2003年1月30日(木)「しんぶん赤旗」
日本共産党の西山とき子、大門実紀史両議員は二十九日の参院予算委員会で、不良債権処理の加速策が中小企業の貸しはがし倒産をあおっている実態を示して追及しました。
西山 今、現場でどういう事態がおこっているのかご存じか。今はもう“貸し渋り・貸しはがし”よりもっとえげつない“貸しえぐり”という言葉が流行している。
平沼経産相 中小企業に対する金融情勢は非常に厳しいとの認識はもっている。
西山氏は、小泉首相が経済財政諮問会議で、社会問題にまでなっている貸しはがしの事実を否定する発言(別項1)をおこなっていることについて、現場の認識とあまりにズレていると政府の認識をただしました。西山氏が、現場では“貸しえぐり”なる言葉が流行する状況を紹介すると議場からは、「オー」というどよめきが起こりました。
平沼経産相は、「小泉首相の発言は全体のなかで、一方(借り手)だけに耳を傾けないで、(貸し手の立場も)両方、聞けというニュアンスだった」と弁明しましたが、貸しはがしが激化しているという事実は認めざるをえませんでした。
西山氏は貸しはがしの影響として、老舗企業の倒産が民間調査で過去最高になっていることを指摘しました。
西山 高い技術力や信用力で地域経済を担ってきた老舗企業の倒産が日本経済の発展にどれだけの影響を及ぼすのか認識しているのか。
平沼 老舗企業は地域の文化、経済の屋台骨を支える企業なので大切にしていかないといけない。
西山氏は、科学計測機器メーカーとして有名な堀場製作所の社長の発言(別項2)を紹介。高い技術力が日本の最先端技術を生み出す基盤にもなっていることを指摘しながら、「不良債権処理の加速策のもと、老舗企業などの技術や人材を評価せずに、貸しはがしで倒産に追い込めば、将来の日本のものづくり技術を失うことになる」と批判しました。
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大門氏は、主要行に不良債権処理を迫りながら、中小企業への貸し出しを増やせという金融庁のやり方は「矛盾している」と批判しました。
自己資本比率の表式では、不良債権処理をやれば、処理損が出て分子が小さくなります。一方、貸し出しを増やせば、分母が大きくなります。
大門 どうやったら不良債権処理を加速しながら、貸し出しを増やせるのか。そんな手品みたいなことできるわけがない。
竹中金融経済担当相 銀行はプロフェッショナル(専門家)なのだから、(中小企業貸し出しの証券化など)いろいろ金融の手法も考えられる。
大門 私は四大メガバンクの本店担当者にヒアリングをしたが、口をそろえていうのは、金融手法でやるのは限界だということ。結局、貸し出しそのものを減らすしかないということをいっている。
実際、主要行は昨年四月から九月の半年間で二十五兆円の資産圧縮をしています。大門氏は、「(金融庁の指導下では)銀行だって中小企業に貸したくても貸せない状況になっている。不良債権処理という無理な加速策をやめない限り、“貸しえぐり”という状況はなくならない」と批判しました。
(別項1)小泉首相の経済財政諮問会議での発言 (ある信用金庫から聞いた話では)資金は十分あると言っていた。国会で野党が「貸してくれない」と主張しているが、そんなことはなく、良いところにはたっぷり貸しているということだった。野党やマスコミのいう「貸しはがし」などにのせられてはいけないと忠告された。
(別項2)堀場製作所の堀場雅夫社長の発言 セラミックは清水焼から、IC産業は京友禅の製版技術を、私どもや島津(製作所)さんは京仏具の金属加工、表面加工の能力を生かしたものなんです。三百年、四百年と積み上げてきた伝統産業の技術力は世界レベルです。そのベースの上に新しい産業へと乗り換えていくわけです。