではなく、「財政危機だから」との理由で社会保障の負担増をはじめ国民生活向け予算の削減のテコとして使われただけでした。その結果、いっそう個人消費を冷え込ませて不況が深刻になり、今年度当初予算比で二・五兆円の税収不足に。そのため新たに五兆円の国債発行を行おうという悪循環に陥り、すでに公約破たんは明りょうです。
来年度予算案では三十兆円枠はボロぞうきんのように捨てられ、実に国債発行額は三十六兆円と史上最悪の水準になりました。小泉「改革」の破たんの象徴でもあります。
首相自身、「確かに、その通りやっていないということになれば約束は守られない」(二十三日)と認めざるをえませんでした。
小泉首相の「大したことない」答弁は、こうした破たんに直面して、最悪の開き直りで責任逃れをはかろうというもので、無責任のきわみです。(高柳幸雄記者)
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