2003年2月5日(水)「しんぶん赤旗」
「総理、国民の切実な願いにこたえるべきではないのか」――国民の深刻な実態を突き付け、その実現を迫る日本共産党の穀田恵二国対委員長。下を向いたまま、答弁文書を棒読みする小泉首相。四日の衆院本会議で浮かび上がった焦点は――。
穀田議員 負担増が不況を深刻化させ、その結果、税収減となり、さらなる負担増という悪循環に陥っている。財政危機を負担増で糊塗(こと)するやり方は、“痛みの増幅路線”にしかならない。税金の使い方を変えることしか、この悪循環から抜け出す道はない。
小泉首相 負担をわかちあうことは避けられない。(健康保険本人)三割負担は予定通り四月から実施することが必要。
社会保障の負担増と給付減、庶民増税による国民負担の総額は四兆四千億円。穀田氏は、需要が落ち込み、経済危機を加速させるだけだと指摘。昨年十月からおこなわれた老人医療制度の改悪による深刻な受診抑制の実態を示しました。
日本医師会の緊急レセプト調査で、昨年十月から十一月のお年寄りの通院一件あたりの医療費は、一年前比でマイナス11・8%と大きく落ちこんでいます。
にもかかわらず小泉内閣は、四月から健康保険の本人三割負担を実施しようとしています。
穀田氏は、日本医師会など四団体の負担増凍結の共同声明や野党四党が凍結法案を提出することにもふれて、負担増の凍結を迫りました。
小泉首相は「個々の負担増のみを取り上げて議論するのでなく総合的に考えるべき」と表明。負担増のみに着目して「議論すること自体、適切でない」という国会当初の答弁は引っ込めました。
棒読みの首相に議場から「実態を知らないな」「自分の言葉で話せ」という声が飛びました。
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穀田議員 リストラで人は減っても仕事は減らない。そのために違法なサービス残業や異常な長時間労働がはびこっている。雇用は過剰どころではない。過剰なのは労働時間ではないのか。
小泉首相 長時間労働を抑制することは国民生活にとって重要な課題だと思う。労基法にもとづき指導している。年次有給休暇の完全取得を前提とした業務計画を作成するなどの工夫も重要だ。
トヨタ自動車を含む愛知県豊田市地域で“過労死ライン”をこえる年間三千六百五十時間もの異常な長時間労働が横行していたことが労働基準監督署の調査で判明し、サービス残業をさせていたトヨタ自動車にたいし一月、労基署が是正勧告を出しました。
穀田氏は、異常な長時間労働が日本社会のみならず、産業と企業の将来にとっても重大な障害になるとのべ、四つの緊急提案をおこないました。
(1)サービス残業と長時間残業を規制する実効ある措置をとる
(2)48・8%にまで低下した年休の取得率を最低でも80%以上にする目標をもって行政指導をする
(3)恒常的な長時間残業や年休をとれないことを前提とした企業の生産・要員計画をなくすための行政指導をおこなう
(4)青年の雇用問題の打開に向け特別な手だてと予算を講じる
その裏付けを政府資料で示した穀田議員。
経済産業省と国土交通省は、年休の完全取得で十二兆円の経済効果、百五十万人の雇用創出につながると試算しています。
各国の青年雇用対策予算をGDP(国内総生産)比で比較すると、フランスは日本の百四十倍、イギリスは五十倍にも。
「日本の貧困さは歴然」だと迫りました。
小泉首相は「サービス残業は労働基準法に違反する。監督、指導を通じて改善が図られてきており、ひき続き解消に努めていく」と答えました。
穀田議員 イラクに査察に全面的・積極的に協力するよう求めるのは当然だが、国連を無視したアメリカの一方的武力攻撃計画にもきっぱりノーというべきだ。
小泉首相 米国の行動について、国際世論は必ずしも一致していない。イラクが査察に完全かつ無条件の積極的な協力をしていないのが一致した認識だ。わが国としてはイラクが誠実に決議を履行するように外交努力を継続していく。
戦争回避を求めるドイツ、フランスなど各国首脳、市民運動など「イラク攻撃ノー」は大きな国際世論になっています。
「アメリカの武力攻撃を許せば、二つの大戦の惨禍をへてつくられた国連中心の平和の国際秩序を破壊することになる。歴史の歯車の逆転を絶対に許してはなりません」と力説する穀田氏。
国際紛争の平和的解決を掲げる憲法を持つ日本こそ、率先して平和的解決のために、世界に働きかけることが日本の責務だと強調しました。
穀田議員 日本経団連の「奥田ビジョン」は、消費税を16%に引き上げ、企業の保険料負担をゼロにする。この実現のため働く政治家に企業献金するという。露骨な政治の買収そのものだ。総理はこんな献金を受け取るのか。
小泉首相 企業等、団体が寄付をおこなうかどうかは、その団体が自ら決めるべき問題だ。
政治をゆがめる企業・団体献金について小泉首相は「政治活動にかかわるコストをどのように国民に負担していただくかという問題」だと擁護。公共事業受注企業からの政治献金についても「一歩でも前進する措置を講じたい」と一年前と同じ答弁。議場から「変わらないじゃないか」との声があがりました。
穀田氏は、企業団体献金の禁止に今こそ踏み出すべきだとのべました。