日本共産党

2003年2月1日(土)「しんぶん赤旗」

首相の施政方針演説

「改革」の成果語れず

他人の業績並べ国民には人生訓


 「恐れず、ひるまず、とらわれず」「改革なくして成長なし」など小泉語≠ちりばめた就任直後の所信表明演説から一年九カ月。二度目の施政方針演説から、小泉内閣のいまを読み解くと−−。(深山直人記者)


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衆院本会議で施政方針演説する小泉首相=31日

「途半ば」と破たん認める

 「改革は途(みち)半ばにあり、成果が明確に現れるまでには、いましばらく時間が必要です」

 一年前の施政方針演説で首相は「平成十五年度(二〇〇三年度)から改革の成果を国民に示し、平成十六年度(〇四年度)以降は、民間需要主導の着実な経済成長が実現されることを目指します」と大見えをきりました。

 それを「しばらく時間が必要」というのは「構造改革」路線の破たんを自ら認めたものです。

 国債発行も一年前は、本予算では「三十兆円」内に収めたことで、「将来の財政破たんを阻止するための第一歩を踏み出すことができた」と豪語したものです。今回は「国債発行に依存せざるを得ない」と後退。「改革」路線の破たんは隠しようがありません。

 それでも小泉首相は、「動き出した改革路線をさらに確固たる軌道に乗せる」とのべ、破たんした「改革」路線にしがみつく姿勢を示しました。

潜在力がある 失政ごまかす

 「ノーベル賞だけではありません」「日本は高く評価されています」

 「潜在力」と称して小泉首相は、ノーベル賞受賞の小柴、田中両氏に続いて、国際的表彰を受けた科学者や建築家はじめ地場産業、はては映画「千と千尋の神隠し」まで並べ立てました。

 首相が、他人の業績や「潜在力」を強調したのは昨年十月の所信表明演説から。「改革」路線の破たんが明りょうになった時期と重なります。破たんの深まりに比例するかのように、その数は前回の二例から今回は八例に増えました。

 世界に名だたる中小企業の集積地域、東京・大田区では中小企業が倒産に追い込まれ、京都では老舗企業の廃業が相次ぐなど、「潜在力」を押しつぶしてきたのが、小泉内閣です。

 他人の業績で破たんをごまかそうという意図がぎらつき、聞いているほうが恥ずかしくなるほどです。

くじけるな 「自助論」説く

 「大事なことは失敗しないことではなく、失敗を次の成功に生かすこと」「人生で大切なことは挫折してもくじけず、また立ちあがること」「悲観論から新しい挑戦は生まれません」

 過去最悪の失業率5・5%という政府発表の日にくじけるな≠ニ人生訓をたれた小泉首相。先の臨時国会でも「悲観論に陥るな」とのべたばかりです。

 今回は、十九世紀半ばの英国作家スマイルズの『自助論』を紹介し、「自助自律の精神の下、他者への思いやりと高い志を持つ」ことが重要だとのべました。

 スマイルズは、「できないのは自分でムリだと決めつけているからだ」として、「自助努力」を説きました。著書『自助論』はサッチャー政権のもとで、福祉や教育に大なたをふるう理屈としてもてはやされました。

 国民の前に「改革」の展望も成果も示せず、我慢を説き人生訓しか語れない−−政治家として失格といわれても仕方ありません。

課題のら列ざっと六十

 「トウモロコシから作る食器など環境にやさしいバイオマス製品を政府をはじめ公的機関で導入し……」

 目立ったのが、省庁が掲げる課題を並べ立てたことです。ざっと数えても六十にものぼります。

 今国会で首相は、「国債発行額三十兆円」の公約を守れなかったことについて「たいしたことではない」と開き直りました。政治家の公約と言葉をこれほど軽んじる首相がどれだけ数を並べ立てようとも、国民の心には届きません。

 公共事業を介して政治家と企業の癒着が大問題となっているのに、公共事業受注企業からの政治献金禁止は、課題にもあげられませんでした。一方で不良債権処理の加速や有事法制など悪法成立へ執念を示しました。

 「勇気と希望を持って新しい日本をつくりあげる」と締めくくった首相。しかし、古い自民党政治を改革する勇気も希望も見えてきません。


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